日別アーカイブ: 2020年12月11日

あの女の方は、間違いなく甲斐にまだ未練がある

あの女の方は、間違いなく甲斐にまだ未練がある。でも、甲斐の気持ちが依織からあの元カノに動くことがあるのだろうか。「え、甲斐くん元カノとヨリ戻しそうなの?」「俺の勘では、そうだと思うんだよな。桜崎はどう思う?」甲斐がもしも元カノとヨリを戻したら……依織はきっと大きなショックを受けるだろう。「……さぁ、どうだろ。元カノの方は、甲斐とヨリを戻したくて必死だろうけど」三人で延々とそんな話をしていると、突然スマホのバイブ音が響いた。三人で一斉に自分のスマホを確認したけれど、鳴っているのは誰のものでもなさそうだった。湊b課程 ホ鳴ってんの?」「あぁ、甲斐のだ」見ると甲斐のスマホが床の上に置きっぱなしになっている。なかなか鳴り止まない着信に対してしつこいと思いながら画面を覗き込むと、画面には『高橋真白』と名前が表示されていた。「うわ!噂をすれば、これ元カノの名前じゃね?」「あ、鳴り止んだ」画面には、不在着信一件が表示されている。あの女、まさか甲斐が同期と温泉に来ていることを知っていてわざわざ電話してきたのだろうか。だとしたら、結構面倒くさいタイプかもしれない。「俺、ちょっと甲斐呼んでくるわ」「わざわざ呼びに行かなくても……」「だってもし大事な電話だったら、甲斐が困るだろ」そう言って青柳は、甲斐のスマホを手に取り部屋を出て行ってしまった。「あーあ、二人の邪魔しに行っちゃった。甲斐くんと依織さん、今頃イチャイチャしてたりして」「それはないでしょ。依織の体調が悪いときに、甲斐は手出せないだろうし」「確かに甲斐くん、そういうところ真面目そうですもんね。でも蘭さんも、二人の恋がうまくいけばいいって思ってますよね?」「……」思っていると、素直に即答出来ない自分が苦しい。私は美加ちゃんのように、純粋に二人の恋を応援することは出来ない。「……私は、依織が幸せになるなら、それでいいかな」依織が誰を好きになってもいい。ただ、幸せそうに笑っていてくれるなら、私はそれだけで嬉しくなる。「蘭さんと依織さんの友情って、本当に羨ましいです」「え……」「ちゃんとお互い想い合ってるのが伝わってくるので、いいなぁって」すると、美加ちゃんとの話の最中に青柳が一人で部屋に戻ってきた。「甲斐は?」「廊下で電話中」戻ってきた青柳と入れ替わりで、私は部屋の扉を少しだけ開けた。すると開いた扉の隙間から、甲斐の話し声が微かに聞こえてきた。「あぁ、楽しんでるよ。うん、うん。そう、今皆で部屋で飲んでた」元カノと電話で話しているときの甲斐の口調は、私と話すときのものと何も変わらない。時折笑顔を浮かべながら相槌を打ち、そう長くは話さずに電話を切った。

私は扉の隙間から覗いていたことがバレる前に、室内に戻った。部屋に戻ってきた甲斐に、青柳と美加ちゃんが元カノのことを聞き出そうとしたけれど、甲斐はあまり話したくないのか軽くあしらい、その後は何か考え事をしているのかずっとぼんやりとしていた。「ねぇ、甲斐。依織の様子、どうだった?体調だいぶ悪そう?」「え?あぁ……そうだな。ゆっくり寝かせてあげた方がいいと思う。熱出てたし」「……依織の不調に、よく気付いたね。私はすぐに気付いてあげられなかった」「俺も、たまたま気付いただけだよ」そう言い残し、甲斐は「風呂に入って頭冷やしてくる」と言いタオルを手に持ち部屋を出て行った。頭を冷やすって……依織と何かあったのだろうか。それとも、元カノ?私は、気になったことはそのままにしておけない性分だ。結局その日の内に甲斐から話を聞くことは出来なかったため、翌日じっくり話を聞くことにした。

カテゴリー: 未分類 | 投稿者laurie6479 11:10 | コメントをどうぞ