テニスのメジャー第2戦、全仏オープン(5月27日開幕=パリ・ローランギャロス)が近づいてきた。春先から快進撃をみせる大坂なおみ(20)、復調著しい錦織圭(28)に優勝の可能性はあるのか。
女子で前評判が高いのは、シモナ・ハレプ(ルーマニア)と産休明けのセリーナ・ウィリアムズ(米国)。
欧米のブックメーカーは大坂の優勝確率を約20倍としている。これは全体で10位以内の評価で決して低くないが、全仏は球足の遅いクレーコートで、打っても打っても返ってくるボールに根負けすることが多い大坂は、いきなり優勝候補の本命とはならない。
大坂は3月のBNPパリバオープン(米カリフォルニア州)で元世界ランク1位のマリア・シャラポワ(ロシア)、ハレプら強豪を連破しツアー初優勝。さらに同月のマイアミ・オープン1回戦でもセリーナにストレート勝ちし一躍脚光を浴びたが、この2大会はいずれも球足の速いハードコートだった。
ただ、大坂の成長ぶりは目覚ましく、コーチのサーシャ・バジン氏(33)の影響力を指摘する声が多い。
2、3年前まで「練習嫌い」「動きが遅い」「メンタルが弱い」といわれていた大坂が1月の全豪オープン以降、明らかな変貌を遂げた。ボールに入る動きが素早く、バックハンドが強烈になり、強敵にも堂々と渡り合えるようになった。
バジン氏は大坂が子供の頃から憧れたセリーナの「ヒッティング・パートナー」を8年間務めた人物。年330日セリーナと生活をともにし、翌日のセリーナの相手の特徴に合わせて打ち方を変えた。
このあとアザレンカ(ベラルーシ)、ウォズニアッキ(デンマーク)の練習相手も歴任。この2人からも厚い信頼を得た。
大坂は昨秋、このバジン氏をコーチに招き「練習が楽しくなった。とてもポジティブで楽しい方なので、自分にいい影響を与えている」。
バジン氏も「(大坂は)コート上ですごく大人になった。調子が最高でなくても、勝つことができる選手になった」と評価する。
まだ20歳。クレーと芝のコートを数多く経験して世界ランクを上げ、得意のハードコートで行われる8月開幕の全米オープンで4大大会初優勝-というのが実現性のあるシナリオといえそうだ。
一方、右手首の故障に悩まされていた錦織は、1月にツアーに復帰し、4月のマスターズ・モンテカルロ大会で準優勝し復活ののろしを上げた。こちらは全仏と同じクレーコートだった。
しかし、同大会決勝では“クレーの王”ラファエル・ナダル(スペイン)に完敗。中2日で臨んだバルセロナ・オープン初戦は疲労から途中棄権した。
全仏を制するには、ナダルが高い壁となって立ちふさがる上、コンディションをいかに整えるかが課題になりそうだ。