フェデラーの分析

私の主観で、最も偉大なテニス選手で間違いないと思っている、Roger Federerについて書きたいと思います。

分かったような口を利くような感じで書いちゃうと思いますが、そりゃあフェデラーになったことはないので、分からないものはわからないさ(笑)。ワタシ目線で観察して、参考になったことも、そうなんだろうけど一般はおろか、プロでもそこまではムリじゃね、っていうことを思いつくまま書いてみようって気になりました。

『フェデラーの魔法の杖』

そう呼ばれた、ウイルソンのラケット。フェデラーの専用であるシグニチャーモデルがでたのはn-codeから。  n six-one tourがそうでしたね。

お手本にそのままなるような自然で流れるような美しいフォームから、自在に繰り出される多様なショットは、初めて見た時から衝撃でした。プロの試合で、こんな人出てくるもんなの!って思ったものです。

現在では薄いグリップでフォアハンドを強打する選手が台頭してきました。フェデラーもそうです。

薄いグリップのフォアが武器にあれほどなっているのは、懐が深くとれるのもあるんだろうなと。溜めて打つような十分の時に、どっちに打つのかマジで分かりません。

踏み込んで打ってこれる、っていうシーンは、フェデラーが自分の時間を使って自由に打点を取れるから、わざわざ踏み込んでタイミングを早めに打ってくるわけですから、打点の制限は相手の打ったボールからは受けていない。

動画で見ても、まさに「フリー」というポイントをフォアハンドで量産しています。

その、薄いグリップで強烈なショットを生み出す一つの大きなポイントがこれ。federer grip

グリップエンドが指で隠れるくらい、長く持っている点です。小指の下、足で言うと踵に相当するところから、「heel pad」と言いますが、このヒールはラケットを支えるのに基本技術の中では結構大事なとこなんです。

フェデラー(ナダルもそうですが)は、このヒールでの支えをキャンセルしているために、薄い握りでもヘッドの動きに制限が出なくなります。

ようするに、薄い握りではヘッドを上手く下げれなくなるためにフラットやスライスは得意でもトップスピンを強烈にかけるにはあまり適さない、というのがその握りの特徴なんですが、この長く持つ握りで、器用に手首を使うテクニック(手首でラケットを操作するという意味ではなく)が可能になっています。

といって、握りだけで技術がつくわけもないので、自然に流れるように訓練されてきた結果名だと思います。一つのショットに頼らずにどんなパターンにも対応できるように深くショットを磨きこんできたのだと思います。ふつう、走り方とか、構え方なんかに癖ができて、得意なショットがある半面苦手なショットや方向が出来るものですが、フェデラーのフォーム(動作)にはそういうことを全く感じません。

あの伝説のサンプラスとのウインブルドンでの戦い(2001年)では、サーブ&ボレーを上手く使う、「器用な」選手の印象でしたが、本人にもコメントがあるように、「2003年ころから、ベースラインからのプレーでもトップ選手を相手に十分渡り合える実感があって、ストロークを強化した」そうです。

もともとのコーディネーション能力が高い(よく鍛えられている=クレイジーボール・・・どこへ弾むか予測できない凸凹のボール・・・をワンバウンドでミスなくキャッチできる)のは、目と手のコーディネーションだけでなく、構えというか立ち方のバランス、素早く動くのに十分な筋力、予測できる範囲や方向の広さが常人では理解できないくらいのレベルなんでしょうね。

それはおそらく、ジョコビッチもそうなんじゃないかと思いますけど。

コートを見ていなくても、コートの空間を自分から見て常に一定に把握できている、という印象も受けます。あれだけ打点に顔を残す打ち方で、相手のコートを見ずに打てているんですから、相手の動きの予測、自分の身体の入れ方、打っていくのに可能な範囲の中から距離や高さ、スピードを自在に変えてコントロールできる。

2006年のデビスカップで、スイスとセルビアが戦っており、フェデラーとジョコビッチ(このころはまだ19歳の新鋭)の試合を動画で観ました。

いまから10年前の二人の試合は、かなり圧倒的にフェデラーのものでしたが、3セット目を劣勢から追いつくところまで、ジョコビッチはその能力を開き始めるシーンがありました。

2セット目まではフェデラーの攻めの速さ、展開の多様さについていけないような動きや表情でしたが、そこではいろいろと捨てたような、「開き直ったプレー」がフェデラーから次々とポイントを奪っていくようなシーンでした。

当時のフェデラーは全盛期といっていい時代。今よりも動きはアグレッシブで、他の選手が打ってくるボールよりも広い角度へ、そして相手が返球してきて甘いと見るやその読めないショットで簡単にエースを奪います。ネットをとっても、ありえないと思えるような角度や狭い範囲のストレートに自在に通してくる。プレッシャーをかけても、全く動じないような対応で、もうどうしようもないって気になるだろうな…と思っちゃいます。ジョコビッチは3セット目の途中で、ミスをするかもとか、負けたくないとかそういうリスクになるようなものをすべて捨てたような感じになり、強打を強打で返し、フェデラーに踏み込ませなくしておいて、深いショットで押し気味にラリーをするようになりました。

わかりませんけど、この後ジョコビッチはこの試合のビデオをよくみたんだろうな・・・とか勝手に想像しちゃいます。当時の不動のチャンピオンだったし、生で感じたものを、客観的に見直してこの次に対戦したらこうした位、このくらいは練習しておかないとこの人には追い付かない、というのをすごく肌で感じたんだろうなという試合でした。

 

『バックハンドのストレートウィナー』

錦織のバックハンドもそうかもしれませんが、フェデラーにとって、フォアハンドが攻撃の主軸だろうとは思いますが、相手にしてみればじゃあバックハンド狙うか、ってことになるので、そのバックハンドで守備も攻撃も出来るようにしたのは非常に大きな副砲になっていると思います。

シングルスライン上から角度なしでシングルスライン上にのせられる、しかもそれを重要なポイントで大胆に狙ってくる、ってのは、打たれた相手にとっては一歩も動けないとしてもおかしくありません。

シングルスの戦いは自分のショットが相手に制限を与えていると思えるからポジションに付けるのであって、ああ自由にフォアもバックもうてるぜ、ってのを見せつけられるのはどうなのかな、と思っちゃいますよね。

錦織がフェデラーに初めて勝ったというニュースを見た時は、椅子から立ち上がって驚きました。すぐに動画を検索して、いったいどうやったんだ、何が起こったんだ、ってワクワクしながら見ました。それくらい、フェデラーは負けない選手だったし、崩すのが大変な選手だとおもっていたから、錦織の発想力、相手を出し抜く力、自分の中に集中する能力の高さに、きっとこれなら世界チャンピオンにだってなれる、と思ったものです。バーゼルでの初対戦ではコテンパンにやられた、と言っていたのに、次の対戦でもう勝っちゃうんですから、そりゃあものすごいことだと思うわけです。

federer backhand

この可動域の広い肩も、よくトレーニングしたものなんだなぁって感じますよね。能力で出来るものじゃない。鍛えられてきたしなやかさと形だと思います。そりゃあ、世界一ですからね。

 

『どうしても崩れないメンタル』

ファイナルセットでも、表情もかえず、常に勝ちを意識してポイントに入る姿勢があり、相手にプレッシャーを与えます。

ウインブルドン決勝ではナダルと、またロディックとも、ファイナルは6ゲーム取ったところでは決着がつかず、長いゲームになりました。

2012年のオリンピックの準決勝でも、デルポトロを相手にファイナルセット(3セットですが)19-17の大接戦を制しました。この試合の動画も見ましたが、デルポトロはまったくアンフォーストエラーをしない。触ったボールは必ずコートに入る、驚異のテニスでした。それまでフェデラーは1セット目に1ブレーク許していますが、デルポトロは一つもブレイクされていない試合でした。

ラリーは互角。

この長いゲームでイライラしたり、ポイントを急いで無駄に落としたりせず、集中力を保てるのは、世界中でも一握りしかいない人たちだと思います。トップ中のトップでないと持ち合わせないメンタル。

これだけでも、フェデラーを今後も追っかけようっていうの、わかってもらえますよね・・・


カテゴリー: プロ選手オタク | 投稿者ナガキヤスヒロ 09:51 | コメントをどうぞ