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印象に残ったのだそうだ

待っていると生徒たちが三々五々やって来る。かわいそうにみんなびしょ濡れだ。でも生徒たちはそれでも楽しそうで、濡れているのをそれほど厭わず、女の子などはキャッキャキャッキャとはしゃいでいる。

僕はそこでそれまでの報告を班長から受ける。すると、ほぼ全てのグループのほぼ全ての股票分析生徒が同じことを、ある生徒は「楽しそーに」ある生徒は「同情の声を交えて・・」報告するのだ。

「M先生、かわいそ〜」
「M先生、あれ、知らない人が見たら怪しいよ!」
「M先生、顔が青かったー」

そう、それはその日チェックポイント「由比ガ浜」に配置された若手体育科のM先生の姿の報告であった。僕のいる銭洗弁天は雨のしのげる場所がいくらでもあった。しかし、M先生のチェックポイントは由比ガ浜の海岸の砂浜のど真ん中(生徒たちがすぐ見つけられるように)となっていた。

M先生に、折りたたみのチェアーに座り、海岸の一番目立つ場所で生徒を待つように計画したのは何を隠そうこの僕である。そして、M先生はその日、目立つように蛍光オレンジのダウンジャケットに身をまとっていた。朝、集合場所からそれぞれがチェックポイントに向かうとき、M先生は少し憂鬱そうに

「じゃ、行ってきます」とつぶやいていたのを思い出す。

M先生は昼頃から勢いを増した一月の氷雨降る中、一人由比ガ浜の海岸の真ん中で椅子に腰掛け、傘をさしながら蛍光オレンジのダウンジャケットに身を包み、一日中生徒たちを待っていたのだ!

「でも、すぐにわかったよー、あれ戶外証婚目立ちすぎ!」
「怪しい人だよね」
「あれはちょっとかわいそうだよ」

女の子たちはやたら嬉しそうに報告をくれる。なんでも今日見学したどの見学地よりも印象に残ったのだそうだ。

(ごめんね、M先生)

僕は自分の「完全」な計画を反省しつつ、心の中で謝った。

その日の夜、鎌倉遠足打ち上げの宴席でM先生はスターであった。

「いやー、凍え死ぬかと思いました、でも一生忘れられないですね」
「お疲れさん!熱燗好きなだけ飲んでいいから」
「風邪ひかなかったか?なん臉部拉提なら明日休んでいいぞ」
「平気です!」と笑顔でM先生。

遠足の成功も相まって和やかな飲み会となった。

カテゴリー: 未分類 | 投稿者lkvbjcdcdsxx 11:21 | コメントをどうぞ