錦織が出場予定にしていて欠場したブリスベン国際の試合中に、選手が負傷しコートに倒れた瞬間、相手選手がネットを飛び越え、誰よりも早く駆けつけ、ベンチまで肩を貸して助けるというシーンが放映され、「スポーツマンシップの終着点」「一流とはどうあるべきかを見せられた」と感動を呼んでいるそうだ。
【動画】猛ダッシュで負傷者の元へ、「感動の25秒」も…大会公式ツイッターが公開したディミトロフの“ネット越え神救助”の一部始終
咄嗟の行動で世界に感動を呼んだのは、世界ランク3位のグリゴル・ディミトロフ(ブルガリア)だ。
1月5日の準々決勝・カイル・エドモンド戦。1-1で迎えた最終セット、4-4と接戦を演じていた第9ゲームの最中だった。ベースライン付近でエドモンドが声を上げ、突然、コートに倒れ込んだ。ラケットを手放し、両手で右足付近を押さえ、うずくまった。故障か――。会場の誰もが息をのんだ次の瞬間だった。
真っ先に動いたのは、対戦相手であるはずのディミトロフだった。血相を変え、ネット方向に猛ダッシュ。そして、ラケットを手にしたまま豪快にネットを飛び越え、全速力で倒れ込んだエドモンドのもとへ関係者より早く駆けつけた。すると、心配そうに二言、三言声をかけ、苦悶の表情のエドモンドが起き上がろうという素振りを見せると、両手で引っ張り上げたのだ。
ディミトロフの行動とエドモンドの闘志に会場は一躍、拍手喝さいに包まれた。それでも、ディミトロフの行動は終わらない。自分と相手のラケットを拾い上げると、エドモンドに肩を貸し、腕を支えたままベンチまで寄り添ったのだ。およそ15メートルの距離を25秒かけてゆっくりと。その間、会場の拍手が鳴りやむことはなかった。
「一流の振る舞いだ、ディミトロフ。テニスが他のスポーツよりも一段上手な理由を目にした」
「スポーツマンシップの偉大な象徴」
「一流とはどうあるべきかを見せられた」
「ディミトロフは誰よりも早く助けた。素晴らしい対応だ」
「これがスポーツの良いところ」
「子供たちは彼の振る舞いを目に焼き付けるんだ」
「尊敬に値する行動」
「ディミトロフ…なんて愛すべき男なんだ!」
このように続々と声が上がり、米誌「スポーツ・イラストレイテッド」は「グリゴル・ディミトロフは対戦相手カイル・エドモンドの負傷を助けるためにネットを越えた」と特集。「テニスはスポーツマンシップに尽きることがないスポーツだ。しかし、グリゴル・ディミトロフが示した咄嗟のスポーツマンシップを見ることができるのは稀だ」と拍手を送っている。
その後、懸命にコートに立ったエドモンドに対し、ディミトロフは死力を尽くして対峙。最終的に2セットを連取し、準決勝に駒を進めた。しかし、結果以上にブルガリア人の紳士的な行動は世界のテニスファンの心に刻まれた。
ジ・アンサー編集部●文 text by The Answer