でも追っかけはスリルがあって面白いから、やめられないよ!生きてるって感じがするし」
(もしかしたら追っかけは非現実的でゲームのような感覚なのかもしれない)
かもめはそう思った。
その事件の後もむくの追っかけは長期に渡って続き、かもめの心配は絶えなかった。むくとの関係は、常に戦々恐々としていた。
からすはそんな二人の様子を毎日見ていたにも関わらず、むくのことを心配をしたり注意したりする様子はなく、「我関せず」といった態度を取り続けた。だからかもめは常に一人で対処するしかなく、ストレスが増していった。
追っかけに限らず、むくは小さい頃から人の気持ちを察したり、相手の立場に立って物事を考えるのが苦手だった。また常識を把握する認知能力に問題があるのか、同年代の子供が自然に学習して身につける常識的なことが殆ど身に着かなかった。
勿論かもめはそういったことを度々教えてきた。しかしむくには、何故そうしなければいけないのか殆ど理解できず、かもめにはどうしようもなかった。
そういった非常識な面が原因で、年齢が上がるにつれ、むくは段々と学校等の集団の中で浮くようになり、度々人とトラブルを巻き起こした。
中一の時の常識外れな『携帯電話事件』、それも恐らく、むくのそういっ性質が災いして引き起こしたのだろうとかもめは思った。
そしてその頃からかもめは、
(むくはただ単に我がままや反抗心からそういうことをするのではなく、脳の中に何か障害があり、それが原因で正常な判断や行動がができないのではないか
?)
かなり強く、そう思うようになった。
むくの「追っかけ」はそれから三年以上続いたのだが、その間には本当に様々
な出来事が起こったのである。