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に横たわった

01 (69)
それを聞き、男は目を白黒させた。一年間はゆうゆう遊んで暮らせるほどの金だ
。わけがわからずだまっていると、銀行の人はそれで話を終わりにした。
男はせまい室内を呆然として歩きまわり、嬰兒濕疹またソファー。びんに残
っている酒を飲み、いくらか人心地になった。頭も働きだした。
これは、どういうことなのだろう。たしかにきのうと同じ銀行の係の声だった。
銀行がでまかせを言うはずはない。それでも彼は、もう一回銀行に電話をかけ、た
しかめた。やはり事実だった。本当だったのだ。
男は窓のそばに立ち、そとを眺めた。青空からの日光は、みどりの樹々を照らし
、すべてが新鮮だった。すがすがしさ。頭上にのしかかるような重い雨雲も、きょ
うはない。しめりけは蒸発し、上昇して消えてゆく。
彼の心もそんな感じだった。内部の悩みが徐々に軽くなってゆく。入金の現実を
なっとくするにつれ、当然のこととして、嬰兒敏感きのうの正体不明の電話の主のことが頭
にうかんでくる。偶然の一致ではない。関連のあることは疑いない。しかし、だれ
なのだろう。なぜ、こんなことを。どうして、おれのために……。
まるで見当がつかなかった。心当たりはない。そんな親切な友人のいるわけがな
かった。まあいいさ。彼はだれともしれぬ相手に対し、感謝の乾杯をした。こんな
にこころよく酒を飲むのは、何年ぶりだろう。いつもは不安をごまかすために飲む
のだが、今回はちがうのだ。それだけに妙な気分だったが、うれしいことであり、
悪くないことなのだ。
やがて、また電話が鳴りだす。
男はもはや、びくつくことはなかった。調子のいい声で応答する。
「いよう。どちらさま」
「どうだ。願いはかなったろう」
きのうの謎の声だった。恩着せがましい感じもなく、嬰兒濕疹平然とした話し方。しかし
、彼のほうは感情のあふれる声でお礼を言った。
「ああ、なんと申しあげたものやら、ありがたさで胸が一杯でございます。お目に
かかって、感謝の気持ちを示したいと思います。どなたさまでしょうか。ぜひ、お
名前を……」
「こちらのことなど、どうでもいい。どうだ。もっと願いをかなえてやるぞ。言っ
てみろ」
「本当でございますか。あなたさまのおっしゃることなら、たしかでございましょ
う。ご好意に甘えるようですが……」
あまりの意外さに、男はなにを言ったものか、とっさに思いうかばなかった。そ
のため、しごく平凡な言葉になった。
「……できれば、美しい女性でも」
「わかった」
電話は終わった。男は微笑し、いい気になるべきではないと自戒しながらむずか
しい表情をし、また微笑した。たのしさがこみあげてくるのだ。いまの電話の予告
。実現についての根拠はなにもないのだが、心は期待であふれてしまう。
彼は電話で酒を注文した。やがて配達される。支払い口座は健在で、そこに問題
は残っていないのだ。
みずみずしい緑の広場を見おろしながら、窓のそばで飲みつづける。新しい人生
の計画でも練るとするかな、と男は思った。しかし、それはゆっくりでもいいこと
だ。急がなければならない理由はない。それに、さっきの電話の主の言葉が本当な
ら……。

カテゴリー: 未分類 | 投稿者donalder 13:01 | コメントをどうぞ

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カテゴリー: 未分類 | 投稿者donalder 04:00 | 1件のコメント