金曜日
寝る前に携帯を探すがない、テニスバッグに入れたままだった。H氏からメールが2通届いていた。1通は明日10時からシングルスの誘い、2通目は返事がないから他の人を当たるからもういいですという内容だった。
ぼくは12時を過ぎていたが事情をメール、またお願いしますと締めくくって送っておいた。
H氏がシングルスをやっているだろうと、少し遅れて11時ごろコートへ行くとH氏がにやにやと近づいてくる。ぼくを待っている風に見えた様子に違和感を覚えた。完敗しての帰りの車で彼からの3通目のメールが目についた。当てにしていたK氏がダメになったので11時からお願いしますという内容に、ぼくはやっと納得了解した。彼はぼくを待っていたのだが、それを理解してしていなかった。
調子は悪いとは思わなかった、いやサービスも感触を感じていたし前回のリベンジを思いめぐらしてコートに立ったが結果は悲惨なものだった。3セットこなして2個、1個、ベーグルで負けていた。彼がうまく待っていたのかぼくが悪すぎたのかわからないが、ストロークでも足でも差を付けられていた。
いや待てよ、ヘリコプター3台試合開始を待っていたかのように頭上を旋回し始めたのだ、ぼくたちは何も悪いことはしていないのに、そのうち飛び去るだろうと我慢、少し遠くに離れたのでほっとしてテニスに打ち込もうとすると、またや舞い戻って、ぼくを苛立たせるためかと思いたくなっていた。
旋回は3セット終わるまで続いていた。終盤クラブハウスに目を向けるとテレビの前に人だかり、今頃何もないはずだがと思いながら、しかしそこに原因が映しだされていたのだ。試合を終えてクラブハウスのなかで近隣での殺人事件を知った。人だかりのテレビは殺人事件現場の家屋を映しだしていた。
それで警察や報道のヘリが舞っていたのだ。ようやく理解できた、そういう事情が分かっていれば少しはテニスの内容が違ったかもしれないと思ったりもした。かなりの低空をがんがんやられて、訴えたくなるほど腹立たしくなっていた。
それにしてもぼくがチャリで車の少ない裏道を通って来ているが、そのあたりでの事件らしく、静かな住宅街での殺人事件驚きとしか言いようがない。