月別アーカイブ: 2016年8月

はそう言いながら

「ドロスタ王は信用できるんだろうね」ガリオンはベルガラスの後に続いて、ゴミの散乱する居酒屋の裏小路を歩きながらシルクにたずねた。
「どの程度、衝撃を与えられたかによるな」シルクは答えた。「だがSCOTT 咖啡機開箱ある一点に関しちゃ、本当のことを言ってたぞ。まさに今のやっこさんはにっちもさっちも行かないところまで追いつめられているのさ。少なくとも、ローダー王と協定を結ぶ役にはたつだろう」

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小路からもと来た通りに引き返したところで、ベルガラスは暮れゆく空を見あげた。「急いだ方がよさそうだ」老人は言った。「城門が閉まる前に、この街を出るのだ。壁の外一マイルほどのところに馬をつないである」
「わざわざそのために引き返したんですか」シルクはSCOTT 咖啡機評測いささか驚いたような声で言った。
「むろんだとも。まさかモリンドランドまで歩いていくわけにはいかんからな」老人は川から離れた通りをすたすた歩いていった。
一行が城門にたどりついたのは、暮れゆく光の中で、衛兵たちが夜にそなえてまさに門を閉めようとしているときだった。ナドラク兵の一人が三人の行く手をさえぎるように手をあげかけた。だが途中で気が変わったらしく、小声でぶつぶつ罵りながら、行ってもいいと言わんばかりの仕草をした。タールを塗りたくった巨大な扉が、背後でドーンと音をたてて閉まった。続いて内側でかんぬきを下ろす音がして、重い鎖ががちゃがちゃ鳴った。門の上からのしかかるように見おろすトラクの彫刻面を、ガリオンは再び見あげてから、ゆっくりと背を向けた。
「追跡されている可能性はありますかね」シルクは街から続いている、ほこりまみれの街道を歩きながらベルガラスにたずねた。
「あり得ないことではないな」ベルガラスは答えた。「ドロスタ王はわれわれの行動の目的を知っているか、もしくは当たりをつけている。マロリー人のグロリムどもは実に油断のならん連中で、人の心をそれと気づかれずに探ることができるのだ。だからこそ王のちょっとした外出に、わざわざついてくる必要もないのだろう」
「何か手を打っておかなくていいんですか」しだいに暗くなってゆく空の下を歩きながら、シルクはたずねた。
「不用意な音をたてるには、いささかマロリーに近すぎるのでな」ベルガラ優思明スが言った。「遠く離れていようとゼダーにはわしの動きまわる音は聞こえるだろうし、トラクの眠りもほとんどまどろみ程度になっているだろう。よけいな物音をたててやつをうっかり起こすような危険は冒したくない」
一行は街を取りまく空き地をふちどるように続く、密集したやぶの黒い影に向かって街道を歩き続けた。川のそばの湿地で鳴くカエルのこえが、たそがれに響きわたった。
「それじゃ、トラクはもう眠っていないんだね」しばらくしてからガリオンが言った。かれはあわよくば眠っている神に忍びよって、不意打ちを食らわすことができるかもしれないという空しい希望を心のどこかで抱いていたのだ。
「眠ってなどおらん」かれの祖父は答えた。「おまえの手が〈珠〉にふれたとき、全世界を揺るがすほどの大きな音がしているのだ。あれを聞けばトラクとて、寝過ごしているわけにはいかんだろうよ。まだ本当に目覚めたわけではないが、まったく眠っているわけでもないのさ」
「そんなに大きな音がしたんですか」シルクがおもしろそうにたずねた。
「おそらく世界の反対側まで聞こえたことだろうよ。ところでわしはそこに馬を残しておいたのだが」老人、数百フィート離れた道路の左側の、影に閉ざされた柳の木立を指さした。
突然、かれらの背後で重い鎖ががちゃがちゃ鳴る音がして、カエルたちの声が一瞬やんだ。
「やつら、門を開けているぞ」シルクが言った。「公務上の理由がないかぎり、あんなことをするはずがない」
「さあ、急ぐのだ」ベルガラスが言った。
にわかに濃くなっていく闇の中で、さらさら音をたてる柳を三人がかきわけていく音を聞きつけた馬が、体を振るわせていなないた。一行は木立から馬を連れだし、乗りこむと再び街道へ引き返した。

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つまでもシュミーズ姿で

具足師のデルバンは、はげ頭のぶっきらぼうな男だった。肩幅は広く、手はたこだ中醫師らけで。ごま塩のあご髭をたくわえていた。根っからの職人であり鎧作りの名人とうたわれるかれは、およそ誰に対しても敬意をはらおうとはしなかった。まったく箸にも棒にもかからない男だわ、とセ?ネドラは一人ごちた。

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「おれは女の鎧なんぞ作らん」というのが鍛冶屋のダーニクをお供に、かれの工房を訪れたセ?ネドラの要請にたいする第一声だった。具足師はそう言い捨てると二人に背を向けて、再びまっ赤に熱した鉄板にハンマーをやかましく振りおろしはじめた。話だけでも聞くことを説得するのにそれから小一時間ほどを要した。燃えさかる炉から発散する凄まじい熱が赤レンガの壁に反射して、よりいっそう熱さを耐えがたいものにしているようだった。セ?ネドラはいつのまにか滝のような汗をかいていた。セ?ネドラ避孕方法は自分で考案した鎧のデザイン画を何枚か用意してきていた。彼女としてはいささか自信があったのだが、デルバンはそれを見るなりしわがれ声で笑い出した。
「何がおかしいのよ」セ?ネドラは非難するように言った。
「こんなものを着た日にゃ、亀みたいになっちまうぞ」具足師は答えた。「これじゃ一歩も動けやしない」
「この絵はだいたいこんなものがほしいという意味で書いたのよ」セ?ネドラはかんしゃくを押さえながら言った。
「女の子なら女の子らしくこいつを洋装店へでも持っていくがい避孕 藥 副作用い」かれは言った。「おれの商売は鉄をつかうんだ――ブロケードやサテンだのじゃない。こんな鎧はおよそものの役にたたんし、着心地が悪くて一分たりとも着ちゃいられないだろうさ」
「じゃあ、悪いところを直してちょうだい」王女は食いしばった歯のあいだから言った。
かれは再度デザイン画に目をやると、それを拳でくしゃくしゃに丸めて隅へ放り投げた。
「話にならん」
セ?ネドラは叫びだしそうになるのをぐっとこらえた。彼女は丸められたデザイン画を拾いあげた。「どこがいけないって言うのよ」
「まずここが大きすぎる」そう言いながらかれは無骨な指でデザイン画の肩のあたりをさした。「これじゃ腕を上げることすらできんぞ。それからここだ」デルバンは鎧の胸当ての袖ぐりの部分を指さした。「こんなにきつくしたら、腕が棒みたいに突っぱっちまう。自分の鼻すらかけないだろうよ。それにだいいちこの絵は何を念頭において書いたのかね。胸当てかい、それとも鎖かたびらかい。両方いっぺんは無理というものだ」
「何でよ」
「重さのせいだ。とても着て歩けやしないさ」
「じゃあ、軽くすればいいでしょ。そんなこともできないの」
「やろうと思えばくもの巣のように軽くすることだってできる。だがそんなことをして何になるというんだ。そんな薄い鎧では果物ナイフでも切られちまうぞ」
セ?ネドラはふかく息を吸いこんだ。「ねえ、親方」彼女は感情を押し殺した声で言った。
「よくわたしを見てちょうだい。いったいどこにこのわたしより小さい戦士がいると思うの」
かれは王女のきゃしゃな体格をじっと見つめ、はげ頭を掻きながら下まで見おろした。「ふうむ、ちっとばかし発育不足のようだな」かれは言った。「実際に戦うんでなけりゃ、何だって鎧なんぞ必要なんだ」
「実際に鎧として使うわけじゃないのよ」彼女はいらいらしながら説明した。「でも鎧らしく見えなくちゃいけないのよ。まあ、一種の扮装みたいなものね」そう言ってから彼女はただちに言葉の選択を誤ったことを悟った。デルバンの顔がみるみる険しくなったかと思うと、再び彼女のデザイン画を投げ捨てた。さらにかれの機嫌をなだめるのに十分ほどかかった。甘言をろうし、さんざんおべっかを使ったあげく、ようやく彼女はこの鎧が何か芸術的な目的で使われるものだということを納得させた。
「わかったよ」かれはむっつりした顔でようやく降参した。「じゃあ、着ているものを脱ぎな」
「何ですって」
「着ているものを脱げといったんだよ」具足師は繰り返した。「正確なサイズが必要なんだ」
「あなた自分の言ってることがわかってるの」
「いいかい、お嬢さん」男はぶっきらぼうな声で言った。「おれは既婚者だ。それにあんたよりも大きな娘が二人いる。ちゃんと下にペチコートを着てるんだろう?」
「ええ、でも――」
「それなら必要最小限の慎みは守れるというものだ。さあ、さっさと服を脱ぐんだ」
セ?ネドラは顔をまっ赤に染めながら服を脱いだ。二人のやりとりをにやにやしながら戸口から見守っていた鍛冶屋のダーニクは、礼儀正しく後ろをむいた。
「もっとたんと食わなけりゃだめだぞ」デルバンは言った。「まるで鳥がらみたいに痩せているじゃないか」
「そんなこといちいち言われなくたってわかってるわ」セ?ネドラはぴしゃりと言った。「いいからさっさと始めてちょうだい。い立ってるわけにいかないでしょ」
デルバンは規則的な間隔をあけて結び目のつけられた丈夫な一本のひもを取り上げた。かれはそのひもで何度もサイズを計っては、いちいち一枚の板の上に記入していった。「よし」ようやくのことで具足師は言った。「これならいいだろう。さあ、服を着てもいいぞ」
セ?ネドラは慌ただしくドレスを身につけた。「それでいったいどれくらいかかるの」彼女はたずねた。
「二、三週間はかかるな」

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かべて――それからと

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「わたしたちが一緒に〈ドリュアドの森〉で水浴びをしたときのこと覚えている?」
「一緒になんか入っちゃいない」ガリオンは髪の毛のつけ根までまっ赤にしながら、慌てて否定した。
「あら、似たようなものじゃない」彼女はあっさりとかれの異議をし消化系統りぞけた。「レディ?ポルガラが旅のあいだずっと、わたしたちをくっつけようとしてたことに気づいていた? あの人にはこうなることがわかってたのね。そうじゃなくて?」
「うん」ガリオンはみとめた。
「だからずっとわたしたちが一緒になるようにしてたのね。あなたとわたしの間に何かが起こるかもしれないと思って」
ガリオンはその可能性を考えてみた。「たぶん、きみの言うとおりだと思う」ようやくかれは口を開いた。「おばさんは人と人の仲をとりもつのが好きらしいから」
セ?ネドラはため息をついた。「そうとわかっていれば、あんなに時間をむだにはしなかったのに」彼女の口調にはかすかな後悔さえ感じられた。
「何をいうんだ、セ?ネドラ!」彼女の言葉にショックを受けたガリオンは、あえぐような声を出した。
彼女はいたずらっぽく笑った。そして再びた乳鐵蛋白め息をついた。「もうこれからは、何でもかんでもしかつめらしくなっちゃうのね――きっと前ほどおもしろくはないでしょうね」
ガリオンの顔は今にも火を吹かんばかりだった。
「まあ、それはおくとして」彼女は続けた。「二人で水浴びしたときに、わたしにキスしたいってあなたに聞いたこと覚えてる?」
ガリオンはもはやしゃべることもできず、黙ってうなずくばかりだった。
「まだあのときのキスをわたしはもらってないわ」彼女は茶目っ拔罐気たっぷりに言うと、立ち上がって、つかつかとかれに近づいてきた。「あのときのキスを今いただきたいわ」彼女は小さな手でガリオンの胴着をしっかり握った。「リヴァのベルガリオン、あなたはわたしにキスする義務があるわ。トルネドラ人はもらうべきものは必ずもらうのよ」まつげの下からかれを見上げる瞳にはあやしい炎がくすぶっていた。
そのとき、外でファンファーレが鳴り響いた。
「もう行かなくちゃだめだ」ガリオンは必死のおももちで異議を唱えた。
「待たせておけばいいじゃない」そうささやきながら、王女はガリオンの首に両腕を巻きつけた。
ガリオンはごく短い、儀礼的だけのキスですますつもりだったが、セ?ネドラはあきらかにそんなつもりはないようだった。彼女のきゃしゃな腕は驚くほど力強く、その指はしっかりとガリオンの髪の毛をはさんでいた。キスは驚くほど長く、ガリオンのひざはがたがたと震えだした。
「やっとキスしてくれたわね」セ?ネドラはようやくかれを離しながらささやいた。
「もう行った方がいいと思うよ」再びトランペットが鳴り響くのを聞きながら、ガリオンがうながした。
「すぐに行くわよ。わたしの服装、おかしくなってないかしら」そう言いながら彼女はガリオンに見えるように一回転してみせた。
「いいや」かれは答えた。「何ともなっていないよ」
すると王女は不満そうに頭を振りながら言った。「今度はもう少しうまくやってちょうだいね。さもないとわたし、あなたが真剣に愛してないんじゃないかと思うようになるわ」
「ぼくにはきみという人がまったくわからないよ、セ?ネドラ」
「ええ、わかってるわ」彼女は謎めいたほほ笑みを浮かべて言った。そしてかれのほおを優しくたたいた。「でもわたしはこのやり方を変えるつもりはまったくないわ。さあ、もう行きましょうよ。あんまりお客さまをお待たせするわけにはいかないわ」
「ぼくは最初からそう言ってるじゃないか」
「さっきはそれどころじゃなかったでしょ」彼女は王者らしい無頓着さで言った。「ちょっと待って、ガリオン」王女はやさしくかれの髪をなでつけた。「これでいいわ。さあ、あなたの腕を貸してちょうだい」
ガリオンが腕をさし出すと、王女はきゃしゃな手をそえた。トランペットが三回目の吹奏を繰り返すなか、かれは広間のドアを開けた。二人が広間に入場したとたん、いあわせた列席者たちのなかからいっせいに興奮のどよめきが起こった。セ?ネドラに歩調をあわせながら、ガリオンは威厳のある足取りで、王者にふさわしい落着きはらった表情を浮かべながら歩いていった。
「そんなふうにむっつりしてるものじゃないわ」彼女が小声で忠告した。「少し笑みを浮きどきうなずいてみせるの。そうやるものなのよ」
「きみがそういうのなら」かれも小声で答えた。「実のことをいえば、ぼくはこういったことにまったく慣れてはいないんだ」
「大丈夫よ」彼女は安心させるように言った。
列席者に向かってほほ笑み、あるいはうなずきながら若い婚約者たちは大広間を進み、王女のために玉座のそばに用意された席の前へ来た。ガリオンは彼女のために椅子を引いてやってから、自分は玉座の階段を登りはじめた。いつものように〈アルダーの珠〉はかれが着席すると同時に青い光を放ちはじめた。だが今回はどういうわけかほのかにピンク色をおびていた。
婚約の儀式は雷鳴のように轟きわたるベラーの高僧の祈りの言葉で始まった。グロデグは状況をいかして最大限に劇的な効果を高めていた。
「まったくうんざりするようなおしゃべり男じゃないかね」ベルガラスは玉座の右側のおなじみの場所からぶつぶつ文句を言った。
「セ?ネドラとあそこでいったい何をしていたの」ポルおばさんがガリオンにたずねた。
「何でもないよ」ガリオンはまっ赤になりながら答えた。
「本当かしら。じゃあ何であんなに時間がかかったんでしょうね。不思議だこと」
グロデグは婚約合意書の最初の条項を読み上げはじめた。ガリオンにはまったくわけのわからないたわごととしか聞こえなかった。途切れめごとにグロデグは読み上げるのをやめ、ガリオンを厳めしい目で見た。「リヴァ国王ベルガリオン陛下は、この条項に同意するや否や?」高僧はそのたびにいちいちガリオンにたずねた。
「同意する」ガリオンは答えた。
「トルネドラ国王女セ?ネドラ殿は、この条項に同意するや否や?」グロデグは今度は王女にたずねた。
「同意します」セ?ネドラははっきりした声で言った。

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