日別アーカイブ: 2015年6月28日

テニスの技術

コーチとして生活していますから、ショットの技術やゲームの作り方にはだいぶ時間をかけてきました。

裏をかえせば、才能はなかったので自分が優秀なプレイヤーになるには時間がかかりすぎたってことだと思います。

ワタシのこれまでの生活は、テニスが上手くなりたいという自分の欲求でもあり、またスクールやプライベートレッスンを受けてくれるお客さんの上達に役立つ勉強をしてきたことにあります。

ほんと、歳とって死んだ後に、「あの人はテニスばっかりだったねぇ」って言われるような生き方してます。

 

コーチとして、人の「打ち方」を見ているときに、どこを評価しているかといえば「要素」です。

グリップ・スタンス・バックスイング・フォワードスイング・打点・フォロースルー・フィニッシュ…ほかにも、全体的な姿勢や、フットワークなどから見える「ボールへの入り方」も。

できている要素は、安定したパフォーマンスを出してきます。

ええと、例えば、ミスをする傾向が強いフォームにも、安定してネットにかけやすかったり、振り遅れやすかったりする要素があるわけです。

ショットが成功する確率が高く、かつ勢も強くてコントロールがいい、ということはかなりのレベルでそれらの要素の調和がとれている、と言う意味ですから、どこもいじる必要はない、と判断できるかもしれません。

マイケル・チャンがコーチについて、錦織圭に色々と指南したそうですが、錦織選手が「こんなに直すとこあるのかー」と言っていたくらいですから、マイケル・チャンが選手時代に目指していた高みもそこに見えるような気がしました。あれだけのレベルでプレーできている選手に対し、不満がたくさんあったのでしょう。

いや、不満というよりも、希望がもっと先にたくさん見えた、ということかもしれませんね。この選手はこんなもんじゃないはずだ、もっと先に行ける才能がある、ということを早くから見抜いていたのかもしれません。

ワタシ自身は若い頃、「自分より上手い人は教えられない」と思っていました。

なぜなら、「その人は自分よりも高い、理解できない領域のことができている」と思っていたからです。

近年はそうは思わなくなってきました。要素がわかっているので、自分よりも上手いと思う人でも、感覚的にこんな感じでプレーしてるんだろうってことはわかりますし、力学的にその人の動きを理解できるようになりましたし、マイケル・チャンのようにさらに上を要求することはまだ無理かもしれませんが、不調のときには原因を突き止めるお手伝いくらいはできると思います。

 

そんな風になってから、ワタシのレッスンでは、「打ち方」は形では教えません。

主に「ラケットがボールに当たるときの感覚(=ボールコントロールの感覚)」を理解してもらおうとして教えています。

だから、スタンスの形がこう、そのときに腕はこう、ここの手首の角度はこのくらい…なんてことは言いません。人によって差が出るものだから。

ただ、ボールの見方や、打点への入り方、リズムをとること、慌てずに遂行することと、反復練習をして約束の動きになるように訓練していくこと、がショット練習の要です。

いきなりプロのようなショットが打てるようになりません。

もしかしたら、1球だけなら、プロっぽいショットを打てるかもしれません。しかし、プロ選手のようにそれで試合はできないはずです。プロ選手は積み重ねでそのショットを精度高く再現できるまで鍛え上げてきていますから、連続してでも、突然でも思ったショットを繰り出すことができるわけです。

だから、ショットに関しては「正しい感覚を理解してもらうこと」でいいと思います。

体格や筋力、動ける範囲や反応できる速さまで、テニスには必要ですから、処理能力が早くなる、動きが約束化されるまで、段階は引き上げられません。

感覚が育ってきたら、また次の感覚へ。

今できていることをざっくりかもしれませんが、総合的に判断して、常にそのちょっと上が見えるようにお話ししていきます。

 

テニスにはいろんな「型」があります。皆さんそれぞれが、自分のフォームを持っています。トップスピンを打つのに適したスタイルもあれば、スライスが得意な要素を持った形の人もいます。どちらも、それを生かしたテニスができる方が、気持ち良くプレーできるものだと思います。

ただし、そうだからといってスピンしか打てない、スライスだけで試合する、というわけにもいきません。ショットの多様性は、試合を作る上で重要な要素になりますから。

ただ得意なショットには頼りたいと思いますし、そこを中心にゲームを考えるようになってくると思いますから、どうやってやれば色々なショットが打てるようになるのかをきちんと説明できるようにはしています。

 

なぜ、うまくトップスピンのショットがコントロールできないのか?

というのは、その人の打ち方の中に原因となる要素があります。例えば手首が硬くてヘッドが下がらないとか。あるいは、回転はかかるけど押しがないので深さが狙えないとか。手首を回転させると思い込んでいるから回転以外のコントロールがなくなる…など、人によって見なきゃいけない要素は違います。

その中で、できていることは何か、イメージ通りに動けていないことや、間違った認識で動いていることがないか、よく会話しながら生徒さんと一緒に答えを見つけていきます。

 

自分の頭の中の引き出しに入っているものが、人様の役に立つ。これがこの職業の一番興奮するところです。かっこつけた言い方かもしれませんが、知っているだけではダメだし、自分ができるからといっていいアドバイスはできません。その人に足りないものはどこで、どの辺まで溯れば違った感覚を正しい方向に持っていけるのか、コーチにも経験は必要なわけです。

 

若いからといってできないというものでもありません。考えればできるので、よく見てくれない、知っていることを伝えるだけではコーチとしてはまだまだだと思っています。

ラケットは、ボールに当たると手からフィードバックがやってきますから、いちばんテニスを教えてくれるのは、ラケットなんです。

力でなんでもやってしまおうとすると、ラケットからの答えを聞けない状態みたいなものですから、そこから感覚をたくさんもらえるようにしましょう。

カテゴリー: 打ち方オタク | 投稿者ナガキヤスヒロ 04:06 | コメントをどうぞ