東洋医学の診断と効果/國岡徹

医療の原点は“薬石”にありました。それが洋の東西で異なった発展をしてきました。

その根底には自然観の違いからくる人間把握の違いがあったように思われます。すなわち東洋医学は人間を自然の構成員の一つであり、生死もその循環の一つとみなし、自然との調和を目指します。

その思想・哲学を医学理論に体系化したのが「陰陽五行論」です。「陰陽論」とは、自然の現象及び人間の状態を陰・陽2つの対立する概念に分ける考え方ですが、これは「原子核」が「陽子」と「中性子」から成立していることと比較しても、あながち非科学的とばかりは言えないのではないでしょうか。

●バランスが重要

私たち整体師が患者さんを診る時は、その症状を伺い、西洋医学的な問診や検査法とともに、どこの「経絡」が“虚”しているのか、または“実”しているのかを、望診、聞診、問診、切診(触診)、舌診、腹診、脉診(みゃくしん)等の東洋医学的な診察法によって判断し、治療に当たります。

しかしこれらも、方法論は異なるものの、全身のバランスを整えるという意味では、現代・西洋医学と共通した考え方ではないかと思います。そこで、鍼灸(しんきゅう)効果のメカニズムを西洋医学的な観点から述べさせていただきます。

●効果のメカニズム

その主たるものは(1)鎮痛作用(2)免疫作用(3)平衡(バランス)作用からなる広義の意味での、人体を正常な状態に戻し維持する能力(ホメオスターシス)を向上させる働きです。

まず(1)の鎮痛作用ですが、局所的な痛みの部位や特異点(経穴・ツボ)に、針またはきゅうを施すことによって、血流状態を改善させ、痛みの原因になっている神経圧迫や緊張を和らげ、痛みを緩和します。同時に中枢神経的にも、脳内にモルヒネ様物質のエンドルフィンを発生させ、痛みの感覚を取り除く作用のあることが明らかになっています。

(2)の免疫作用ですが、これはツボに針刺激を加えることによって、中枢神経を介して脳内のインターフェロンや免疫系に作用し、免疫力すなわち生体防御機能を強化させます。例えばマウスの実験で、定期的に針刺激を加えた群は、他のマウスと比較して寿命が数カ月(人間にすれば10年以上)も延びているとの報告があります。

(3)の平衡作用ですが、これは単に動作のバランスのみならず、自律神経のそれを指しています。すなわち全身の主要なツボへの針刺激が、その深さや手技(方法)によって、時に交感神経に、時に副交感神経に作用し、自律神経のバランスを整えます。

國岡徹

カテゴリー: 東洋医学 | 投稿者國岡徹 13:39 | コメントをどうぞ