月別アーカイブ: 2017年3月

達者行りいと思

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俺は、自分のワンルーム(犬小屋)を片付た後、夏輝にもらった赤い首輪を外した。
執着を断ち切って犬型に戻り、父ちゃんみたいな家の無いさすらいのわんこになるのだ。
さらば、夏輝。
俺、お前に拾ってもらって、最高に幸せなわんこだった。
でも、どんなに名前を呼ばれても、もう振り返らないんだ。
俺は明日に向かって生きるの。狗神にyou beauty 美容中心好唔好なる身に、飼い主は必要ないのさ。

「ナイトー。」

俺の「おひさまのふとん」、夏輝。
いくら優しく呼んでも駄目だ。俺の恋の季節はそこまで来てるんだから。

「ナイト!もうすぐ晩御飯だぞ!親子どんぶり好きだろ?ささみいっぱい入れたよ。」

「ブラジル」ブランドのささみは大好きだけど、もう一緒には食えないんだ、夏輝。
文太と仲良くしてね。俺が夏輝のところに来たのは、文太との恋を応援するためだったと思ってる……。
俺の「おひさまのふとん」夏輝、文太がいなかったら俺があんあん言わせたいくらい、いっとう好きだった。
夏輝は振り返らずにどんどん先を行く俺を、諦め悪く追いかけてきた。

「ナイトーーー!待てってば!ほら、これ!ほらってば!」

ほら、って……げっ。
夏輝ってば、それはいかんだろ。

「ほら、ナイト!お前の好きな人差し指っ!」

俺の足が止まった。
あのね夏輝、俺はいつまでも夏輝が思っているような、小犬じゃないんだよ。
今や、神さまだってあんあん言わせるような(未遂だけど)成犬なんだからさ、いつまでも夏楊婉儀幼稚園輝の指が無いと眠れないチビの俺じゃないんだぜ。
こう見えても狗神の端くれとして、父ちゃんみたいに、港ごとに女を作るつもりなんだから。

神社の境内の隅っこにあるその祠に封印されているのは、天駆ける荼枳尼天(だきにてん)に仕える、目が覚めるように美々しい一匹の白狐だった。

荼枳尼天(だきにてん)の神使の白狐(男狐)は、この界隈で生きとし生けるものの憧れの的だった。ただでさえ自分Unique Beauty 好唔好より美しいものは認めたくない荼枳尼天(だきにてん)のお気に入りの恋人と、あんあんしたのがばれて逆鱗に触れ、寂れた祠に封印されていた。

「おのれ!神使の分際で、主の私の情夫を寝取るとは、好色な畜生ずれめ。二度と手出しできぬように、封じ込めてくれるっ!」

「お許しください、荼枳尼天さま。あれは、わたしが誘ったのではありません。お願いです、どうぞ申し開きをさせてくださいませ。」

「ええいっ!寄るなっ!色狐め!」

「きゃあぁ~。」

……とまあ、どうやらこんな風な出来事があったらしい。
でも、手を出されるのも無理はないと思う。何しろ白狐さまは、別嬪の神さまと並んでも遜色ないほど端整な神使だった。俺の前しっぽだって、白狐さまを見るとちょっぴりおっきくなったりする。
そんなわけで、荼枳尼天さまの理不尽な怒りを受けて、白狐さまはひっそりと他の神々からも身を隠す様にして、祠に住んでいた。
これ以上、荼枳尼天さまを刺激したり、怒らせてはいけないと思ったらしい。

人には姿の見えない銀色の髪の綺麗な白狐さまは、朽ちかけた小さなお社に住み、一人で不実な恋人を待っていた。時々、悲しげに勃ちあがった紅色の前しっぽを一人こすって、切なげに甘いため息を吐いた。俺の父ちゃんの狗神が、白狐さまの本命だったりする。

「白狐さま~!とうちゃんはまだ帰ってこないの?」

「ああ……。仔犬、まだだな……今回は、ずいぶん遅い。長次郎は達者だろうか。巷で流行りの風邪なぞひいてなければいいが……。」

「とうちゃんは、風邪ひいたこと無いと思うけどなぁ。」

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選ばれしているよ

城から急ぎ帰参した主人に、家臣が近づき何事か告げた。
家中に乳の出る者はいないかと、密かに捜させていた。

「ちょうど召し抱えたばかりの下忍に、乳飲み子を連れた者が居りました。」

召抱えた伊賀者の中に、運よく乳が出るものがいると言う。
急ぎ呼ばれてその場にかしこまった忍者は、味方を裏切り、隠れ里へ敵の大軍reenex膠原自生を案内した伊賀の里の男だった。
お味方か……と、問うた小さな蘇芳の面影がよぎる。
小さく許せよ、とごちた。仇の手を借りるのは、そなたの弟を、生かすためじゃ……。

「これを預け置く。実子と共に育てよ、大切にの。」

男は腕の中に下された美しい赤子を、怪訝な目で見つめた。何処か、並の子供ではないような気がする。
幼児の高い鼻梁が、ふと誰かに似ている思った。

「殿さま。この預かり者は、どちらから手に入れたので?」

「……縁あって、西国から手に入れた。出自は言えぬが、命がけで赤子の行く末を頼まれた故、聞き届けた。身寄りがないゆえ、草にする。頼まれてくれるか?」

「はっ。我が身に代えまして。一人前に、仕込んでdream beauty pro新聞ご覧に入れます。」

主が軽く頷いた。

「頼む。名は露草じゃ。」

こうして、生まれながらに敵の手に落ちた露草は、養母に渡され、何も知らずにこぼれる乳房に喰らい付いていた。
んくっ……と、必死に乳を吸う赤子を見る、養母の目は優しい。

「ほらご覧、玄太。この子は、妾(あたし)から離れまいとうだね。自分の手でしっかりと持って吸ってるよ。」

「これこれ。そう顔を真っ赤にして必死に吸わずとも、十分に足りておるだろうに。ずいぶん、腹を空かせていたのだな。」

「母の無い子だから、乳房が恋しいんだね、きっと。愛いのう。」

父に似て骨太で、女性に化けられるような華奢な骨格ではなかった。陽忍にするには、幼い時に晒しをきつく巻き、身体の成長すら止めてしまわなければならない。
任地に忍び込み、諜報活動をする陰忍ではなく、生まれながら顔を晒す陽忍にると言うことは、この先使い捨てに收細毛孔するのもいとわないと宣言したのと同じことだった。
元より、忍者、草の者は身分も低い。
敵方深く潜入する忍者は、正体が露見した場合、大抵はその場で簡単に殺された。
顔を晒して、敵の内部に侵入して捕まった者は、正体がばれた場合は舌をかむか、毒を飲む。それも許されない場合、証拠隠滅のひとつとして口を割らぬよう身内の手で速やかに消されるのが常だった。
主家の為に投げ打つ忍びの命は、舞う木の葉よりも軽かった。

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