日別アーカイブ: 2016年2月22日

メーヌ伯

聞き慣れないその名に、ラ・イールが思わずその名を繰り返すと、ヨランドは微笑んだ。
「シャルル・ド・メーヌ(Charles du Maine)。マリー王妃の弟君ですよ」
その言葉に、ラ・イールとジャン・ド・デュノワは顔を見合わせたreenex
「ということは、ヨランド様の……」
今回もラ・イールより先にジャンがそう言いかけると、彼女は頷きながら微笑んだ。
「ええ。私の三男です」
「ひょっとして、まだお若いのではありませんか?」
そう尋ねたのは、今年で41歳になるラ・イールだった。
「ええ。まだ17歳になるかならぬ位ですが、そういう若者ならば、教育のしがいがあるでしょう?」
ヨランドは二人を見ながらそう言うと、すぐ傍のアルテュールを見て頷いた。
傍らに控えるアルテュールは、長身でまだまだ美男子だったが、今年で38歳だった。そして、メーヌ伯とマリー王妃の母たるヨランドは、既に47歳になっていた。
「まぁ、そういうことでしたら、私は……」
頷きながらそう言うジャンの横で、ラ・イールはいきなり跪いたかと思うと、よく響く声で言った。
「このラ・イールこと、エティエンヌ・ド・ヴィニョル、ヨランド様の仰せに従うことをお誓い致します!」
その様子に苦笑しながらも、ジャンもすぐ横で跪いた。
「私もお誓い致します」
「お願いしましたよ、二人とも」
ヨランドは満足げに頷くと、そう言ったreenex

そして、それから間もなく、その言葉通り、ヨランドとアルテュールは、ラ・トレムイユを捕らえて幽閉し、新しく国王の侍従には、先程話に出たメーヌ伯シャルルが就任し、アルテュールも大元帥の座に返り咲いたのだった――。

「おめでとうございます、母上。父上が大元帥に返り咲かれたこと、心よりお喜び申し上げます」
ブルターニュのリッシモン邸を訪れると、シモーヌはそう言いながらマルグリットにお辞儀をした。
「ふふ、私はそれより兄上と陛下が和解されることの方が嬉しいのだけれどね」
マルグリットはそう言うと、シモーヌをゆっくり居間に通した。
「ああ、それも夫より聞いております。早く実現するとよいですね」
「ええ」
マルグリットはそう返事をしながら、屋敷の中をウロウロする兵卒をチラリと見て、居間のドアを閉めた。
「復帰された早々、お忙しそうですね、父上は」
その視線の先を目で追ったシモーヌは、そう言うと椅子に座った。
「ええ。イギリスの長弓に対抗するために砲兵を揃えたり、常備軍を編成したりする上に、貴族にも課税するとかで、なかなか顔も見せてくれないわ」
「まぁ、それはお淋しいでしょう?」
「少しね。でも、貴女が帰ってきてくれたから、今はそうでもないわ」
そう言うと、マルグリットは少し目立ってきたシモーヌのおなかを触った。
「もう少しね?」
「はい。此処で産みたいので、宜しくお願いします」
「それはいいのだけれど、よくジャンヌ様がご承知なさったわねbeautymama?」
「それが、その……夫に若い愛人が出来まして……」
「えっ!」
マルグリットは目を大きく見開くと、シモーヌの手をギュッと握った。

カテゴリー: 未分類 | 投稿者biubiuplpl 17:54 | コメントをどうぞ