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とても無理な

本当にシャレにならねえぞ、今回みたいなことになっちまったら」
と口許を引きつらせ、笑えないと言った表情鍛練肌肉でカミカワさんは続けた。
会社の金使って飲み歩いてた10年前が嘘みたいだよ。
まあ、時代も変わったってのもあるんだろうけど、今じゃあオマエ、1000円単位の売り上げの上下で大騒ぎだ。
もう、あの頃とは2桁ちがうなあ、感覚として」
とぼやくカミカワさんに、
それはこの俺も一緒ですって。
トウキョウにいたって全然遊びにも行ってないすからね。
地味なもんですよ、もうここんとこずっと・・・」
なんて言いながらもわたしは、久々に先輩と飲むのに暗い酒もなんだし・・・、なんか明るい話題でもないものか?などと思考を巡らせていたのだが、満腹感と適度な酔いのせいもあってか全くもって思考回路は機能していなかった。

部屋に戻ると鍵は開けっ放しのままユナはまだ風呂に入っているらく・・・、ってまあ鍵と言ったところで本日この宿はわたしたちのみの貸し切りなわけで、そもそも鍵自体かける必要もないことにその時わたしは気づいた。
それからわたしもフロント奥の風呂場へと手ぬぐい智能廁板とバスタオルを持って出かけることにした。

ふたつある風呂は見たところ男湯、女湯の表示はなく、どちらでも勝手に(貸し切りなわけで)どうぞ?なんてことらしい。
まあ、とは言えとりあえず今日のところは遠慮して・・・、とわたしは中で湯を浴びる音のしない右側の風呂場へと向かった。
と言うのもこのところユナとは彼氏、彼女のようにべったりと夜を共にしておきながら、わたしは未だ彼女の身体に指一本すら触れていない(いや、指数本・・・と唇は触れたような気もするが)。
3度に渡る茶番のようなフェチプレイで毎回わたしひとりがピエロのごとく一瞬野獣化するものの、その後あっさりと彼女にあしらわれ、そんなおあずけ状態が継続されている。
(それでもまあ、とりあえず初回のみ一度は自爆させていただいたが)

思春期の青年でもないわたしは、あのユナの謎のフェチ攻撃以外の場面では彼女に対し特にこれと言って肉欲をもよおすこともなく・・・、と言うかあの一連のフェチ攻撃に関しては明らかに彼女によって仕組まれた?と言えるようなものなわけで、その目的すらよくわからない上、その時点でわたしの身体に生じる生態化学反応こそがわたしにとっては謎そのものと言うか?何故かあの一連のプレイ中、わたしの自我は完全に崩壊していたのだった。

檜作りのやや小ぶりな風呂の湯は、長時間浸かるのはとても無理なぐらいの高温で、わたしは思わず水道の蛇口をじゃばじゃばと全開にし、その温度をゆったり中でくつろげるぐらいにまでさました。
(後から草津観光に関するガイドブックで見たところによると、どうやら草津の湯と言うのは基本高温らしく、何度も回数を分けて我慢するようにして浸かるというのが薬用効果?みたいに考えられているとのこと。
それが本当に身体にいいのかは、自分的にどうも納得出来ないところもあったのだが)

湯加減がちょうどいい具合になった頃より、自分の呼吸がやっと自然にゆったりと深まっていくのがわかり、そのまま眠気にも似た酩酊状態へと心地よく陥っていくのを感じる。
湯をかき回す音だけが時間差で折り重なる倍音となって風呂場中に響き渡り、その音がたまにスーッと消えると澄み渡るような沈黙がそこにあった。
気づけばさっきまでとなりの方からも聴こえていた湯の音Pretty Renew 冷靜期
がすでに途絶えている。

ユナのヤツ、もうそろそろ出た頃かな?
そうふと思った瞬間だった・・・、ガラリと風呂場と脱衣所の間の扉が開かれ、そこには湯煙を通し全身を白い光のオーラに包まれ、スリムになったヴィーナスの誕生を思わせるユナの裸体があった。
わたしたちは草津温泉のバスターミナルでバスを下りると、地図を片手に湯畑のある中央広場までキョロキョロとまわりを見渡しながらもなんとかたどり着き、カミカワさんの宿への道をそこを起点に改めて探そうとしていたところ、
あれ、見てナオキ。
足湯があるよ」
と言ってユナは湯畑に面して小さな池のような形で併設されている足湯スペースに直行。
早くもブーツを脱ぎ、あれよあれよと言う間にジーンズの裾を膝上ぐらいまでたぐり寄せ、足先を湯船に触れさせようとしている。

カテゴリー: 未分類 | 投稿者deficiency 15:33 | コメントをどうぞ