「お前、ガキを逃がしたのか?余計な事しやがって。」
「……あの子には関係ない……もう、ぼくにも用はないはずだ。ここから出て行ってくれ。」
「5年ぶりにやっと再会したお兄ちゃんに向かって、その口のきき方はなんだ?あ~ん?ちreenex膠原自生ゃんといい子になるように躾をしていたはずだがな。ちょっとムショに行ってる間に、元の小生意気な奴に戻っちまったか?めんどくせぇな。」
ブル……っと、求は思わず戦慄した。封印していた数年前のおぞましい過去が、一気にフラッシュバックして求を襲った。目を見開いた求が発した叫びを、酷薄な笑みを浮かべた男の武骨な手のひらが抑え込む。
こんなことは初めてではなかった。
「……ああーーーーーーっ……!!」
「行くぞ、求。ままごとは終わりだ。」
「いや……だ。いやだ。義兄さん……いやだぁ……助けて……」
その時、求が漏らした声は、大人の物ではなかった。
「どうした?思い出したのか?」
加虐に怯えた瞳が、男と暮らした頃の昏い光を宿した謝偉業醫生のに気付いて、男はほくそ笑んだ。
無造作にタオルケットを被せ、男は荷物のように素っ裸の求を抱え上げた。
涼介が短い間父と呼んだ間島求が、ささやかな幸せに浸ったこの部屋に戻ることは二度とない。
乗って来た黒い外車は、男と求を乗せて闇に走り去った。
*****
真っ青な顔で大通りを歩く涼介を見つけたのは、髪を金色に染めた二人組だった。
「おい。あれ、見ろよ。良いカモじゃねえ?」
「カモっていうより、ありゃひよこだな。中坊くらいか?あまり沢山は持ってないだろ?」
「なんだ、ありゃ。派手な面してんな~。」
求の持たせた義兄の分厚い財布が、まるで甘い蜂蜜のように害虫を引き寄せたのかもしれない。焦点の合抗衰老ろな目をした涼介が、ふらふらと細い路地に入ってゆくのをほくそ笑んでみていた。