ある日、訊ねてみると、
「ああ、ほら、テストで正解するってことは、その分野を一応は理解しているってことだろ?」
「うん」
「逆に間違うってことは、分かっていないってこと。だから、テストのたびに間違った問題中國旅行をノートに書き写して、正しい答えとそれに関連して調べたことなんかをメモしておけば、僕専用の弱点克服参考書ができるじゃない。そのために書き写すんだ」
だそうな。
「このノートを見直すだけで、僕の苦手分野がどこかすぐに分かるし、それならどこを重点的に勉強すればいいか簡単に判断できるでしょ? 時間の節約にもなるし」
「な、なるほど・・・・・・」
それなりに合理的な理由があったのか。
そういえば、普段から大して勉強をしている風でもないのに、真面目に勉強している私よりも成績はいいみたいだ。しかも、恋人までいる。私には、全然、男っけすらないというのに。
これは・・・・・・ むむむ・・・・・・
なんて、思っていたのだけど、いつの間にか、加藤君と浅野さん、別れてしまっていた。結構お似合いだったのに。
そして、どうしてなのか、私ですら分からないうちに、この春には加藤君には新しい彼女ができていた。
って、まあ、その新しい彼女というのは私のことなんだけど。
う~ん・・・・・・ 加藤君って、雰囲気が地味だけど、意外と女あしらいが上手? 遊び慣れてる?
的確に私が求めていることを察してあれこれ気を使ってくれて、最初のうちは感激してたの認股權證だけど、こう毎回じゃねぇ
正直、疑いの目で見てしまうわけで。
「はい、これプレゼント」
「わあ。綺麗。どこに飾ろうかな」
ゴールデンウィーク中のデートの帰り道、私を送って行ってくれる途中、一度家に立ち寄った加藤君がクッキーを添えて、大きな花束をプレゼントしてくれたのだ。
「ねぇ、なんで私が花が好きって分かったの?」
「ほら、女の子って、花とか好きでしょ? だから喜んでくれるんじゃないかなって思って」
「ありがとう」
「どういたしまして」
そうして、二人して私の部屋で過ごした。あ、もちろん、とても健全にだけどね。
で、あっという間に楽しい時間が過ぎてずい分遅くなってきたので、加藤君は帰っていった。だけど、加藤君、私の部屋に一つ忘れ物を残していて。
例の間違った問題書き写しノート。すでに私にとって見慣れたもの。そう見慣れたもの舒緩精油のはずなんだけど、ただ・・・・・・
他のノートには『英語』だとか『数学』だとか表紙に教科名が入っているのに、この忘れ物のノートには『浅野さん』って。
・・・・・・
中を見るべきか、見ない方がいいのか、どっちなんだろう? 怖い、わからない。