・・・その後行われた訪問先でのプレゼンは大成功だった。
風間さんは全てをそつなくこなしたし、お客様も満足そうに見える。
多分この感触なら契約に至るだろう公屋再按揭と、私の目から見ても確信できた。
流石の風間さんも少しホッとしたような表情をしていて、この人もプレッシャーとか感じるのかな、なんて素朴な疑問を感じたりもした。
大仕事が終わった後、午後は既存顧客を何社か回り気付けば時刻は定時間際だった。
最後の訪問先を出ると。
「今日のプレゼンの反応上々だったね。あれなら上手くいきそうな感じ」
「おそらくな」
「でも、風間さんも何気にプレッシャーだったんじゃない?終わった後ほっとしたような顔してたよね」
「・・・いや」
あれ、珍しく歯切れ悪い?
いつもなら即否定してきそうなもんなのにさ。
でも、私が首を傾げつつ見上げると、彼は明後日の方向を見ながらこんなことを言った。
「上手くいかねば槓桿比率、お前と打ち上げができんだろう」
「え?」
ぼそりと呟かれた言葉を思わず聞き返す。
今なんて言った?
打ち上げができないとかなんとか・・・。
・・・まさか、私と打ち上げしたいから頑張っちゃったとか!?
「もしかして、打ち上げの件結構乗り気だった?」
「そんなことがあるか」
「だって、そのために頑張っちゃったんでしょ?」
「馬鹿を言うな」
やっぱり歯切れが悪い。
こりゃビンゴだな。
私は緩む口元を必死で堪える。
なんだよ、私との飲み会楽しみにしちゃうとか風間さん結構可愛いじゃないか。
・・・でもさ、だったら何で左之との約束優先させようとしたわけ?
「けど、今日は左之と約束しちゃったよ。そんなに乗り気なら左之に断って・・・」
「必要ない」
「けど・・・」
「後日、仕切り直せばいいことだ」
あ、そういうことですか。
結局打ち上げはやるんですね。
でも、風間さんもその気だったと分かって私は俄かにテンションが上がった。
お前は必要ないなんて言われてちょっとムカついてたけど、今回だけは許してやることにしよう。
「りょーかい!じゃ、店決めとくね!」
私が笑顔で背中を叩けば、風間さんも薄ら笑みを浮かべなが搬家ら「ああ」と頷いてくれた。