泣きながら

二人が肩を並べて話しながら歩いていると、いきなり坂崎のグループに囲まれた。文太は思った。「案の定だ」坂崎は子分たちと言っていいだろう仲間に命じて、二人を人通りのない路地に引き入れた。
「金は持ってきたか?」
坂崎が悠斗の胸倉を捉まえて言った。
「俺の貯金は全部下ろしちゃってもう無いのだ。許してくれ」
「それなら、親の金をくすねて来い」
「出来ないよ」
悠斗は、ベソをかいている。
「やめろ!親の金といえnuskin 如新ども盗めば犯罪じゃないか」
文太は悠斗と坂崎の間に割って入った。
「悠斗を放せ!」
大声をだして文太は虚勢を張った。
「おっ、このチビ生意気だな」
組員らしい男が言った。文太もここ一年で急激に背が伸びたが、まだ坂崎たちには及ばなかった。
「ここは俺たちで片を付けます、賢さんは見ていてください」
坂崎は捉まえていた悠斗を放すと、いきなり文太に殴りかかってきた。文太は顔面にパンチを受け鼻血を出したが、怯まず坂崎を睨みつけながら悠ろと顎で合図をした。文太はこの後、殴られ、投げ飛ばされ、足蹴にされたが、抵抗せずに耐えていた。
「賢さん、あなたはどこの組の人ですか?」
倒れたままの文太が、賢と呼ばれた男に問いかけたが、男は答えなかった。
「この近くの組なら、松本組でしょう」
文太が言って男を睨みつけると、男はほんの少しばかり動揺している様子だった。

「ボクの名前教えてくれる?」
それを皮きりに、書類の作成が始まった。
「高倉文太、6才です」
「お父さんの名前は言えるかな?」
「居ません。お母さんも居ません。ボク捨て子です」
文太は「わかりません」ではなく、はっきりと「居ません」と躊躇せずに言った。
「お家はどこ?」
「朱鷺の里愛育園です」
「児童養護施設だね」

警察官は「もしや?」と、6年前の「赤ん坊遺棄事件」を思い浮かべた。場所はこの如新集團地からさほど遠くないJR駅のトイレに遺棄された、生まれて間もない男の赤ん坊が見つかったのだ。赤ん坊は未熟児で、すでに鳴き声も上げられない程衰弱していたが、直ちに大学病院に搬送され、奇跡的に命が救われた。
数ヵ月後、彼は乳児院に移され、そして児童養護施設で小学校の入学を迎えた。

文太に用意されたランドセルは、もう何代目なのだろうか、所々が擦り切れた黒くて大きなものだった。それでも文太は大喜びで、入学式の前日まで背負う練習をして、昨夜は枕元へ置いて遅くまで眠らずに、蒲団から顔を出して眺めていた。

翌朝、施設の職員に連れられて文太は喜び勇んで学校へ向かったが、施設にもう一人新小学一年生が居た。泣き虫の女の子梨奈(りな)である。梨奈は学校へ行きたくないとグズっていたが、文太と職員に手を引かれて、ベソをかきながらの登校であった。

「梨奈、お兄ちゃんが付いて居るからな」
妹に言うように偉そうに励ましていたが、実は文太の方が半年ほど年下である。

少しずつ学校に慣れてきたようで、1ヶ月は機嫌よく学校に通っていた梨奈が、突然「学校に行きたくない」と、再びぐずるようになってしまった。
文太が訳をきいてやると、どうやら虐めに遭っているようすだった。「施設の子は汚い」と雑巾で顔を拭かれたり、「親なしっ子」と蔑まれたり、「ゴミ」と称して梨奈の持ち物を屑入れに捨てられたりしたそうである。
文太は虐めっこのリーダーの名を訊き出し、談判に行ったが、それが基で文太自身も虐めを受ける羽目になった。

リーダーの名は木藤明菜、明菜は兄である五年生の拓真と、その悪仲間に告げ口をした為、文太は彼らに学校の倉庫に連れ込まれ「生意気だ」と、取り囲まれた。
殴るの、蹴るのとボコボコにされた挙句、文太は倉庫の中へ置き去りにされた。それを震えながら見ていたnu skin 如新梨奈が担任の教師に告げたが、「倉庫は鍵が掛かっているから、そんな訳がない」と、取り合わなかった。教師はあまりにも執こく梨奈が訴えるので仕方なく倉庫へ行ってみること、鍵は何時からか壊されたままになっている。扉を開けてみると、文太が鼻血を流して倒れていた。


カテゴリー: 未分類 | 投稿者qanbinjj 17:04 | コメントをどうぞ

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