月別アーカイブ: 2016年11月

が東からにわかに

「じゃあ、きまりだ」ガリオンは言った。「ぼくたちの計画をきみたちが部隊に伝えてくれるなら、ダーニク公開大學 課程とぼくはこれから空想上のかがり火のおこしかたを習いはじめる」
それから一時間ばかりたったころ、リヴァの部隊は緊張ぎみに行動を開始した。全員がいつでも武器をとれる体勢で、灰緑色のハリエニシダのしげみを歩いていった。前方に丘陵の

裾野が黒々と横たわり、一行のたどる草深い道は、熊神教の信者たちのひそむ石ころだらけの峡谷へまっすぐつづいていた。その峡谷に足をふみいれたとき、ガリオンははやる気持ち

をおさえ、意志の力を働かせて、ポルおばさんに教わったことをひとつのこらず慎重に思いおこした。
計画はびっくりするほどうまくいった。最初のグループ公開大學 課程が武器を高々とかざし、勝利の叫びを発しながら隠れ場所からとびだしてきたとき、ガリオン、ダーニク、ポルガラは間髪を

いれず残る三つの雨溝の入口を封鎖した。突撃してきた信者の面々は、突然仲間の戦闘参加をさまたげた炎の出現に驚愕した。かれらはひるみ、勝利の声は無念の呻きに変わった。ガ

リオン率いるリヴァの兵士たちは、一瞬のためらいをすかさず利用した。最初のグループはじわじわと撃退され、さきほどまで潜んでいた雨溝に閉じ込められた。
ガリオンは戦いの経過にはほとんど注意をはらうゆとりがなか公開大學 課程った。レルドリンとならんで馬にまたがっていたかれは、戦いがくりひろげられている雨溝の向かいにある、もうひと

つの雨溝の入口に、火のイメージと、熱さの感覚と、火の燃えさかる音を投影するのに全神経を集中していたのだ。おどる炎をすかして、信者たちが実際には存在しない強烈な熱気か

ら顔を守ろうとしているのがぼんやりと見えた。そのとき、だれひとり思いもしなかったことが起きた。ガリオンに封じ込められた信者たちが、あたふたとよどんだ池の水をバケツい

っぱい、空想の火にかけはじめたのだ。むろんジュッと音がするわけでもなく、幻影を消そうとするその試みは目に見えるいかなる効果ももたらさなかった。少ししてから、ひとりの

信者がへっぴり腰でおそるおそる火をくぐりぬけた。「これは偽物だ!」かれは肩ごしにうしろへ叫んだ。「この火は偽物だぞ!」
「だが、これは本物だ」レルドリンが不気味につぶやいて、その男の胸を矢で射抜いた。信者は両手をあげて、火のなかにあおむけにたおれた――男の死体は焼けなかった。それがい

っさいを暴露してしまったことは言うまでもない。最初は数人だったのがしだいにふえ、信者たちはなだれをうってガリオンの幻からとびだしてきた。レルドリンの両手が猛スピード

で動いて、雨溝の入口の信者たちに次々に矢を射ち込んだ。「数が多すぎるよ、ガリオン」レルドリンは叫んだ。「ひとりじゃくいとめられない。退却だ」
「ポルおばさん!」ガリオンはどなった。「やつらが火をくぐってでてきた!」
「押し戻すのよ」ポルガラが声をはりあげた。「意志の力を使うのよ」
ガリオンはさらに神経を集中させて、雨溝からあらわれる群衆に堅固な意志の壁をつきつけた。はじめのうちはうまくいくかに思えたが、並たいていの努力ではないので、すぐに疲

れてきた。あわてて立てた壁のはじがすりきれだして、ガリオンが死にものぐるいで撃退しようとした連中がその弱い部分に気づきはじめた。
ありったけの集中力で壁を維持しようとしているとき、遠雷に似た不機嫌なとどろきがかすかに聞こえてきた。
「ガリオン!」レルドリンが叫んだ。「騎馬戦士だ――何百といるぞ!」
ガリオンは暗澹たる思いですばやく峡谷を見あげた。騎馬戦士の一群あらわれて、けわしい横断路をおりてくる。「ポルおばさん!」ガリオンはさけぶなり、〈鉄

拳〉の大剣をぬこうと背中に手をのばした。
ところが、騎馬戦士の波はガリオンの目の前まで来るとくるりと向きを変え、ガリオンの壁をいまにも破ろうとしている最前列の信者たちにつっこんだ。この新たな兵力を構成して

いるのは、革のように丈夫でしなやかな黒ずくめの男たちだった。どの男の目も一様に奇妙に角ばっている。
「ナドラク人だ! まちがいない、ナドラク人だ!」バラクが峡谷の向こうから叫ぶのが聞こえた。
「ナドラク軍がこんなところでなにをしているんだ?」ガリオンはひとりごとのようにつぶやいた。
「ガリオン!」レルドリンが大声をあげた。「騎馬戦士のまんなかにいるあの人――ケルダー王子じゃないか?」
すさまじい乱闘の中へ突進する新たな軍団は、戦いの流れをみるまに変えた。かれらは雨溝の入口からでてくる信者たちの正面につっこみ、おどろいている信者たちにおそるべき痛

手を加えた。

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マンドラレンが大き

一行がジャーヴィクショルムにいたる曲がりくねった入り江の広い口にはいったのは、日が沈もうというときだった。「すっかり暗くなってから接近したほうがいいんじゃないかな?」〈海鳥〉号の前部甲板でガリオンは他の王たちにたずねた。
アンヘグは肩をすくめた。「わしらが行くことは連中にはわかっているんだ。ハルバーグ海峡を出てからずっと見張っていたからな。おまけに、わしらがここにいることも知っているんだから、崖の上の連中は全力をあげて艦隊を見張ろうとするだろう。だから、そのときがきたら、きみとブレンディグは楽々背後から連中にしのびよることができるはずだ」
「そうか、なるほど」
バラクが片腕のブレンディグ将軍と一緒にやってきた。「綿密に計算したところでは、真夜中ごろに出発するのがよさそうだな」バラクは言った。「ガリオンと残りのおれたちがまず斜面をよじのぼって、都市の裏手にまわりこむ。ブレンディグとかれの部下たちがそのあと斜面をのぼって、投石器をうばいとる。空が白みだしたらすかさず、ブレンディグが北側に石を投げつけるんだ」
「そのすきにガリオンは所定の位置にたどりつけるのかね?」フルラク王がきいた。
「その時間はたっぷりありますよ、陛下」ブレンディグがうけあった。「バラク卿の話では、てっぺんまでのぼってしまえば、地形は平坦そのものだということですから」
「木もほうぼうに立ってる。隠れる場所は木がいくらでも提供してくれるよ」バラクは言った。
「都市を攻撃するときだが、距離はどれくらいあるんだろう?」ガリオンがたずねた。
「ええと、五百ヤードってところだな」バラクが答えた。
「かなりあるね」
「おれなら走っていきたいね」
入り江のおだやかな水面の上に夕暮れがゆっくりと訪れて、両側にそそりたつけわしい崖を紫色にそめた。ガリオンはわずか数時間後には部下たちとよじのぼる予定の急斜面を、消えようとする最後の日差しでくまなく点検した。頭上でなにかが動いたのに気づいて視線を上げると、白いぼんやりしたものが紫色の静かな空中を音もなくすべっていた。白くやわらかな羽が一枚、ゆっくりとまいおりてきて少しはなれた甲板の上に落ちた。ヘターがおごそかに歩みよってそれをひろった。
そのすぐあとに、青いマントに身をつつんだポルおばさんが甲板を歩いてきてかれらに合流した。「造船所に接近したら、じゅうぶん注意しなければだめよ」ブレンディグとそばに立っていたアンヘグにポルおばさんは言った。「敵は投石器を浜へおろして、こちらの接近をはばもうとしているわ」
「予測していたことさ」アンヘグはたいして気にしていないらしく肩をすくめた。
「彼女の言うことにはちゃんと耳をかたむけたほうがいいぜ、アンヘグ」バラクがおどかすように言った。「おれの船を沈めでもしたら、そのほおひげを一気にむしりとってやるからな」
「自分の国の王に話しかけるにしちゃ、ずいぶんと思いきった言い方だな」シルクがジャヴェリンにささやいた。
「都市の裏手の警備はどの程度なのかな?」ガリオンはポルガラにきいた。
「城壁は高いし、門は頑丈そうだけれど、兵の数は少ないわ」
「いいぞ」
ヘターが無言でポルガラに羽をわたした。
「あら、ありがとう。うっかり見落とすところだったわ」
なだらかにうねる台地につづく丘の斜面は、ガリオンが〈海鳥〉号の甲板からながめて判断していた以上にけわしかった。真夜中の暗闇のなかではほとんど見えない砕けた岩のかたまりが、足の下で意地悪くすべり、斜面に密生する背の低いしげみの枝は、必死で上へのぼろうとするガリオンの顔や胸をわざとつついてくるように思えた。鎖かたびらが重くて、かれはたちまち汗みずくになった。
「骨がおれるな」ヘターがひとこと言った。
ようやくそのけわしい斜面をのぼりきったときには、淡い銀色の月がのぼっていた。のぼりついてみると、そこに広がる台地はモミとトウヒの鬱蒼たる森におおわれていた。
「これは思っていたより時間をくいそうだな」バラクがおいしげった下生えを見ながらつぶやいた。
ガリオンはひとやすみして息をついた。「小休止しよう」友人たちに告げた。行く手にたちふさがる森をガリオンはむっつりとにらみつけた。「ぼくたち全員が森をつっきろうとすれば、崖の上の投石器のやつらに気づかれてしまうだろう。ここは斥候を送りだして小道かなにかをさがしたほうがいいと思う」
「おれにちょっと時間をくれ」シルクが言った。
「だれか連れていったほうがいいよ」
「足手まといになるだけだ。すぐに戻る」小男は森の中に見えなくなった。
「ちっともかわらないね、かれは」ヘターがつぶやいた。
バラクが短く笑った。「本気でシルクが変わると思ってたのか?」
「夜明けまであとどのくらいだと思われる、閣下?」なチェレク人にたずねた。
「二時間――三時間ぐらいかな」バラクは答えた。「斜面に相当手間取ったからな」
弓を背中にしょったレルドリンが暗い森のはじにいたかれらのところへやってきた。「ブレンディグ将軍がのぼりだしましたよ」
「片腕だけでどうやってあそこをよじのぼるんだろう」バラクが言った。
「ブレンディグのことならそう心配することはない」ヘターが答えた。「やりだしたことはいつでもちゃんとやりとげる」
「たいした男だな」バラクは感嘆のおももちだった。

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てわたしにゆずることに

夫人は目をうるませて力なくガリオンを見つめた。「騎士道にもとるふるまいですわ、陛下」彼女はガリオンを責めた。
「ぼくはセンダリアの農場育ちですからね」ガリオンは男爵夫人に思い出させた。「高尚な教育優悅 避孕は受けられなかったから、ときどきこういうちょっとした行きすぎをやるんですよ。しかし、あなたの身投げを許さなかったことに関しては、いつかきっと許してもらえると思う。さて、失礼してむこうのばか騒ぎを止めに行かなくては」ガリオンはきびすをかえして鎧を鳴らしながら階段へ向かった。「そうそう」かれは男爵夫人をふりかえった。「ぼくが背をむけたとたんに飛び降りようなんてしないように。ぼくの腕は長いんだ、ネリーナ――とてもね」
男爵夫人はくちびるをふるわせてガリオンを見つめた。
「そのほうがいい」ガリオンは階段をおりていった。
マンドラレン城の召使いたちは下の中庭へ大股にでてきたガリオンのけわしい顔をひとめ見るなり、こそこそと道をあけた。ガリオンは城まで乗ってきた軍馬にやっとの思いではいあがり、背中にさげたリヴァの王の巨大な剣の位置を正すと、まわりを見まわして命じた。「だれか槍をもってきてくれ」
人々はわれ先にと何本かの槍を持ってきた。ガリオンは一避孕 藥 副作用本を中から選んで、ひづめの音も高く急いで出発した。
マンドラレンの城塞のすぐ外に広がるボー?マンドルの町の住民は、城塞の内側の召使い同様分別があった。怒ったリヴァ王が通過したとき、玉石敷の通りは人っ子ひとりなく、町の門は大きく開け放たれていた。
ガリオンはこれからアレンド人の注意をひきつけなくてはならなかったが、開戦のせとぎわにいるアレンド人ほど気をそらしにくい人々もなかった。何かでかれらをびっくりさせる必要がある。緑豊かなアレンドの田園地帯を走りぬけ、かやぶき屋根のこざっぱりした村々やブナやカエデの木立を通過しながら、ガリオンは頭上をかすめ飛ぶ灰色の雲を値踏みするようにながめた。計画とも言えないようなもやもやしたものが、そのとき頭にうかびはじめた。
到着してみると、ひろびろとした草原のむこうとこちらに、両軍が整列して口服 避孕 藥にらみあっていた。アレンドには多数の兵がひとりずつ鬨《とき》の声をあげるという昔ながらのならわしがあるが、それはすでに終わっていた。それは言うならば、それにつづく乱闘の序幕戦として定着したならわしだった。両軍が満足そうに見守る中、戦場のまんなかで鎧兜に身を固めた数人の騎士たちの槍攻撃がはじまった。血気にはやる愚かな若い貴族たちが双方から突進し、砕けた槍の残骸が芝にちらばった。
ガリオンはひとめで状況を見て取ると、そのまままっすぐ争いのまっただなかへのりこんでいった。このさい多少のずるは許されなくてはならない。かれが持っている槍は、相手を殺すか不具にしようとしているミンブレイトの騎士たちの槍と少しも変わらないように見えた。だがひとつだけ大きな違いがあった。ガリオンの槍は彼らの槍とちがって、どんなことをしても絶対に折れないのだ。さらに、それは絶対的な力という後光にも似たもので包まれていた。ガリオンはその槍の鋭い切っ先でだれかを刺そうとはこれっぽっちも思っていなかった。かれが望んでいるのは、ひたすら、騎士たちに馬からおりてもらうことだった。あっけにとられている騎士たちのまんなかをくぐりぬけて、まず三人をたてつづけに鞍から投げおとした。次に向かってきた二人をあっというまに下へつきおとした。あまり手際があざやかだったので、ふたりの騎士が落下する騒々しい音も、ひとつの音としてしか聞こえないほどだった。
しかしながら、アレンド人が頭として使っている硬い骨をやわらかくするには、もうすこし適当な見せ場が必要だった。ガリオンは無敵の槍をあっさり捨てて、背中へ手をのばし、リヴァ王の剣を抜いた。〈アルダーの珠〉がまばゆい青い光を放ち、剣自体がたちまち炎に包まれた。いつものことだが、剣はその並はずれた大きさにもかかわらず、ほとんど重さを感じさせなかった。ガリオンは目が回るほどの速度で剣をふりまわした。おどろいているひとりの騎士めがけて突進し、持っていた槍を柄までこまぎれにしてしまった。残りが柄だけになると、ガリオンは燃える剣の平たい部分で騎士を鞍からはたきおとした。それからすばやく向きを変え、つきだされた鎚矛をまっぷたつにしたあと、それを持っていた騎士を馬もろとも地面につきたおした。
ガリオンのすさまじい攻撃にミンブレイトの騎士たちはおそれをなしてあとずさった。しかしかれらをふるえあがらせたのは、ガリオンの圧倒的な強さばかりではなかった。リヴァの王はくいしばった歯のすきまから強者たちを青ざめさせる選りすぐりの呪いを吐き出していた。ガリオンは燃えるような目をしてあたりを睥睨すると、意志の力を結集させた。赤々と輝く剣をかざすと、頭上の曇天を剣でゆびさした。「いまだ!」鞭がしなうような声で叫んだ。
ベルガリオンの意志の力が届いたとき、雲はふるえ、ほとんどすくみあがったように見えた。大木の幹ほどもある太い稲妻が落ちて、鼓膜をふるわす大音響が生じ、四方の地面を数マイルにわたってゆるがした。雷が落ちた草原に大きな穴がぽっかりあいた。ガリオンは何度もくりかえし稲妻を呼んだ。雷の音が空中に充満し、大地が焦げて煙がたちこめた。軍団は急におじけついた。
やがてすさまじい強風が襲いかかった。それと同時に雲が裂けてバケツの水をひっくりかえしたような雨が両軍を水びたしにし、騎士たちはその衝撃で文字どおり馬からころげおちた。強風がうなりをあげ、どしゃぶりがかれらをずぶぬれにしているあいだにも、稲妻はひきつづき両軍をへだてている草原をゆるがし、焦がし、湯気と煙で空中を満たした。草原を横切るのはとうていむりだった。
ガリオンはそのおそるべき光景のどまんなかで、おじけついた軍馬にむっつりとまたがっていた。かれのまわりでは稲光が踊っていた。両軍の上にさらに何分か雨をふらせ、かれらの注意を十分にひけると確信すると、燃える剣をなにげなくひとふりして、どしゃぶりをとめた。
「こういう愚行はもうたくさんだ!」雷もかくやと思われる大声でガリオンは言った。「ただちに武器をおろせ!」
騎士たちはガリオンを見つめ、次にうたがわしげにたがいに見つめあった。
「いますぐにだ!」ガリオンはさけぶと、命令を強調するためにもういちど稲妻をおこした。
あわてて武器を捨てる騒々しい音がひびいた。
「いまここで、エンブリグ卿とマンドラレン卿に会いたい」ガリオンは剣の先端で馬の正面をさした。「ただちにだ!」
ふてくされた学校の生徒のように、鎧兜に身を固めた二人の騎士がしぶしぶガリオンの前へ進みでた。
「きみたちふたりは自分たちのしていることをどう思っているんだ?」ガリオンは問いつめた。
「名誉からしたまでのことです、陛下」エンブリグ卿が口ごもりながら言った。エンブリグ卿は四十がらみのがっしりした赤ら顔の男で、酒のみに特有の紫色の鼻をしていた。「マンドラレン卿がわたしの縁つづきの女性を誘拐したのです」
「あの女性についてのおぬしの関心は彼女に権力をふるうことだけではないか」マンドラレンが熱っぽく反論した。「おぬしは彼女の気持ちを無視して、士地と家財を奪い、さらに――」
「もういい」ガリオンはぴしゃりと言った。「それで十分だ。きみたちの個人的けんかがアレンディアの半分を戦争のせとぎわへ追いこんだ。それがきみたちのしたかったことか? 我を通すことができたら、自分の国がめちゃくちゃになってもいいのか? きみたちはそれほどわからずやなのか?」
「しかし――」マンドラレンは反論しようとした。
「しかしもくそもない」ガリオンはかれらをどう思っているかについて話しつづけた――えんえんと。その口調は軽蔑にみち、言葉の選択は多岐にわたった。ガリオンが話すにつれて、ふたりの顔は青くなった。やがてガリオンはレルドリンが注意深く耳をかたむけているのを見つけた。
「そしてきみだ!」ガリオンは若いアストゥリア人に注意の矛先を転じた。「きみはミンブルでいったいなにをしている?」
「ぼくですか? でも――マンドラレンはぼくの友だちですよ、ガリオン」
「かれが助けを求めたのか?」
「その――」
「そうではあるまい。きみが勝手にそう思ったのだ」それからガリオンはレルドリンを非難の対象に含め、かれらをいましめながらさかんに右手で燃える剣をふりまわした。三人はガリオンが彼らの面前で剣をふりまわすたびに、目を大きく見開いて不安げに剣を見守った。
「よろしい。それでは」空気中の稲妻を一掃したあと、ガリオンは言った。「これがわれわれのしようとしていることだ」とエンブリグ卿にいどむような目を向けた。「わたしと戦いたいかね?」好戦的に顎をつきだしてきいた。
エンブリグ卿の顔が真っ青になり、目がとびだしそうになった。「わたしがですか、陛下?」かれはあえぐように言った。「このわたしを〈神をほふる者〉と戦わせようとおっしゃるのですか?」彼はがたがたとふるえはじめた。
「だめだろうな」ガリオンはぶつぶつ言った。「そうすると、きみはネリーナ男爵夫人について要求したものいっさいをただちに放棄しなる」
「喜んで、陛下」エンブリグの口から言葉が我先にこぼれでた。
「マンドラレン、きみはわたしと戦いたいか?」
「あなたは拙者の友だちです、ガリオン」マンドラレンは抗議した。「あなたに手をあげるくらいなら死んだほうがましです」
「よろしい。それでは男爵夫人にかわって、領地に関する所有権の主張をわたしに一任せよ――ただちにだ。いまからわたしが夫人の保護者になる」
「わかりました」マンドラレンは神妙に答えた。

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