そこから積丹に到着するまでの間

そこから積丹に到着するまでの間、私たちは依織のどこが好きなのかを思う存分語り合った。「私は依織の唇が好きなんだよね。ちょっと厚めで、リップ塗らなくても綺麗な色してるの。何度キスしたいと思ったことか」「お前、今までよく我慢してきたな。キスなんて、女同士なら酒で酔っ払えばノリで出来るチャンスあるだろ」「バカなこと言わないで。好きな相手にノリでキスとか、あり得ないでしょ。それに、私どんなに酒飲んでも酔えないから」「確かに」酔ったフリをして依織の唇を奪うなんて、考えたこともない。そういう狡いことだけは、したくなかった。豪華 遊艇 、積丹に着いたらどこに向かえばいいんだろ」「ちょっと七瀬に電話してみて」甲斐に言われ、依織に何度か電話を掛けてみたけれど、一向に出る気配がない。こうなったら、もう手掛かりはあの人から得るしかなかった。久我さんにどこにいるのかラインを送ると、一分もかからずに返事がきた。綺麗な夕焼けが見える絶景スポットにこれから向かうらしい。恐らくこれから依織にフラれると彼もわかっているはずなのに、そんな状況でも雰囲気を重要視するのが久我さんらしいと感じた。私はすぐにその場所を甲斐に伝え、車を走らせた。それから二十分後、ようやくその場所に到着し車から降りると、久我さんに抱き締められている依織の姿が目に飛び込んできた。「七瀬!」私よりも先に依織の名前を叫んだのは、甲斐だった。突然現れた甲斐と私を見て、依織は目を丸くして驚いている。反対に久我さんは、私たちが来ることを知っていたからいつもの余裕の表情で出迎えた。「甲斐も蘭も……どうしてここに?」「お前、何でスマホ繋がらないんだよ。どこかに落とした?」「え?スマホはバッグの中に入れてあるけど……それより二人とも、どうして?」私は、まだこの状況を飲み込めていない依織に近付き、耳元で囁いた。「依織、私に感謝してよ。あんたと甲斐の二人にとって最高のきっかけを私が作ってあげたんだからね」「待ってよ、何を言ってるのか意味が……」「じゃあ、頑張って。私はこのまま久我さんに送ってもらうから」これでいい。この行動を、私はきっと後悔しない。長年大切にしてきた初恋は、今日で終わらせるのだ。「久我さん、私も乗せてもらっていい?」「まさか、本当に乗り込んでくるとはね」「何言ってるのよ。こうなるってわかってたくせに」私は半ば強引に、彼の車の助手席に乗り込んだ。遠くから、依織と甲斐の姿を見つめる。あの二人は、確実に今日これから互いの想いを伝え合うだろう。嬉しそうに涙を流す依織の姿を想像しただけで、胸の奥がじわりと温かくなった気がした。「せっかくだし、どこかに寄って帰ろうか。どこか行きたい所ある?」「……久我さんの告白の邪魔をしたことは、悪いと思ってる。ごめんなさい」謝るくらいなら、するべき行動ではなかったと非難されても仕方ない。それなのに、久我さんは私に怒りをぶつけるようなことはしなかった。「君が僕に謝る必要はないよ」「え……」「僕は僕で、自分の思うように行動した。君は君の思うように行動した。お互い、自分の気持ちに素直になって行動しただけだよ。だから、謝らなくていい」「……」久我さんは、とても大人だと思う。自分もとっくに大人だけれど、思考はまだまだ幼稚な部分がある。でも彼は、何に対して怒るべきなのか、何に対して謝るべきなのかをちゃんと知っている。いつも間違えてばかりいる私とは、根本的に違うのだ。「それに正直に言うと、君が現れたとき少しホッとしたんだ」「え?どうして……」「どうしてかな。君の顔を見て、張り詰めていた気が緩んだのかもね」

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あの女の方は、間違いなく甲斐にまだ未練がある

あの女の方は、間違いなく甲斐にまだ未練がある。でも、甲斐の気持ちが依織からあの元カノに動くことがあるのだろうか。「え、甲斐くん元カノとヨリ戻しそうなの?」「俺の勘では、そうだと思うんだよな。桜崎はどう思う?」甲斐がもしも元カノとヨリを戻したら……依織はきっと大きなショックを受けるだろう。「……さぁ、どうだろ。元カノの方は、甲斐とヨリを戻したくて必死だろうけど」三人で延々とそんな話をしていると、突然スマホのバイブ音が響いた。三人で一斉に自分のスマホを確認したけれど、鳴っているのは誰のものでもなさそうだった。湊b課程 ホ鳴ってんの?」「あぁ、甲斐のだ」見ると甲斐のスマホが床の上に置きっぱなしになっている。なかなか鳴り止まない着信に対してしつこいと思いながら画面を覗き込むと、画面には『高橋真白』と名前が表示されていた。「うわ!噂をすれば、これ元カノの名前じゃね?」「あ、鳴り止んだ」画面には、不在着信一件が表示されている。あの女、まさか甲斐が同期と温泉に来ていることを知っていてわざわざ電話してきたのだろうか。だとしたら、結構面倒くさいタイプかもしれない。「俺、ちょっと甲斐呼んでくるわ」「わざわざ呼びに行かなくても……」「だってもし大事な電話だったら、甲斐が困るだろ」そう言って青柳は、甲斐のスマホを手に取り部屋を出て行ってしまった。「あーあ、二人の邪魔しに行っちゃった。甲斐くんと依織さん、今頃イチャイチャしてたりして」「それはないでしょ。依織の体調が悪いときに、甲斐は手出せないだろうし」「確かに甲斐くん、そういうところ真面目そうですもんね。でも蘭さんも、二人の恋がうまくいけばいいって思ってますよね?」「……」思っていると、素直に即答出来ない自分が苦しい。私は美加ちゃんのように、純粋に二人の恋を応援することは出来ない。「……私は、依織が幸せになるなら、それでいいかな」依織が誰を好きになってもいい。ただ、幸せそうに笑っていてくれるなら、私はそれだけで嬉しくなる。「蘭さんと依織さんの友情って、本当に羨ましいです」「え……」「ちゃんとお互い想い合ってるのが伝わってくるので、いいなぁって」すると、美加ちゃんとの話の最中に青柳が一人で部屋に戻ってきた。「甲斐は?」「廊下で電話中」戻ってきた青柳と入れ替わりで、私は部屋の扉を少しだけ開けた。すると開いた扉の隙間から、甲斐の話し声が微かに聞こえてきた。「あぁ、楽しんでるよ。うん、うん。そう、今皆で部屋で飲んでた」元カノと電話で話しているときの甲斐の口調は、私と話すときのものと何も変わらない。時折笑顔を浮かべながら相槌を打ち、そう長くは話さずに電話を切った。

私は扉の隙間から覗いていたことがバレる前に、室内に戻った。部屋に戻ってきた甲斐に、青柳と美加ちゃんが元カノのことを聞き出そうとしたけれど、甲斐はあまり話したくないのか軽くあしらい、その後は何か考え事をしているのかずっとぼんやりとしていた。「ねぇ、甲斐。依織の様子、どうだった?体調だいぶ悪そう?」「え?あぁ……そうだな。ゆっくり寝かせてあげた方がいいと思う。熱出てたし」「……依織の不調に、よく気付いたね。私はすぐに気付いてあげられなかった」「俺も、たまたま気付いただけだよ」そう言い残し、甲斐は「風呂に入って頭冷やしてくる」と言いタオルを手に持ち部屋を出て行った。頭を冷やすって……依織と何かあったのだろうか。それとも、元カノ?私は、気になったことはそのままにしておけない性分だ。結局その日の内に甲斐から話を聞くことは出来なかったため、翌日じっくり話を聞くことにした。

カテゴリー: 未分類 | 投稿者laurie6479 11:10 | コメントをどうぞ

「あー……もう……何やってんだ、私……」

「あー……もう……何やってんだ、私……」確かに涙は消え去っていたはずだったのに、どうしてあの場面で泣いてしまったのだろう。あの人に渡したくない。甲斐は私の目を見て、ハッキリとそう言った。無針埋線效果、キスを受け入れようとする前に、私は自分の気持ちを伝えるべきだったんだ。涙を流している場合じゃなかったのに。「青柳も……部屋を出てから言ってよ……」真白さんから連絡がきている。ただそれだけのことで、こんなにも不安になり、こんなにも胸が苦しくなってしまう。私は布団の中に潜り込み、深い溜め息をついた。その日は結局、気持ちを伝えられなかった後悔に押し潰され、少しも眠れなかった。ただ、私を見つめる甲斐の不安げな瞳だけが、ずっと胸の中に残っていた。「あー……もう……何やってんだ、私……」確かに涙は消え去っていたはずだったのに、どうしてあの場面で泣いてしまったのだろう。あの人に渡したくない。甲斐は私の目を見て、ハッキリとそう言った。あのとき、キスを受け入れようとする前に、私は自分の気持ちを伝えるべきだったんだ。涙を流している場合じゃなかったのに。「青柳も……部屋を出てから言ってよ……」真白さんから連絡がきている。ただそれだけのことで、こんなにも不安になり、こんなにも胸が苦しくなってしまう。私は布団の中に潜り込み、深い溜め息をついた。その日は結局、気持ちを伝えられなかった後悔に押し潰され、少しも眠れなかった。ただ、私を見つめる甲斐の不安げな瞳だけが、ずっと胸の中に残っていた。一泊の温泉旅行を終え、私は甲斐が運転する車で実家まで送ってもらった。でも、昨夜の話の続きをすることはなかった。二人きりではなかったからだ。「まだ少し熱あるんだから、今日はゆっくりしてろよ」「うん、わかった。甲斐も蘭も、いろいろ心配かけてごめんね」「まさか風邪でもないのに熱出すとは思わなかったけどねー。疲れが溜まってたんじゃない?本当にゆっくり休んだ方がいいよ」甲斐と蘭は、だいぶ遅くまで飲んでいたみたいだけれど、全く二日酔いはしていないのか元気な様子だ。「じゃあ甲斐、次は私の家まで送って」「桜崎の家遠いから面倒なんだけどな」「文句言わずに送って。依織、じゃあねー!」私は手を振りながら、立ち去る甲斐の車を見送った。昨夜の話の続きは出来なかったけれど、今この場に蘭がいてくれて良かったと思った。今朝、甲斐の態度が少し私を避けるようなものに変わっていることに気付いてしまったのだ。気のせいだと言われれば、そうなのかもしれない。でも、気のせいだとはどうしても思えなかった。「ただいま」「お帰り、依織。温泉は楽しかった?」実家に帰宅した私を迎えてくれたのは、母だった。「はい、これお土産。皆で食べて」「ありがと。こういう定番の温泉まんじゅうが一番嬉しかったりするのよね。今お茶入れるから、食べて行けば?」「うん」実家に預けられていたもずくは、ゲージの中で私の姿を見つけ嬉しそうに尻尾を振っている。私はもずくを抱きかかえ、ダイニングの椅子に座った。そこからキッチンに立つ母の背中を見つめながら、子供の頃の記憶を思い出していた。私が子供の頃、母は仕事を掛け持ちしていたためほとんど家にいることがなかった。キッチンに立つのは、私の役目だった。そのせいか、たまの休みに母がキッチンに立つ姿を見ることが私は密かに好きだった。母が家にいることが、何より嬉しかったのだ。「で、旅行はどうだったの?甲斐くんとか蘭ちゃんたちと一緒に行ったんでしょ?」「楽しかったよ。温泉もやっぱり凄く気持ち良かったし。でも、昨日の夜急に熱出しちゃって……結局温泉は一回しか入れなかった」「あら、じゃあきっと今、何かに凄く悩んでるのね」「え?」母はお茶を私に差し出し、私の目の前の椅子に座った。「依織は昔から、何か悩み事があるとすぐ熱出してたのよ。すぐお腹もこわすしね」子供の頃から何も変わっていないことに恥ずかしさを感じながらも、急に熱を出してしまった原因が自身の悩み事に直結しているのだと知り納得した。

カテゴリー: 未分類 | 投稿者laurie6479 17:46 | コメントをどうぞ

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カテゴリー: 未分類 | 投稿者laurie6479 08:43 | 1件のコメント