月虹の守り役として側に付いた執事、「金剛氏郷」(こんごううじさと)は、主を探して広い屋敷内を走り回っていた。目を離すとすぐに、居なくなってしまう。月虹は明るく快活な子供だった。
「月虹さまでしたら、お手伝いをするとおっしゃって、つい今しがたおやつのプリン收細毛孔に使う有精卵を取りに、鶏舎に行かれました。」
「そうか、ありがとう。行ってみよう。」
金剛氏郷の家は曾祖父の時代からずっと仙道家の執事をしていた。もっともそれ以前の金剛家は代々、仙道家に仕える家老職だった。
仙道家では、広大な敷地の一角を巨大なゲージで囲み、おおよそ100羽の鶏を放し飼いにしている。
月虹は大型の孵卵器から生まれた雛を入れたひよこ棟がお気に入りで、最近は幼稚園帰りに必ず覗きに行っていた。
月虹は小さなひよこに、格別の思い入れがあるらしい。たくさんの小さな黄色のひよこにまみれながら執事の視線に気が付いて、笑顔を向けた。
「あ、金剛!」
「こちらにいらしたのですね。この場所がお好きですね、月虹さま。」
「うん。ぼくね、生まれたばかりの、ふわふわのひよこが好きなんだ。ひよこもぼくが好きみたい卓悅假貨だよ。みって来るもの。金剛は?金剛も…ひよこ好き?」
「金剛も黄色のひよこはとても好きですよ。今は亡き旦那さまも、この場所がお好きでした。」
「そう。お父さまと一緒ね。」
月虹は満面の笑顔を向けた。
無垢な天使の羽根をもいで、その可愛らしい貝殻骨に手を掛け、わりわりとへし折りたい衝動にかられる。
恐ろしいことに、小さな月虹の口の端に、飲み込めなかった自分の白い雫がとろりと流れ、胸元に滴るのを見たいとさえ思う。
泣きながら許しを請う月虹の薄い夜着を力任せにはぎ取ったら、どんな甘美な悲鳴を上げるだろうか。いつか小屋に公開大學 課程監禁し、自分に向けられる月虹の信頼の目が、恐怖に変わる瞬間を想像すると背筋をとろけるような甘い怖気が走った。