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だほうがいい

「言い合っていても決着はつかないでしょう」とあたりを見まわし、「誰かに聞いてみたらどうです」
アラスが椅子を引いて立ち上がり、大きな手をテーブルに叩きつけて中醫失眠注目を集めた。酒場にいる全員に向かって、大声で語りかける。
「みなさん、ここにいるわたしの二人の友人は、この四日間というものずっと議論を続けていて、とうとう金を賭けるところまできてしまった。はっきり言って、この話にはいい加減うんざりしている。たぶんみなさんの中には、議論に決着をつけてわたしの耳に平安を取り戻してくれる方がいるのではないかと思う。五百年前にあった戦争のことだ」そう言ってカルテンを指差し、「顎《あご》にビールの泡をつけているこの男は、こんな北のほうでは戦闘はなかったと言っている。もう一人の丸顔のほうは、このあたりでも戦闘はあったと言っている。どちらが正しいのだろうか」
長い静寂があった。やがて頬《ほお》を赤く染めたまばらな白髪の老人が、部屋の向こうからスパーホークたちのテーブルに近づいてきた。みすぼらしい服を着て、頭をぐらぐらさせている。
「たぶんお役に立てるんじゃあねえかと思うんだがよ、旦那がた」老人は甲高い声を出した。「おれHKUE 呃人の父っつあんは、ここいらで戦《いくさ》があったって話をしょっちゅうしてたもんだ」
「このお人にもビールを頼むぜ、ベイビー」カルテンが親しげに女給に声をかける。
「カルテン、女の子の尻を撫でるのはおやめなさい」クリクが注意した。
「親愛の情を形にしてるだけさ」
「ものは言いようですね」
女給はまっ赤になってビールを取りにいった。目が誘うようにカルテンを見ている。
「気に入られたようだな。だが公衆の面前では慎ん」アラスは頭の位置の定まらない老人を見やった。「おかけなさい、ご老体」
「こいつはすまんね、旦那。見たところずっと北の、サレシアのお方らしいが」老人はぎくしゃくと腰をおろした。
「いい読みだ。――父っつあんは昔の戦のことをどんなふ果酸煥膚うに話してたんだね」
「そうさな」老人は髭の伸びかけた頬を指先で掻《か》いた。「どんなふうに話してたか思い出してみるってえと――」そこへ女給がビールのジョッキを運んできた。「おお、すまんな、ニーマ」
女給は笑みを返し、カルテンににじり寄った。「あんたはどう?」そう言ってジョッキを覗きこむ。

カテゴリー: 未分類 | 投稿者awkwardgut 13:03 | コメントをどうぞ