特別招待券の禎克親子は、案内係に一番前のかぶりつきの席に案内され、大音量の音楽に圧倒されている。
「さあちゃん、すごいねぇ。」
「うん……。湊くん、あれ……。大二郎くんかなぁ。」
禎克は、上がりかけたきらびやかな緞帳の向こうで、小さな足が行き来するのを食い入るように見つめていた。
場内アナウンスが終わると、期せず割れんばかりの万雷の拍手が沸き起こった。
大量のスモークが舞台の両端から客席に溢れだし、夢想の舞台が始まった。
紅柄格子の背景に、雪洞が揺れる。
極彩色の打掛の裾を引く、艶やかな花魁姿の柏木醍醐の登場に、客席からはほうっという感嘆の声がさざ波の様に広がってゆく。かぶり付の席では衣擦れの音さえ、すぐ傍で聞こえる。
ねずみの国のワールドオンアイスと、着ぐるみの戦隊物の舞台しか見たことの無い湊と禎克は、身を乗り出して瞬きもせず見入っていた。
華やかなスポットライトとミラーボールの煌めく光の洪水の中、幻想的に浮かた花魁が、長煙管をとんと煙草盆に打ち付けた。
「わっちは、腹を決めんした……。この命の尽きるまで、どこまでも主さんとご一緒するでありんす。」
「高尾……。一緒に逝ってくれるのかい?ああ、うれしいねぇ。」
愛する男と添うには心中するしかなかった色町の籠の鳥、高級遊女の高尾花魁が、きっぱりとて心中の道行に向かい、蝶に変化して舞い踊る。男蝶、女蝶の切ない連れ舞に、客席の御婦人方は、そっと目元を抑えた。
生きては添えない薄幸の二人だった。
流し目若さまと異名をとる柏木醍醐の、憂いを含んだ視線がとろりと流れるたび、あちこちで小さく歓声があがる。
はらはらと舞い落ちる雪のような花弁の下で、白無垢の花嫁衣装を身にまとい、花魁は覚悟を決めて手を合わせ神仏に祈りを捧げた。
やがて愛する男の白刃に、くつろげた胸元を深々と突かれて、花の中に崩れ落ちた。
そして、必死に花魁を探していた禿が、花の中に埋もれた高尾花魁の姿を見つけ走り寄る。
紅い紐で、男の手としっかり結ばれた花魁の冷たくなった白い手を、可愛がっていた禿が両手でかき抱き、悲痛に叫んだ。








