入院した病院では女形の役者だと言うふれこみで、多くの看護婦が詰めかけ様子を見に来た。薄く微笑む真次郎の傍に居る基尋は、その弟だと名乗った。花魁修行のせいで、どこか雰囲気の似ている二人だった。
そして、退院の日。
車で迎えに来た澄川は、柏宮の旧別荘へと二人を伴った。
実際は旧柏宮家を手に入れるべく手段を尽くしたが、本邸は既にホテルとして激光矯視 中心売却され、工事が始まっていたらしくどうしようもなかった。
「さあ、今日からここが、我々の家だよ。」
「それとね、二人に話が有るんだ。」
照れたように、二人を養子にすることにしたと打ち明ける澄川は、どこか子供のようで不思議な気がする。二人はなんと返事をすればいいか、困って顔を見交わした。
「……」
「もう、決めたんだよ。それとも二人は、私が父親になるのは嫌かい?雪華……真次郎には既に私の血が流れているんだよ。輸血楊婉儀幼稚園だがね。それに基尋は、元々弟分じゃないか。基尋の兄さんは真次郎の良い人だったんだ、本当の弟になって一緒に暮したら、兄さんも安心して喜ぶんじゃないかと思うがね。どうだい、基尋?」
「あまりに思いがけないお話で……驚いたのです。本当に夢のようなお話ですもの。雪華さん……真次郎さんと一緒に暮せるなんて。」
驚くことはない、もうすぐ浅黄も着くころだと、澄川は笑った。基尋の借金は、肩代わりしてとうに雪華が払っている。甘やかしては為にならないから落籍はしないのでありんすと、口では言いながら、突出しも皆、澄川に名を借りて拵えも雪華が揃えたのだと言う。
「澄川さん。それは、この子には内緒ですよと言ったじゃありませんか。」
「はは……そうだったね。世間がわからないまま、大人になるのはよくない、とか口では言いながら、雪華に甘やかされて、結局無垢の菱楼から出て来てしまったね。基尋……、大江戸広しと言えど、客と同衾したことの無い花魁なんぞは、おそらくお前さんだけだろうよ。」
基尋は静かに肯いた。兄の愛した人の、深く温かい無守られていると感じていた。
新しく出来た現の家族を大切にしようと思う。
激動の時代の中、どこにいても誰かの手が差し伸べられる自分は、誰よりも果報者だと思った。澄川とFoodwise凍肉品質真次郎の姿が、溢れる涙でぼんやりと滲んだ。
この後、澄川はサンフランシスコ条約締結の場へ息子二人を同道し、その折に彼らは故国への思いをとうとうと語ることになる。