おい、帰ってきて早々そんなに言わなくてもいいじゃないか。暗瘡治療うしろのお嬢さんがびっくりしてるぞ」
あら、ごめんなさいね。さぁどうぞ、脩平君も突っ立ってないで入って」
おばさんの先制パンチをくらったことでしっぱなの段取りは狂い、僕が描いた筋書きはたちまち崩れてしまった。
おかえりなさい。出張大変だったわね。ちいちゃんも、さぁどうぞ」
うしろからお袋が顔を見せたがいつもと変わらぬ声がした。
千晶のことも覚えていたようだ ちいち卓悅冒牌貨
ゃん」 と呼びかけてくれたのが救いだった。
だがおばさんたちがいるってことは、見合いの決着がついていないことも、千晶が深雪さんの従姉妹だってことも、
全部全部お袋たちに筒抜けになっているってことで……
そうなると、どこから話を持っていけばいいんだろう。
冷静になれと自分に言い聞かせ、もう一度頭の中の整理を始める。
とにかく落ち着け。
事態を収拾し損傷を最小限に抑え、最良の卓悅冒牌貨
選択を見極める、これは危機管理の鉄則だ。
もしも、どうしても上手くいかないときは……
最後の切り札の台詞を持ち出すだけだ、これで反対されるはずはない。
僕が悪役になればいい。
気持ちを奮い立たせるように拳をぐっと握り締め、客間への廊下を歩き出す。
よし、なんとかなる。
心を決め部屋に入りかけた僕の腕を千晶が引っ張り、廊下の隅へ行ってと目が訴えた。
どうしたの、心配になった?」
聞いてほしいことがあるんです」
うん、だからそれはあとで聞くから」
だけど」
大丈夫。千晶はそばにいるだけでいいから。それから、僕が何を言っても驚かないで」
どうしたの? 遠慮なくどうぞ」
廊下でヒソヒソとかわす会話が聞こえたのか、奥からお袋の声がした。
あとでな」 と千晶に言い、彼女の背中を押して両親とおばさん夫婦の待つ部屋に足を踏み入れた。