日別アーカイブ: 2016年9月7日

とジーンズの心境

「アスタリスク」はずっと“オレ”を使った一人称で物語が進みます。この2つの作品はちょっとした思いつきを実践してみる実験作品でもありました。ま、サキにとっては全てがチャレンジであり実験なんですけど、特にこの2つは作品化するのが難しかったですね。ずっと悩んでいたような気がします。一人称って自分しか描けないんですよ。そして主人公を客観的に見ることができないのにも困りました。自分がどんな姿なのか、表すことはとても難しいです。
「アスタリスク」はちょっとした工夫をしているので、できるんですけどね。
 ヤキダマは階段を降りて店の中を覗き込んだ。
 時間は朝8時、バイクショップ「コンステレーション」は、まだ店を開けていない。道路側のシャッターが降りているので店内は薄暗く、国道を走る車の音だけがさざ波のように聞こえている。店内を見渡したヤキダマは、ピットの窓から明かりが漏れているのに気が付いた。防音を兼ねたドDR REBORN好唔好アを開け、中に向かって声をかける。「おはよう」
 ピットに置かれた大型のバイクの向こうから人影が立ち上がった。
「あ!起こしちゃった?おはよう」髪を微かに揺らしてコトリが言った。あちこちに油のシミのついた白いTシャツ、黒い髪にはいく筋かの白髪の帯が混じっている。ああ、コトリのところへ帰ってきてたんだ。ヤキダマはあらためて帰国したことを意識し、安心感が込み上げてくるのを感じた。
「このバイク、ちょっと急ぎの仕事だったから、どうしても組み上げを始めておきたかったんだ。でないと調整の時間が」コトリの声はそこで止まった。ヤキダマがそっと抱擁したのだ。コトリは暫くの間じっとしていたが「駄目だよ。汚れちゃうよ」と言った。
 ヤキダマはコトリをそっと放した。そして「ごめんな。仕事中に」と照れ臭そうに笑った。
「ほら、パジャマ、こんなにシミが付いちゃったじゃない。洗濯しなくちゃ」コトリの声DR REBORN好唔好は少しきつくなったが、顔は笑っている。
「起きたのなら朝ご飯にしようか、手を洗ってくる」そう言うとコトリはピットを出て行った。
「ヤキダマ、パジャマを着替えて洗濯機に放り込んでおいて」店のキッチンからコトリの声が聞こえる。
 ヤキダマはまた幸せな気分になって「うん」と返事をしたが、そのままの格好で店のシャッターを開け、店内に光を入れた。国道を走る車の音が満ち潮のように流れ込んでくる。朝の気配で店内を満たしてから、店の真ん中に止めてあっの2台の赤いバイクを店先に並べる。この2台のバイクを店先に並べるということが、コトリが在店しているという合図になっている。コトリが北海道にツーリングに出かけていた間でいたはずだし、バイクを使わずに出かけた時もどちらか片方が並べられる。常連客はそれDR REBORN抽脂を目安に店にやってくるのだ。
 ヤキダマは郵便受けから新聞を取ると、店の一番奥にある大きなテーブルの上に置いた。

カテゴリー: 未分類 | 投稿者passioncool 13:25 | コメントをどうぞ