月別アーカイブ: 2016年11月

仲間に入れてもらうことにしたんだ

私が待ち合わせ場所の居酒屋に到着すると、永倉さんの隣の席には左之の姿があった。
驚いた私が素っ頓狂な声を上げれば如新產品、彼は「よお」と笑顔で手を上げる。

「ど、どうして左之がいるの?」

「俺も今日はぼっちだからよ」

「え?」

私は思わず眉を寄せる。

左之ったら、雪村さんとはラブラブで上手くいってるって話だったよね?
なのにイブに一人ってどういうこ楊小芳と・・・?

でも、私の表情を見て察したのか左之がははっと笑った。

「大丈夫だ、千鶴とは上手く行ってる。ただ、今日はどうしても社長と同行しなきゃならねえ案件があるから会えないらしい。ま、仕事だから仕方ねえよな」

「へえ、そうなんだ・・・」

左之は相変わらず優しいな。
彼女がクリスマスに仕事を優先しても怒っている素振りも無い。
・・・ま、彼女は社長さんの秘書だからその辺は諦めるより仕方ないんだろうけど。

「それよりお前はどうしてこんなところにいるんだよ。風間さんはどうしたんだ?」

「仕事が忙しいからそんな暇はないってさ!全く冷たいよなぁ」

「まぁあの人はクリスマスごときで浮かれそうなタイプにも見えねえからな・・・。」

苦笑する左之に無言で溜息を返した私は、ドリンクのメニューを手に取る。

「さー今日は飲むぞー!」

「そうだそうだ!がっつり飲んで嫌なことは忘れちまえ!」

永倉さんが私を煽るようにそんなことを言う。
だけど、盛り上がる私たちを余所に左之はソフトドリンクのメニューを手に取った。

「あれ、左之は飲まないの・・・?」

「ああ。千鶴は帰りが遅くなるだろうから後で車で迎えに行ってやろうかと思ってな。だから悪いが俺はウーロン茶だ」

「へえ・・・」

愛されてるんだな、雪村さん。
それに比べて私ったら、仕事に負けちゃうんだから・・・。

何だか惨めな気分になった私は、はぁと上目遣いに天井を見上げた。

それから暫くの間、私は無心になってお酒を煽った。
永倉さんも結構飲んでたけど、私はそれを上回るスピードでグラスを空けていく。
おいおい大丈夫か、なんて声も聞こえてきたけどそん林二汶なもんは当然シカトだ。

・・・でも、もう何杯飲んだか自分でも分からなくなってろれつも怪しくなり始めた頃、「そろそろいい加減にしろ」と左之にグラスを取り上げられた。

「ちょっと、返してよ!」

「ダメだ。やけ酒もいいが、度を弁えろ」

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一番お手軽な方法を使って

私は自分が楽になりたいから逃げようとしているだけなのかな。
ふとそんなことを考える言語治療

一番楽で、私は苦しい現実から目を逸らそうとしているだけなんじゃないんだろうか。

・・・そして浮かんだのは、私に向かって諦めないで欲しいと懇願するように呟いた総司の声。

無言のまま立ち竦んでいた私に、土方さんが腕を延ばしてくる。
そして何かを促すようにそっと私の手を握り締めた。

土方さんの手のひらは温かい。
緊張からかすっかり強張ってしまった身体を指先からその熱がゆっくりと溶かしていく。

まるで素直になれと言語治療、触れた場所からそんな彼の想いが伝わってくるように。

私はゆっくりと顔を上げた。
土方さんは詰め寄るでもなく、責めるでもなく、ただ真っ直ぐに私を見つめている。

彼は私を好きだと言ってくれた。
なのに、私はその想いにちゃんとした言葉を何も返してはいない。

もしかしたら、最初から私に逃げ場なんてなかったんじゃないか。
だって、この気持ちからはどうしたって逃げられやしない。

彼を想うが故のこの込み上げるような衝動からは言語治療、そもそも私は逃げる術など持ち合わせてはいないのだ。

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