具足師のデルバンは、はげ頭のぶっきらぼうな男だった。肩幅は広く、手はたこだ中醫師らけで。ごま塩のあご髭をたくわえていた。根っからの職人であり鎧作りの名人とうたわれるかれは、およそ誰に対しても敬意をはらおうとはしなかった。まったく箸にも棒にもかからない男だわ、とセ?ネドラは一人ごちた。
「おれは女の鎧なんぞ作らん」というのが鍛冶屋のダーニクをお供に、かれの工房を訪れたセ?ネドラの要請にたいする第一声だった。具足師はそう言い捨てると二人に背を向けて、再びまっ赤に熱した鉄板にハンマーをやかましく振りおろしはじめた。話だけでも聞くことを説得するのにそれから小一時間ほどを要した。燃えさかる炉から発散する凄まじい熱が赤レンガの壁に反射して、よりいっそう熱さを耐えがたいものにしているようだった。セ?ネドラはいつのまにか滝のような汗をかいていた。セ?ネドラ避孕方法は自分で考案した鎧のデザイン画を何枚か用意してきていた。彼女としてはいささか自信があったのだが、デルバンはそれを見るなりしわがれ声で笑い出した。
「何がおかしいのよ」セ?ネドラは非難するように言った。
「こんなものを着た日にゃ、亀みたいになっちまうぞ」具足師は答えた。「これじゃ一歩も動けやしない」
「この絵はだいたいこんなものがほしいという意味で書いたのよ」セ?ネドラはかんしゃくを押さえながら言った。
「女の子なら女の子らしくこいつを洋装店へでも持っていくがい避孕 藥 副作用い」かれは言った。「おれの商売は鉄をつかうんだ――ブロケードやサテンだのじゃない。こんな鎧はおよそものの役にたたんし、着心地が悪くて一分たりとも着ちゃいられないだろうさ」
「じゃあ、悪いところを直してちょうだい」王女は食いしばった歯のあいだから言った。
かれは再度デザイン画に目をやると、それを拳でくしゃくしゃに丸めて隅へ放り投げた。
「話にならん」
セ?ネドラは叫びだしそうになるのをぐっとこらえた。彼女は丸められたデザイン画を拾いあげた。「どこがいけないって言うのよ」
「まずここが大きすぎる」そう言いながらかれは無骨な指でデザイン画の肩のあたりをさした。「これじゃ腕を上げることすらできんぞ。それからここだ」デルバンは鎧の胸当ての袖ぐりの部分を指さした。「こんなにきつくしたら、腕が棒みたいに突っぱっちまう。自分の鼻すらかけないだろうよ。それにだいいちこの絵は何を念頭において書いたのかね。胸当てかい、それとも鎖かたびらかい。両方いっぺんは無理というものだ」
「何でよ」
「重さのせいだ。とても着て歩けやしないさ」
「じゃあ、軽くすればいいでしょ。そんなこともできないの」
「やろうと思えばくもの巣のように軽くすることだってできる。だがそんなことをして何になるというんだ。そんな薄い鎧では果物ナイフでも切られちまうぞ」
セ?ネドラはふかく息を吸いこんだ。「ねえ、親方」彼女は感情を押し殺した声で言った。
「よくわたしを見てちょうだい。いったいどこにこのわたしより小さい戦士がいると思うの」
かれは王女のきゃしゃな体格をじっと見つめ、はげ頭を掻きながら下まで見おろした。「ふうむ、ちっとばかし発育不足のようだな」かれは言った。「実際に戦うんでなけりゃ、何だって鎧なんぞ必要なんだ」
「実際に鎧として使うわけじゃないのよ」彼女はいらいらしながら説明した。「でも鎧らしく見えなくちゃいけないのよ。まあ、一種の扮装みたいなものね」そう言ってから彼女はただちに言葉の選択を誤ったことを悟った。デルバンの顔がみるみる険しくなったかと思うと、再び彼女のデザイン画を投げ捨てた。さらにかれの機嫌をなだめるのに十分ほどかかった。甘言をろうし、さんざんおべっかを使ったあげく、ようやく彼女はこの鎧が何か芸術的な目的で使われるものだということを納得させた。
「わかったよ」かれはむっつりした顔でようやく降参した。「じゃあ、着ているものを脱ぎな」
「何ですって」
「着ているものを脱げといったんだよ」具足師は繰り返した。「正確なサイズが必要なんだ」
「あなた自分の言ってることがわかってるの」
「いいかい、お嬢さん」男はぶっきらぼうな声で言った。「おれは既婚者だ。それにあんたよりも大きな娘が二人いる。ちゃんと下にペチコートを着てるんだろう?」
「ええ、でも――」
「それなら必要最小限の慎みは守れるというものだ。さあ、さっさと服を脱ぐんだ」
セ?ネドラは顔をまっ赤に染めながら服を脱いだ。二人のやりとりをにやにやしながら戸口から見守っていた鍛冶屋のダーニクは、礼儀正しく後ろをむいた。
「もっとたんと食わなけりゃだめだぞ」デルバンは言った。「まるで鳥がらみたいに痩せているじゃないか」
「そんなこといちいち言われなくたってわかってるわ」セ?ネドラはぴしゃりと言った。「いいからさっさと始めてちょうだい。い立ってるわけにいかないでしょ」
デルバンは規則的な間隔をあけて結び目のつけられた丈夫な一本のひもを取り上げた。かれはそのひもで何度もサイズを計っては、いちいち一枚の板の上に記入していった。「よし」ようやくのことで具足師は言った。「これならいいだろう。さあ、服を着てもいいぞ」
セ?ネドラは慌ただしくドレスを身につけた。「それでいったいどれくらいかかるの」彼女はたずねた。
「二、三週間はかかるな」