大学に着くと今から1限に出るのは中途半端な時間で猴棗散、とりあえず学食へ向かった私は例の土方さんの会社へと電話を入れた。
・・・だけど電話口に出たのは、酷く無愛想な雰囲気の男性。
こりゃ早々にお礼だけ言って電話を切りたいなって感じだ。
「医務室まで運んで頂いたそうで、」
「具合悪い時は無理すんじゃねえぞ」
「はい、ありがとうございます」
あら、意外と優しいかも。
口調はぶっきらぼうだけど、そう怖い人ではないのかもしれない。
そんなことを考えていると、土方さんが「そういえば・・・」と話を変える。
「お前、倒れた時にピアスを落としただろう」
「えっ」
「咄嗟に拾ってスーツのポケ猴棗散ットに入れたんだが、駅員に渡しておくのを忘れちまった」
電話を少し離して耳朶を触ってみると、確かに片方ピアスが無い。
安物なら「捨ててください」と言ってしまう所だったけど、あれは20歳の誕生日に両親からもらった大事なものだ。
「申し訳ないんですが・・・それ、受け取りに行ってもいいですか?すごく大事なものなんです。」
「構わねえが、受け取りって俺の会社まで来るつもりか?そんな面倒なことするなら、夜でよければ帰りがてら薄桜駅で手渡してやるよ」
「えっ、いいんですか?」
「どうせ降りる駅だ。構わねえよ。」
「ありがとうございます!」
何ていい人なんだ・・・!
例え生え際後退してようがお腹が出てようが加齢臭バリバリのオッサンだろうが、今の私はあなたに力一杯ハグしたい気分です。
「あの、実は私・・・薄桜駅の駅前の店でバイトをしていて。終わるのが20時頃なんですが・・・」
「ちょうど俺の帰りもその位の時間になりそうだ。ならお前のバイト終わりに合わせて駅に行ってやるよ」
「すみません・・・」
私は電話口で小さく縮こまる。
さすがに申し訳なくて語尾が消え入りそうになった。
こりゃクレープ3個くらい作って差し上げたい気分。いや5個でもいい。
そんなわけで、とりあえず私たちは夜に薄桜駅で待ち合わせをす猴棗散ることになったのだ。