私立大学はAOと推薦が半数

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 いま大学入試が大きく変わろうとしている。志望理由書や面接などで合否を決める「AO入試」や「自己推薦入試」が増えているのだ。ペーパー試験が苦手でも、難関私大や国立大に合格できる“大逆転”も夢じゃない。


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いまや私大では、一般入試の入学者は全体の半分近くしかいない。推薦入試とAO入試を合わせた割合は51.2%で、一般入試を上回る。

 推薦入試には、学校ごとに枠を割り振る指定校制や付属高校の内部進学がある。ほかにも自分の能力や実績などをアピールする自己推薦があり、AO入試とともに難関私大でも広がっているのだ。

 早稲田大では政治経済や社会科学など多くの学部で導入している。さらに社会科学は、英語が得意なら試験科目が小論文だけでいい「グローバル入試」も今年から募集を始める。早稲田大はいまは一般入試の入学者が6割。AO・推薦入試などは4割だが、将来は6割まで引き上げる方針だ。

 慶應義塾や明治、立教、青山学院などほかの私大でも、こうした入試の入学者は多い。

 国立大ではAO・推薦入試の割合は15.5%にとどまるが、東大や京大をはじめ導入するところが増えている。国立大学協会では、AO・推薦入試の定員を2021年度までに30%に引き上げる目標だ。

 導入が進む背景には、社会で必要とされる人物像が変わってきていることがある。与えられた課題を短時間で処理できる人よりも、問題を発見し、解決に向けて仲間と協調していける人のニーズが大きい。記憶力重視のペーパー試験から脱却し、コミュニケーション能力など様々な観点から評価しようとしている。

 大学側にとっても、受験生をいち早く囲い込めるメリットがある。AO・自己推薦入試は、8月から出願を受け付ける私大もある。志望理由書などで1次審査をし、面接や小論文などの2次審査を経て、11~12月には合格発表するところが多い。

 受験生にとっても選択肢が増える。私大の一般入試は定員の厳格化で競争が厳しい。AO・自己推薦入試をうまく利用すれば、合格のチャンスも高まる。

「何かに一生懸命取り組んできたのであれば、積極的に活用を検討すべきです」

 AO・自己推薦入試の指導に力を入れる早稲田塾の斎藤嘉邦第一事業部長はこう促す。数学オリンピックでの入賞といった特別な実績がなくても、チャンスは大きいという。

「例えば、スタッフや講師との対話を通じて、牡蠣に関心を持った生徒がいました。自分で研究し、養殖工場にも職業体験に行って、オイスターマイスターという資格もとった。最終的にAO入試で慶應の環境情報学部に進みました。誰の中にも眠っているエネルギーを爆発させたい。それに賭けようというのがAO・自己推薦入試です」

 入試で重視されるのは自分で書く志望理由書だ。大学ごとに「どのような学生を求めるか」をまとめたアドミッションポリシーがある。それに合うように、自分の能力や実績を書き込む。高校時代に取り組んできたことと、入学後に深めていきたいことを結びつけ、「学ぶ意欲」をアピールすればいい。

 面接では受け答えを通じて、コミュニケーション能力もチェックされる。小論文では社会問題などについての理解が問われることもある。

 慶應義塾大総合政策学部2年生の渡辺大起さんはAO入試で入学した。志望理由書や面接では、高校の水泳部で副キャプテンとしてチームをまとめたことや留学経験を説明した。実家が葛餅屋なので、「葛餅を世界に広める」という将来の目標も語ったという。

「水泳部での活動と受験を両立するためにはAO入試が自分に合っていると思いました。留学したことで、和食は人気があるのに和菓子は知られていないことに気が付きました。葛餅を世界に広めるために、経営やマーケティングなどを学びたいとアピールしました」

 AO・自己推薦入試に絞る受験生もいる。

 早稲田大文化構想学部国際日本文化論プログラムに今年入学した市川優佳さんは、高校2年の夏から1年間米国に留学した。そのときから、AO・自己推薦入試を意識していたという。

「留学で日本と米国の文化の違いに関心を持ちました。日本文化を伝えるイベントを開き、地元のテレビ局に掛け合って取材もしてもらいました。面接では、日本文化の発信に興味があることを伝えました」

 早稲田大の入試は、志望理由書や面接で英語を使う必要があり、決して簡単ではない。市川さんは「自分がやってきたことを物語にしているようで、楽しかった」と振り返る。

 早稲田塾の斎藤さんは「学ぶ動機づけができれば必然的に学力も上がる」と指摘する。大学側の調査では、AO・自己推薦入試での入学者は、意欲的に学ぶため一般入試の入学者よりも成績がいい傾向があるという。


カテゴリー: 15-0 NEWS, こどもテニス | 投稿者オールサム | コメントは受け付けていません。