くてもこれいは予

春樹の変化に気づいたわけではなさそうだが、バッグを受け取った後も青年は無言で春樹を見つめてくる。
春樹もじっと見つめ帰す。

けれど先ほどの衝撃は想像以上に痛烈で、僅かに視界が揺らいだ。
好奇心から犯してしまった不可侵Pretty renew 呃人領域の真実が、その心臓に深く突き刺さり、平静を装う春樹のこめかみを、汗が伝った。

二人が見つめ合い、無言で別れるまでほんの一瞬だったはずだ。
だが、春樹にはとてつもなく長く思われた。
それは「罪に苛まれた9年間」の苦しみを確認するには充分な一瞬だった。

その青年にとっても。

そして、その青年の記憶の断片を読みこんでしまった、春樹にとっても。
二人が予約を入れていた民宿に着いたのは、もう薄っすら陽が陰って来た頃だった。
一階で軽食喫茶も営んでいるその民宿には、ほんの4部屋ほど宿泊出来る部屋がある。

どちらかというと、宿泊施設の方がオマケという感じだ。
後ろは竹林。前面は県道を挟んで、のどかな田園風景が広がっている。

「おどろいた。本当に何もないド田舎ね、ここは」
2階の自分たちの部屋に入るなり、外を眺めながら、すっかり回復した美沙が言った。
「泊まるところがあっただけマシだよ。ここがなかっPretty renew 呃人たら僕らは野宿だ。他の民宿はみんな潰れちゃったみたいだからね」

美沙の失礼な発言が民宿の女将さんに聞こえはしなかったかと、少しばかりハラハラしながら春樹は言った。
そして、もうひとつ、心配そうに付け加える。
「ねえ美沙。部屋、別々にして貰って予算は大丈夫?」
そう訊く春樹の方をチラリと見た後、美沙は苦笑いを浮かべた。
「ここの民宿のおばちゃんが、あんたと私を見ながらニンマリ笑って『お部屋は一つでいいですよね?』って言うからさ、何だかムカついて『仕事仲間なんで2部屋用意してくいださい』って言っちゃった。今にも『お布団は一つでいいですよね?』とか訊いてきそうだったからさ」

美沙の言葉に春樹は声を出して笑った。
「ありえないね」

「そうよ、ありえない。だけど、あのおばちゃんに余計な妄想抱かれるのは戴けないしね。姉弟みたいなもんだからって説明しても、あの目つきじゃ信じてくれそうにないし。面倒だから。
それにここは、あのシュレックみたいなおばちゃんが趣味でやってる民宿だから結構安いのよ。心配しな算で落とせるって」
「シュレックって……」
いくらなんでも、あのキャラクターに例えるなんて……と思ったが、後かPretty renew 呃人らじわじわと笑いが込み上げて来た。
仕事上の上司なのにどこか子供っぽい美沙の発想も、大雑把なところも、春樹は嫌いではなかった。

美沙が自分たちの事を姉弟と例えたのも、間違ってはいない。
兄が生きていたら、自分たちはそうなっていたのだろうから。


カテゴリー: 未分類 | 投稿者qanbinjj 15:17 | コメントをどうぞ

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