今年もついに開幕した「全仏オープン」(フランス・パリ/5月27日~6月10日/クレーコート)。その優勝候補筆頭は、もちろん2005年に初優勝後、2010年から2014年までの5連覇を含み、なんと10回も優勝している「クレーキング」のラファエル・ナダル(スペイン)だろう。昨年の「全仏オープン」でも、失セット0で優勝し他を圧倒した。
今年のクレーコートシーズンも今大会前までで、19勝1敗と絶好調の成績を収めている。今年の「全仏オープン」の注目は、ナダルがV11を達成するのか、もしくは誰が阻むかという点だろう。
今回はナダルの優勝を阻む可能性があると思われる3選手を紹介する。
■ドミニク・ティーム(オーストリア)
ナダルを打ち破る筆頭候補はこのティームだろう。今年の「男子テニスATPワールドツアー マスターズ1000 マドリード」準々決勝では、ナダルから7-5、6-3のストレート勝利をもぎ取った。これはナダルにとって今年のクレーコートシーズンでの唯一の黒星となったほか、昨年から継続していたクレーコート50セット連続取得記録を止められた試合だった。
さらには昨年もティームはクレーコートでナダルから唯一勝利をあげており、3年連続で勝利を収めている。
ナダルとの過去の対戦成績は3勝6敗で、いずれもクレーコートでの対戦。クレーコートでナダルから3勝以上あげたのは3人しかおらず、現役では7勝のノバク・ジョコビッチ(セルビア)と3勝のティームだけだ。ジョコビッチが怪我からの完全復活を目指している途中であることを考えると、やはりナダルを止める可能性が最も高いと思われるのはティームだろう。
■アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)
21歳にしてマスターズ1000のタイトルを3回獲得し、世界ランキング3位となっているズベレフも可能性のある一人だろう。「全仏オープン」前までで、今シーズン30勝8敗と30勝に一番乗りし、クレーコートシーズンでも17勝3敗と絶好調。「BMWオープン」と「男子テニスATPワールドツアー マスターズ1000 マドリード」のタイトルも獲得している。
ナダルとの過去の対戦成績は0勝5敗、クレーコートでは0勝3敗と勝利したことはないものの、「全仏オープン」前哨戦である「男子テニスATPワールドツアー マスターズ1000 ローマ」の決勝でナダル攻略の糸口をつかむ。第1セットでは1-6と圧倒されるものの、第2セットでは2ブレークに成功し、逆に6-1で取りイーブンにする。第3セットでも3-2の1ブレークアップのリードとしたが、雨による約50分の中断の後ナダルが息を吹き返し、惜しくも3-6で敗れた。
それでも「クレーコートのマスターズの決勝で、もう少しでラファに勝てるところまで行ったんだから、自信にしてパリへ行けると思う」とナダルにもう一歩と迫ったことの手ごたえを語っていた。
■錦織圭(日本/日清食品)
日本のエースである錦織もナダルを破る可能性のある一人だろう。怪我からの復活を目指すシーズンではあるが、自身にとってクレーコート開幕戦となった「 男子テニスATPワールドツアー マスターズ1000 モンテカルロ」では先のズベレフやマリン・チリッチ(クロアチア)などを破り、決勝に進出。決勝ではナダルに3-6、2-6で敗れたものの、決勝までにナダルの約2倍もの試合時間をこなしていたことも考えると、善戦。復活の狼煙を印象付けた。
「全仏オープン」前には、松岡修造さんも「お世辞でも何でもなく、(勝つ)可能性がある」と話し、錦織が勝つためには「全仏までに体力面、精神面をしっかりあげてくるという限定的なものです。加えてフォアハンドの出来です。まだ(手首を)故障してから自分のものになっていないです。この前のモンテカルロは、決勝までいったものの、僕が見ていて決していい内容ではなかったと思います。良かった点は、どちらかというとループ系のボール。フォアは攻撃していなかったので、ミスは少なかったです。攻撃していたのは、バックハンド。ただ、圭本来の一番の良さであるフォアでの攻撃がなかったので相手が恐怖心を持つほど攻め込むことができていなかったので、フォアが入ってくれば、(ナダルに勝つ)可能性は十分あると思います」とその条件を語っていた。
ナダルとの過去の対戦成績は2勝10敗、クレーコートでは0勝4敗となっているが、2014年の「男子テニスATPワールドツアー マスターズ1000 マドリード」決勝では、優勝まであと僅かに迫ったこともあり、「クレーキング」を打ち破る日が来ることが期待される。
■終わりに
今年の「全仏オープン」のトーナメント表では、ティーム、ズベレフ、錦織はナダルと反対の山になっており、勝ち進んでも3人のなかでナダルに挑戦できるのはただ一人、決勝のみとなる。誰がナダルに挑戦する権利を得るのか、それともナダルがV11を達成するのか、はたまた決勝に進むまでにV11の夢が尽きるのかに注目すると面白いだろう。