前回までの記事をまとめてみると、「けっこう強めに打てて」「そこそこ入る」人はすでにサーブが得意ショットだと自負しているだろうということ。
そして、強めに打てる人はたくさんいるけど、「そこそこ入る」人を探すとぐっと少なくなるということですね。
テニスはラケットを使うスポーツですが、ボールを「うまく飛ばす」ということは手で持った何かを「飛ばす」動作と共通の項目があって、その中からテニスだけが持つ特殊性に理解があると、必要な要素は何かがわかるだろうという理屈です。
サーブが得意な人は、意図的にサービスボックスにボールを収めることができます。プロ選手なら、誰でもそういう意識があると思います。スピードを出そうと思うほど、ネットの存在が邪魔に感じるはずなんですが、なぜできるんでしょうか?
「高さ」と「距離」のコントロールをする必要があって、打者から見てネットの位置が真ん中になっていないのがサーブの時にある制約です。コースもコートの半分ですが、それ以上に高さと距離についてはシビアさが要求されるようになります。サーブを打つのが好きだけど、そんなに入らないという人が持つ悩みがそこなんだと思います。
さてそこで、ラケットとボールがあるせいで持たれる特殊性と、「モノを飛ばす動作」とがうまく混ざり合うために必要な要素はなんだろう、ってことがわかればいいんだと思います。
これは、体のパーツがある程度わかるように描いたフォームの流れです。
どれが何かは、テニスをやる人ならわかりますね?
どの動きが、「サーブが得意な人」のフォームかわかりますか?
左から始まって、右に向かって4コマぶん、流れに沿って描いてあります。いちばん上が、ボールを手で持っての投球動作。下の2段がテニスのサーブです。けっこううまく描けたと思うのですが。。。
差として見てもらいたいところがあります。
左から数えて3コマ目。インパクト付近の腕の形です。
投球動作では、リリースポイント(テニスにすればインパクト)が前になるようにするために、上腕(肩から肘)がぐっと前に出る形ですね。肘を支点に手先が加速されるようになったところでボールが手から離れれば、スピードの乗ったボールが放たれます。スイングが長く、狙ったラインに沿わせるほどコントロールも上がるはずです。
さて、真ん中の段が理想的なサーブ、その下の段が一般プレーヤーの代表的な「惜しい」サーブです。
下段のプレーヤーの方が、投球動作に近い形になりますね。肘が顔の前側に出ようとして、前腕(肘から手首)がやや遅れている状態。ラケットヘッドの位置がトップスピードに乗らないうちにインパクトを迎えることになります。
例えば手首をぐっと固定するとかすると、腕のスピードがそのままラケットに反映されますから、そこそこスピードが出ます。横向きから綺麗に体が回るような、投球動作ができるのなら、スピードが出る実感があると思います。一般プレーヤーなら120キロも出れば、スピードのあるサーブが打てているような感じがすると思います。
腕が加速する中、ラケットヘッドには遅れていく(その場に残ろうとする)力が働いていますが、その流れを手首を固定して強引に持っていくようになりますから、打球感はずっしり重たい感じがすると思います。ラケットが後ろへ流れようとしているのを力で止めて、なおかつボールが乗っかってくるので、重く感じるわけです。
結果、満足感が強い割りには、そんなに早くない。ボールは若干アンダースピン気味になる傾向すらありますから、直線的な飛球線を描き、ネットすれすれを通る&弾むと滑るように速い。
入れば強いサーブですが。。。
例えば調子よくサーブで30-0とか40-0までポイントを取っても、「よしここで…」って思えば思うほど、大事なポイントで狙いすぎて入らなくなってきます。セカンドサーブになると、それまでファーストでポイントを取っていたので、ラリーの展開が頭に入っていなかったりして、割と簡単に挽回されちゃったりします。
サーブが得意じゃない人あるあるですね。
真ん中の段の4コマの流れですが、4コマ目のフォロースルーのラケットの位置だけちょっとミスった気がしますが、この記事では話題にしないことにしますので(笑)。。。
問題の3コマ目を見てみましょう。
大概のプロ選手、特にビッグサーバーとされている人が例に挙げられやすいですが、インパクト付近では上腕は顔の横側、耳より前には出ていないものです。
腕の運動がここで終わると、ラケットに加速力が移動して、ヘッドスピードが出ます。
ラケットの重さはそのままボールに乗る力になりますから、200キロ出せるプロ選手って、そんなにボールを重く感じていないはずです。ラケットの重さと加速がボールに乗る力であって、すでに腕に力を入れていてもいなくても同じような状態でインパクトを迎えていますので、打球感て軽いはずなんです。スパッと打っている感じ。だけど破壊的な音がしてボールが飛んでいきます。
この差を出すコツが、まずは前回書いた、高く上げても同じ距離に届くように投げる練習です。
腕(の振り)をここまでにする、という要素が「距離のための要素」です。
それを、できるだけ高く投げるようにする、が「速度のための要素」です。
ラケットを持つと、いくら上に向かってラケットを使っても、インパクトまでにフェースがネットの方を向くはずですから、ボールは高くならずに速度が上がるはずです。
2段目の「理想のフォーム」で素振りすることはできても、実際にそれで打つのは結構怖いものです。相手コートに半分(かそれ以上)背中を向けている時間になるので、狙って打つ実感がない感じがするからです。それだけにサーブってのは決まったポジション、決まったスタンスから初めて、決まった通りの型で打てるようにすべきショットだということもできます。
決まった型に嵌めるために、打席に入る前のルーティンワークなどで心身ともに整えてから動作に入るなど、プレーヤーによって約束事を繰り返して自信をつけるなど、工夫をしているものです。
ライター:永木康弘 テニス歴31年、46歳。フリーテニスコーチ。
専門学校時代に雑誌編集を学び、雑誌社で編集のアルバイトを経験。
テニスコーチとして勤務を続け、41歳で独立。現在はフリーのスクールコーチとして活躍中。
関東・関西の首都圏で行われているジュニア向けのテニスキャンプや、ワンデイクリニックなどを担当。