と言ってわたしは狭山の神社で掘り出したあのアメジスト、そしてそれを抱くことによってわたしとユナが観たあのパラレルワールのことなどをかいつまんで彼女に話しつつ、
と、とりあえず詳しいことは出来れば今夜、何処かで会って話したいのですが?」
と言うと、
わかったわ。
じゃあ、今夜9時に『赤い砂漠』で」
そうジェシカは言うとすぐに電話を切った。
わたしはこれで、とりあえずどんな形にせよ何かしら前に進める、そう確信すると4時間あまりのトウキョウまでのバス旅を熟睡の中で過ごした。
そしてもちろんその時点においてわたしは、あのアメジストを再び抱いて寝ようとなどは決して思わなかった。
バスは夕方過ぎには新宿に着いてしまい、わたしはそのまま新宿で時間を潰す気にはなれず、一度自宅に帰り荷物を置いて一休みしてから再び夜の8時過ぎに家を出て新宿コールデン街へと向かうことにした。
念のためジェシカに見せようとアメジストのジオードは布切れに包みデイパックに入れ持って出た。
わたしがほぼ9時ちょうどに赤い砂漠」の扉を開けた時、前回同様すでにジェシカはそのカウンターでタンカレーのロックを飲んでいた。
どうも、と言った感じでわたしが頭を下げると、
お帰り」
と言ってジェシカはその三白眼の目でわたしを見つめたが、その顔は笑っているのか?それとも怒っているのか?わたしには区別が出来なかった。
どうも。
早かったですね?」
まあね。
実はあたし、この後すぐに行かなければいけないところがあって、あなたとはあまり話す時間がないのよ」
え?
そ、そうなんですか?」
ええ、だからそう、今からすぐ要点だけ話してくれる?
ああ、それとその???、例のアメジストは持って来てくれた?」
ええ、も、もちろん」
と言ってわたしはそのジオードをデイバックより取り出し、ジェシカの目の前のカウンターの上にそっと置いた。
そしてひと言、
フィオレンテ」
と言った。
ふぃお???れん?」
フィオレンテです。
わたしへのメッセージ???、あっちの世界で生きていたニカイドウミクからのわたしへの」
するとジェシカはほんの一瞬だけ目を閉じ、何かを口許でささやいたかと思うといきなりパッとその目を開き、その場で何かを思いついたかのような明るい表情となり、
ああ、フィオレンテ。