そして私はたどり着く(´▽`)/

土曜日 曇り

そして私はたどり着く(´▽`)/

私は今、無人駅に1人座っている。あのカラフルな椅子と、黄色い点字ブロック。
遠出なんて何時ぶりだろう、そもそも家から殆ど出ていなかったものだから新鮮といえば新鮮だ。
といえども、別に行きたいところがあるわけではない。なんとなく、本当になんとなく家を出てきてしまったので駅に来た迄である。
乗るとしたらどちらの方向がいいのだろうか。どちらが山でどちらが海なのかもよくわからない。
取り敢えず、来た電車に乗車してみよう。
乗った電車はどこか懐かしい物だった。
学校の修学旅行なんかで乗ったりした、あの座席が回る新幹線のような感じ。新幹線に乗ったことがあるわけではないのでわからないが。
私の乗った車両には、腰の曲がった老婆がコックリコックリと眠りこけていた。
せっかくこんなに席が空いているのだ、窓際に座って景色を眺めよう。
ゆっくりと電車は動き始めた。
ガタンゴトン…。
本当に電車というのはこういう音がするのだな。
走り始めて私はそう感じた。
犬がワンワンと言われても実際はワンワンと鳴かないように、電車もガタンゴトンとはいわないものだと思っていた。
通り過ぎていく桜並木。
もうこんなに桜が咲いていたんだな。満開ではないか。
いや、TVなどで桜前線がどうのとかは聞いたことぐらいあった。
しかし、間近で見る桜というのは確かに見事だ。日本という国に生きている実感が湧いてくる。
天気がいい日に花見をするのもいい。外は嫌いだが、やはり美しい。たまにはいいものだなと思う。
真っ赤な鉄橋を抜けて、渡る川。
谷のようになっている。
ふと見ると真っ白な鳥が飛んでいた。
アルビノ種か?形からして鴉の類だろう。綺麗だな、鴉は好きだ。ああも誇り高く生きている動物が他にいるだろうか。ゴミを漁り、意地汚いというものもいるが、私はそうは思わない。あれこそが美の最骨頂。あの漆黒の羽は全てを見透かし、魅了する。
そのアルビノ種を見れたことは非常に光栄なことだ。
その白い鴉の周りには2匹ほどの小鳥が飛んでいた。1匹は濃い黄色のような色合い、もう1匹は緑というより翠というかんじの色をしていた。
仲むつまじく飛んでいく3匹は家族のように見えた。
種類、種族限らず仲がいいというのはいいことだ。差別の絶えない人間とは違う。
ふと、空腹を覚え駅弁を買った。
タコの炊き込みご飯を頬張りながら、窓の外を眺めるとどこかの学校だろうか、その前を通った。
やっぱり桜が満開で、新生活の始まりを感じさせた。
ぐんと電車はスピードをあげた、山と山の間を駆け抜ける。
新芽の出始めた木々を抱える山々は、川を挟むように聳えていた。
これからは川に沿って進むようだ。先ほど渡った川はこの川の尻尾だったのだろうか。
それならばまたあの鳥たちにも会えるだろうか。

もうすぐ終点というアナウンスが流れる。
あと1つ駅を過ぎれば終点だ。
早いものだ、もう少し乗っていたい。久しぶりの遠出なのだから、と惜しまれる。
そして最後の通過駅、あの老婆が席から立ち上がった。
ここで降りるのか。
すると老婆は私にむきあって言った。
「たまにはいいでしょう?こういうのも」
老婆はそれだけいうと、電車から降りていった。
なんなのだろう、ボケてるのか。
それとも、なにかの…。
いや、やめよう。なんでもないのだ、きっと。

終点、降りると桜吹雪だった。
目の前が見えなくなるくらいの桜吹雪だった。
ああ、いいな。こういうのも。
はっと思い出す老婆の言葉。
『たまにはいいでしょう?こういうのも…』
やっぱり、なんでもないのだ。なんでもないのだ。
遠くに飛んでいく3匹の鳥たちに私は気づかなかった。
2015 15才 kirin


カテゴリー: 日記 | 投稿者ていちゃん 20:07 | コメントをどうぞ

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