「そうではなくて、日本人は出会いを縁というのですが、うまい言い方が見つかりません……もどかしいです」
道ならぬ恋、結ばれぬ二人、男色のお相手、最後の逢瀬……そう言う単語で現される二植物營養素人は、たぶん哀しい恋をしている。父もそうと知っていて、ただ一度最後の晴れの席に呼ぶことを許したのだろう。
当時既に、長男である兄が出征しなければならないほど戦局は悪化していて、光尋が出征後帰ってくる保証はどこにもなかった。
二階の窓から広い若宮家の庭を眺めると、二人が肩を寄せ合って歩くのが見えた。誰もいない場所で軍服姿の兄が、雪華の手を曳き寄せやがて二人の姿が重なった。
二人の間の会話を、基尋は知らない。
「……お前の事を、男妾(おとこめかけ)などと陰口をたたく輩もいただろうに、こんな所まで来てくれて嬉しかったよ。」
「お母さまの年始のお着物を、いつも通り三越で買うお約束をなさったのでしょう?お母されると、基尋も困ります。」
それから程なく、傷の癒えた基尋は、浅黄と二人改めて花菱楼楼主と対面した。
楼主は雪華花魁に話を聞いて居たらしく、基尋に同情的だった。
「若さま。難儀なことでございましたな。わたしがあなたにご用立てし、本郷の宮様にお渡しは、壱万円でした。その半金安利呃人を本郷の宮様は着服したことになります。けれども、確かにここに柏宮さまの御捺印なさった証文が有る以上、売買契約は柏宮様と、この花菱楼の間でなされたことに成ります。おわかりですか?」
「はい。重々分かっております……。父上はいつもお相手をすぐに信用なさって、余り証文をご覧になったりはしなかったので、持ちこまれた契約書も偽造されたものとは思わなかったのだと思います。」
現の世界にいる大事な間夫(恋人)に託された、弟分のささめが初めて客を取る時は、自分の馴染み、優しい澄川に頼んでやろうと思っていた。
初めて花菱楼へ来た時に、ささめはやり手から酷い目に遭っている。初めての体験が心の傷となって、きっと頑なになったまま蕾はなかなか解れないだろうと、雪華は思いやっていた。辛い思いをした者は、皆解けるのが遅い。
優しく口を吸ってやり時間をかけて身体を解し、後孔が蕩けるのを待つのは、並大抵の相手では務安利傳銷まらない。いっそ、自分が金を出してささめを買い、筆下ろしの相手をしてやろうかと思っていたくらいだった。