選ばれしているよ

城から急ぎ帰参した主人に、家臣が近づき何事か告げた。
家中に乳の出る者はいないかと、密かに捜させていた。

「ちょうど召し抱えたばかりの下忍に、乳飲み子を連れた者が居りました。」

召抱えた伊賀者の中に、運よく乳が出るものがいると言う。
急ぎ呼ばれてその場にかしこまった忍者は、味方を裏切り、隠れ里へ敵の大軍reenex膠原自生を案内した伊賀の里の男だった。
お味方か……と、問うた小さな蘇芳の面影がよぎる。
小さく許せよ、とごちた。仇の手を借りるのは、そなたの弟を、生かすためじゃ……。

「これを預け置く。実子と共に育てよ、大切にの。」

男は腕の中に下された美しい赤子を、怪訝な目で見つめた。何処か、並の子供ではないような気がする。
幼児の高い鼻梁が、ふと誰かに似ている思った。

「殿さま。この預かり者は、どちらから手に入れたので?」

「……縁あって、西国から手に入れた。出自は言えぬが、命がけで赤子の行く末を頼まれた故、聞き届けた。身寄りがないゆえ、草にする。頼まれてくれるか?」

「はっ。我が身に代えまして。一人前に、仕込んでdream beauty pro新聞ご覧に入れます。」

主が軽く頷いた。

「頼む。名は露草じゃ。」

こうして、生まれながらに敵の手に落ちた露草は、養母に渡され、何も知らずにこぼれる乳房に喰らい付いていた。
んくっ……と、必死に乳を吸う赤子を見る、養母の目は優しい。

「ほらご覧、玄太。この子は、妾(あたし)から離れまいとうだね。自分の手でしっかりと持って吸ってるよ。」

「これこれ。そう顔を真っ赤にして必死に吸わずとも、十分に足りておるだろうに。ずいぶん、腹を空かせていたのだな。」

「母の無い子だから、乳房が恋しいんだね、きっと。愛いのう。」

父に似て骨太で、女性に化けられるような華奢な骨格ではなかった。陽忍にするには、幼い時に晒しをきつく巻き、身体の成長すら止めてしまわなければならない。
任地に忍び込み、諜報活動をする陰忍ではなく、生まれながら顔を晒す陽忍にると言うことは、この先使い捨てに收細毛孔するのもいとわないと宣言したのと同じことだった。
元より、忍者、草の者は身分も低い。
敵方深く潜入する忍者は、正体が露見した場合、大抵はその場で簡単に殺された。
顔を晒して、敵の内部に侵入して捕まった者は、正体がばれた場合は舌をかむか、毒を飲む。それも許されない場合、証拠隠滅のひとつとして口を割らぬよう身内の手で速やかに消されるのが常だった。
主家の為に投げ打つ忍びの命は、舞う木の葉よりも軽かった。


カテゴリー: 未分類 | 投稿者luckryer 13:05 | コメントをどうぞ

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