た表情のトオ

そこはまるで別世界のように静まり返った空気が流れており、わたしたち3人はその中の丸い御神鏡のようなものの前で凍り付いたように神妙な表情で立ちすくむ。
その瞬間、一瞬頭頂が割れたかのような頭痛を感じたが、その後すぐに心地よい静寂のベールのようなものに全身が包まれるような感覚に襲われ、自然と呼吸が深くなり、同時に背骨から頭頂に向かって何かエネルギーのようなものが上昇するのがわかった。

ホンジョウさん、例のアメジストを???」
とスナガワに言われ、わたしは背負っていたデイパックを開けると、包んであった布を剥がしそのクリスタルを取り出しスナガワに手渡した。
スナガワはそれを大事そうに両掌の中に包み込んでしばらくの間目を閉じ、何かブツブツと呪文のようなものを唱えた。
そして今度はその石を一度両手で頭上に持ち上げたかと思うと、そのままそっとそれを御神鏡の前の小さな座布団のような布の上に置いた。
そして彼は再び目を閉じて合掌し、今度は祝詞のようなものを唱え始める。
薄めで横を見れば、ジェシカもはもるようにそれを唱えていた。
その日のちょうどその頃のことだった、下馬の住宅街にあるラウンジタイガーアイ」にはめずらしくわたし以外の訪問客があったようで???。
と、その夜そのオトコはやけに上機嫌に盛り上がっている様だった。

とりあえず今日は、3人に1杯づつおごるから飲んで!」
と某プロダクション社長、サクヤマは彼以外の店の従業員3人に向けてそう叫んだ。
いただきま~す」
とナカバヤシ、マキ、トオルの3人が同時にはもるように言い、カチカチッとビールのグラスでサクヤマと乾杯する。

ご機嫌ですねえ?」
とその理由をいかにも聴きたいと言った表情のトオルに、
そりゃあそうさ。
この1週間ばかり生きた心地もしてなかったんだ。
ヘタすりゃあ今頃、俺は東京湾に浮かんでたところさ」
とのサクヤマのリアクションに、
そ、それはまた、ど、どう言うことで?」
と今度はナカバヤシが絶妙のフォローを入れる。
って、まさにサクヤマ社長オンステージが始まろうとしていた。

オマエら、あの地震直後に起こった少女倶楽部メンバー失踪事件のことは知ってたか?」

えっ?
ああ、あれ。
ネットでけっこう騒がれてた」
とマキ。
ああ、あのメンバーのひとりの娘ってのが、実は今朝発見されてね。
これはまだニュースには上がってないと思うけど???、とにかくそれで俺の首が繋がったってわけなんだよ」
そうサクヤマは言い、1杯目のビールを一気に飲み干す。


カテゴリー: 未分類 | 投稿者wujiedebuyao 15:25 | コメントをどうぞ

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