終始無言何かのイ

春日大社を後にして公園の中を歩いていると、前方に年配女性のグループが立ち止まっていた。口々に「まあ、そうなんですか」「いいもの見せていただきました」「おおきにー」と言って彼女らが離れて行くとそこに、自転車を支えて立っている和装のおじさんがひとり残った。ベレー帽のような帽子をかぶり、もんぺを穿いているようだ。

おじさんはその場に立ったままわたしの方を見ている。なんだろう、何か見せていたようだけど、押し売りだったらいやだな、面倒くさいから話しかけられたくないなと思って目を伏せ道の反対の端を歩く。それでもおじさんの目が追ってくるのでちらりと見ると、手を伸ばしてわたしを招く。気づかないふりをして通り過ぎかけて振り返ると、やっぱり無言で手招きしてきて、その手を今度は上に挙げ、そばの木の上の方を指し示した。何か、居るらしい。

それなら、と、おじさんのそばに寄って木を見上げると、茶色くて丸いプラスチックの板のようなものが二枚、水平に刺さっているのが見えた。タズラ? と思うには場所が高すぎる。次の瞬間「サルノコシカケ?」と気づいておじさんにそのまま言うと、オジサンは「いかにも、」というように鷹揚に頷いた。

初めて見ました。教えてくださってありがとうございましたと感激を伝えてもオジサンは。でも、なんだかとても得意そうなのだった。


カテゴリー: 未分類 | 投稿者yudfry 13:26 | コメントをどうぞ

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