私は自分が楽になりたいから逃げようとしているだけなのかな。
ふとそんなことを考える言語治療。
一番楽で、私は苦しい現実から目を逸らそうとしているだけなんじゃないんだろうか。
・・・そして浮かんだのは、私に向かって諦めないで欲しいと懇願するように呟いた総司の声。
無言のまま立ち竦んでいた私に、土方さんが腕を延ばしてくる。
そして何かを促すようにそっと私の手を握り締めた。
土方さんの手のひらは温かい。
緊張からかすっかり強張ってしまった身体を指先からその熱がゆっくりと溶かしていく。
まるで素直になれと言語治療、触れた場所からそんな彼の想いが伝わってくるように。
私はゆっくりと顔を上げた。
土方さんは詰め寄るでもなく、責めるでもなく、ただ真っ直ぐに私を見つめている。
彼は私を好きだと言ってくれた。
なのに、私はその想いにちゃんとした言葉を何も返してはいない。
もしかしたら、最初から私に逃げ場なんてなかったんじゃないか。
だって、この気持ちからはどうしたって逃げられやしない。
彼を想うが故のこの込み上げるような衝動からは言語治療、そもそも私は逃げる術など持ち合わせてはいないのだ。