二つあります。
ひとつは、ボールを見ることのコツ。
もうひとつは、握り方=ボール感覚というコツ。
あまり、そこのアドバイスをしている職業コーチもいらっしゃらないのでは?
ワタシ自身、そこの差を実感して、自分のフォームを変えていないのに打球があれだけ変わることに疑問を持たなければ、そこのところに注目はしなかったでしょうし、知識もなかったと思います。
たとえば、スクールでコートを3列にタテ割りしてラリーをするようなとき。
3列にすると幅が狭くなって、ちゃんと狙わなきゃ、というプレッシャーが不思議なくらい増します。
ある時、急に調子よく、どんなボールも外さずに打てるような気がして、「あれっ、俺うまくなった?」と勘違いしました。感覚がよかったんです。
打つ前から先にスイングの軌道をボールに合わせる準備ができるような感じがして、スイングをスタートするときには「あとはうまく当てるだけでいい」というような状態でインパクトを迎えられるような気がしたんです。
で、次の日、ぜんぜんダメでした。
もちろん、フォームなんか変えてませんし、むしろリズムよくボールに入ろうと意識して、昨日のようなラリーで丁寧にお客さんと長く続くラリーをしようとしていたのに、です。
バウンドに自分のスイングが…いや、予測が合わないような感じで、さすがに自分のレーンはかろうじて守るものの、ボールが死んだような勢いのないバウンドになったり、急に当たってショットが速くなったりして、相手のお客さんがリズムを崩すような返球が続きました。
その差は何だったのか?
ボールとの距離、という答えが一番先です。自分のスイングエリアにゆとりのある状態でボールを待てるのなら、自分が狙ったスイングをする準備をして、そこに向こうからボールが入ってくる(追いかけるのでなく)ようにすれば、ボールが自分のものになったような感じで打てます。
ストレート半面とか、上述の3列のような、コースを正確にするようなラリーの場合は、すこし下がってボールに自分から近づくようにしながらスイングの形を先に作れればOK。
そこに例えばシングルスの試合のような、自分がどこに立つこともどこを狙うことも可能な場合は、腰から肩のターン(ひねりこみ)がかなり重要になります。
来た方に返すのと、自由に正確に打つのとは、ちょっと違うんです。
乱打、といっても「ラリーを続ける」ことが目的の場合、相手のいる方にショットを打つので、ボールに合わせるのがうまければそれでいいんです。
ゲームの要素とか、練習で相手を振ったり、または振られるようになれば、アウトせずに相手のいない方に打ち返す、「ラリーを(自分が)終わらせない」ようにする打ち方が必要になってきます。
その時に、打点のエリアに「奥行き」を求めらるようにしておかなければ、ただ打点は「来たボールを跳ね返す」ための点になってしまいます。
膝をまげろ、といいますが、膝の屈伸がスイングのパワーになることももちろん打球技術として必要ですし、膝を曲げることは腰をひねることにも直結することなので、「膝はまげなくていい」なんてことは絶対にありません。
「膝はそんなに曲がらなくても大丈夫」なら話は分かります。要するに「柔軟にしておいて体の動きを助ける」という範囲が可能ならそれで充分です。
だから、レディポジションでは突っ立っていてはだめですよ。ステップや膝でリズムをとることです。スタートに瞬発力を持たせることや、先に腰のターンをしておけば追いついてすぐにスイングに入れるようにもなります。
もう一つの握りの中のラケットの動きの把握も、意識していない人の方が多いでしょう。
自然とできる人もいますから、うるさく言うべきことでもないのかもしれませんが、できずに悩んでいる人には、そこで感じられるラケット面とボールの当たった感覚がどうやって消化されているかは聞いた方がいいです。
ただ握っているだけでも駄目でしょうし、力を入れれば何でも言うことを聞くような道具でもありません。
力を抜く、という言葉だけでも駄目でしょうね。ラケットにはタテにもヨコにも軸がありますから、ラケット自体の動きを手が把握して制御できればそれでいいわけです。
スライスがどうしても打てない人とか、あらかじめ握りが悪いと思ってみてあげないと、振り方をいくら説明しても理解されない場合が多いです。
コーチが説明して、うなづいているから理解しているのではなく、それですぐできないのならできないのですから、理解はされていませんよね。
ラケットがボールに当たるとどんなふうに感じられるのか、というポイントが理解できずに動き方だけその人のイメージでやってみても元が間違っている(期待している当て方を手が作れない)わけですから、いくらやってもできずに終わります。
生徒さんも、コーチもがっかりするばかりです。
まず当て方がわかるように握りの中でボールをどう扱っているかはイメージさせるような練習をさせましょう。ラケット面かボールが逃げていくような感覚のままスイングをつけても、何にもなりません。
小さな要素の練習、勢いをつけた大きな要素の練習、調整できる部分からコントロールをつけていって…という手順を踏んでいく、ということでしょうね。
スライスが打てていてスピンが打てない人は逆の発想の同じことです。ボールへの入り方がもう違うのに、スイングだけを直しても実用性がありません。球出しのボールで必死に練習して、ラリー練習で元に戻ります。
違う点はどこか、いつから違うのか、そこから理解していないと、習ったことを実践で生かせずに、すぐに忘れます。
習った技術は、「通販で買ったけどちょっとしたら使わなくなった道具」みたいにお蔵入りになったり、荷物置き場になったりします。