来いと言ってて身

もしかすると、この場所を父に見つけられたのかもしれない。
そこに父が居たらどうしようと思った。

琉生は義父が怖かった。別段、父が大男だと言う訳でもない。むしろ神経質で痩せぎすなくらいだった。背などはもう卓悅琉生の方が高いくらいだったし、抗えば若い琉生の方に分があるかもしれない。
それでも近くによると、血走った目に射すくめられるような気がして、言葉が出なくなる。母が亡くなって以来、琉生は自分を凝視する父が苦手だった。

母を失ってから父の言動はおかしくなった。
少しずつ精神の均衡を崩し、面差しの似た琉生といない母を混同し始めた。
確かに琉生は母に似ていたが、そこまでそっくりと言うわけではない。
妻の死を受け止められない父の粘った重い視線と執着は、琉生にはどうしようもなく、二人きりになるのが恐怖だった。

血の繋がりの無い家族の中で、疎外感を感じながら琉生はいたたまれない思いで、毎日ひっそりと父と顔を合わさないようにして過ごした。
二人の兄は優しかったが、琉生はだからこそ父の尊厳を壊してしまうようで、余計に相談できなかった。
思い詰めた琉生は、父から逃げるために高校を卒業と同時に、全てを捨体一つで家を出た。

毛布の下にいたのは、琉生が二度と会いたくない義父だった。
しかも横たわった義父は、既に土気色でこと切れていた。
驚いたように見開かれた瞳が、視線を交わすことなく空を見つめている。

「お……お父さん、なんで……あっ!?」

後頭部を、思いきり鈍器のようなもので殴りつけられ、琉生はそ卓悅Biodermaの場に昏倒した。
誰が父を手に掛けたのだろう。
意識を手放した琉生に、誰かが「琉生」と声を掛けた気がするが、その声はもう琉生には届かなかった。
倒れ込んだ琉生の唇に、声の主はそっと長い指で触れた。

「護ってあげられなくて、ごめんね、琉生。……もう、辛いことはお終いだよ。みんな終わらせてあげる。」

「てめえっ!琉生っ!いるならさっさと出て来い。何分待たせるんだ。」
「ごめん、ちょっと頭痛くて……」
「で、親父は?」
「……お父さんが、どうしたの?つか、何でここがわかったの……?」
「親父から、動けないからからここへ迎えに来いって、メールが有ったんだよ。何かあったら言って卓悅假貨てあったのに、一体どうしてたんだ。」

次兄の隼人は琉生を押しやり、部屋に上がり込んだ。

「親父いるんだろ?」
「お父さんは……あっ!」

琉生はその言葉にやっと思いだし、慌てて隼人の後を追う。


カテゴリー: 未分類 | 投稿者passioncool 13:27 | コメントをどうぞ

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