ビデオ判定に揺れるプロ野球 テニスはCG判定で審判失業か
日本のプロ野球では2010年にビデオ判定が導入された。ただ、審判は必ずしも監督の求めに応じる必要はなく、2010年には小久保裕紀(当時ソフトバンク)の大飛球のファウル判定について、審判団が秋山幸二監督のビデオ判定要求を拒否する“事件”が起きたこともある。
そうした事態を防ぐ意味もあり、今季から、メジャーリーグの「チャレンジ」制度にならい、監督が1試合に2度、ビデオ判定を要求できる「リクエスト」制度が導入される。ルールブックに、リプレーの検証要求が明文化された。
技術革新で変わるルールもある。テニスのグランドスラムにおいて、CGによるイン・アウト判定(2006年~)で有名となったのが「ホーク・アイ」だ。英国「ホーク・アイ社」(2001年創業)が開発し、現在は日本のソニー傘下にある。ホーク・アイ・ジャパン代表の山本太郎氏が語る。
「ホーク・アイにはふたつの大きな役割があります。ひとつがボールトラッキング。高弾道ミサイルの追跡技術から着想を得て、試合場の周りに設置したカメラを使って、ボールの位置情報をCGでミリ単位で再現する。テニスのイン・アウトの判定をはじめスポーツの白黒をはっきりさせる場面に用いられます。もうひとつは、ビデオ判定。こちらは撮影された映像をリプレーして試合を捌く審判を補助する役割を担います」
すでに海外の一部の大会では、線審(最大9人)をゼロにして、ラインジャッジはすべてホーク・アイが判定する試みも行われている。そのうち、試合後に主審と選手が握手するシーンもなくなるかもしれない。
現在、同社の技術は、バレーボールやラグビーなど20種類以上の競技に活用されているという。デジタル化のうねりによって、スポーツのルールが変更される時代に突入している。
●文/柳川悠二(ノンフィクションライター)
※週刊ポスト2018年3月2日号