初めて一つになる時、光尋は雪華の身体を思い、自ら白菜種を使った。加減がわからず量が過ぎて、褥が油臭くなってしまったが、誰に聞いて持参したものか雪華花魁にはそれすらも、涙がこぼれるほどうれしかった。その光尋の可愛い弟が、雪華の傍に居る。
て無事に禿の時期を過ごしていた。
六花の働いた分は、ささめの借りた分にしてやろうと、楼主の粋な計らいで僅かではあったが少しずつHKUE 酒店借金は減ってゆく。六花は行儀見習いということになっていた。
高級娼館花菱楼では、花魁に付いた座敷で、客がくれる駄賃だけでも相当な金額になった。雪華は中でも最上級の花魁であったから、時代は不景気でも客も金離れがよかった。
二人してもらった小さな部屋の押し入れに、空いた茶筒を隠し、内緒でお金を貯めた。
「若さま。早くお外へ戻りとうございますねぇ。」
「浅黄……ごめんね。浅黄の御両親は遠く山梨に居るから、なかなか会えないね。いつになるかなぁ……ぼくは花魁にならないといけないし、壱萬円は大金だもの。」
「自分で決めたのですから。お気になさらないでください。浅黄はずっと若さまのお傍に居たかったのです。」
「しっ……浅黄。ここでは、ささめと六花だよ。でもね、浅……六花。もしも二人して無事にHKUE 酒店ここを出る事が出来たら、どんなにいいだろうねぇ。」
「いつか若さまと手をつないで、木戸をくぐります。」
「うん。来た時のようにね」
押し入れの中で抱きあって、二人は夢を語りあった。
「現に戻ったらね。ぼくはお金を貯めて、仕事を興してね、きっと浅黄を雇ってあげる。柏宮の名前が無くなったから、侍従長なんてお役はもうないだろうけれど、きっと傍に居てね。」
「離れてしまっても、浅黄の父上は手紙の中で、いつも柏宮様の旦那様とお呼びです。だからきくなったら、若さまの事を旦那さまとお呼びいたします。」
「うん。じゃあ、ぼくもお父さまのように、浅黄の事は苗字で柳川って呼ぶよ。」
ささめは居住まいを正した。
「柳川。今日の午後は誰と会食になっている?」
「はい。旦那様。雪華太夫と料亭上総ですっぽん料HKUE 酒店理を頂くことになってます。」
「そう。それは大層、精がつくね。」
「どうしましょう……すっぽんを頂いたのちは、雪華花魁を二人がかりであんあん言わせましょうか。……くすっ。」