テレビで見るテニスの試合は、サービスゲームをキープすることが当たり前に見えるし、その率が高いほど「負けない」プレーヤーであることを示しますね。
男子よりも、女子の方がサービスゲームのキープ率は平均して良くないように思います。現在世界ランク1位の大坂選手でも、応援しているとブレイクされるのはよく見ます。女子の中では屈指のハードパンチャーでもあり、サーブでも十分に相手を圧倒できる力があるじゃないですか。それでもセットの中でサーブをキープできないことがあります。
さいきん、いろいろな生徒さんに聞いてみるのが、「サーブのゲームとリターンのゲームとどっちが得意ですか」っていう質問。答えには、試合に出ている人ほど「リターンの方が好きですね」って答えるようです。「得意です」って答えてくれないあたりがまた現実的でいいですよね。
思い返してみれば、私もものすごい集中していい試合をした、という記憶のゲーム程、サービスゲームに集中してなにしろキープすることを意識していました。
それって後から気づくのって遅いですかね?
大事な試合だと思うほど負けてきた私ですから、そこんところがやはり全然わかっていなかったんでしょうね。
サーブは決まったエリアに打つ以上、リターンされることを前提に考えておかなければなりません。サーブがいい具合だと、リターンを失敗させることが出来るんですが、期待はしない方がいいってことをここまでのテニス人生の中で嫌ってほど思い知らされてきました。
とくに、30代を過ぎて「若手」ではなくなってきたころに、そのころに若かった学生さんとかを相手にすると、自分の中では最高に近いサーブを打っても、余裕で狙って打ち込まれます。自分の中ではレベルの高い方のショットが、彼らには普通なんだなぁと思い知ったわけですね。
逆に言えば、リターンだったらどこに打ち込んでもいい。最初の一球目を相手が不利になるようにスタートさせることが出来る条件を持っているのは、リターナーの方なのかもしれません。
サーブで200キロ、とは言わなくとも、リターンを制限させるようなパワーやプレースメントを持っていればサーバーが有利になるのかもしれませんが、一般のレベルでそういう人はなかなかいない。
だから、「リターンが返ってくるとしたらどっちに返ってきてほしいか」を考えてサーブすることにします。そんなに思い通りに相手がうつショットをコントロールできるものなら、フェデラーにだって勝てそうなもんですが、そんなに具体的でなくてもいいんです。
たとえば、デュースサイドでサーブの時に、3球目を(リターンでが返されて来た時に打つショット)フォアハンドで打ちたい、というイメージで考えて、そのサーブを相手のフォアに打ってみたらどうか、あるいはバックをついてみたらどうか、もしくは体の近くがいいか、遠目に狙ったらどうか、というのを1秒くらいずつイメージしてみます。
それで、どっちかって言ったら「フォア狙うよりもバックにしてみようかな」って思ったらセンターに打つイメージをしっかりしてサーブすればいいですし、いやいやフォアでクロスに打つでしょう、って思ったらフォアハンドの近めにコントロールすることを考えればいい。
そのうえでそこにサーブを狙った時のリスクも考える。確率が期待できるなら大胆に打てばいいし、失敗しそうならセカンドサーブをどうするかも戦略に入れて考える。
そういうことをしながらボールをついて時間を使います。
その3球目までで相手をイメージ通りに振り回せれば、こちらのペースに持ち込むことが出来ますね。
プロになるような選手は、そういう試合をジュニア時代から確実に出来るようにしてきて、他の人よりも自分はプロになるくらい上手く出来る、という自信があって選手生活をする事を決定すると思います。
テレビで見ているときと、現場のコートサイドで見ている時と、迫力や緊迫した空気などの感じ方が全く違うのが不思議な物ですが、もうそれは明確にオンコートの方がピリピリしたものを感じます。人間ってそういうオーラ?みたいなものを発しているんでしょうね。テレビでは感じられないもの。
プロの選手でも、15-40とかのシーンでは1stサーブで勝負に行きます。それって確率良くそこに放り込んで大丈夫、っていう練習に基づいた自信と、そこから始まるポイントのイメージをしっかり持っているからそのコースを選択している、ということなんですね。
たとえ読まれているとしても、嫌なコースとか立ち位置ってあると思うんです。コートの隅っこに追いやられるとか、後ろの方に下がらされるとかです。
その第一球目を持っている、ということだけ言えば、サーバーの方が有利と言っていいですが、その通りのきついコースに速いサーブを決める事が難しい。どうしたって甘くなったり、相手の読みが当たって踏み込まれたりする。
そしてその1stがフォールトだったりすると、一気にリターン有利になったりしますね。プロの試合、それもランキングの高い選手ほど、リターン側からの圧がすごい。
サービスゲームをキープ出来たら、今度は全力でブレイクしに係ればいいわけですから、相手に多大なプレッシャーをかけるチャンスってリターンゲーム。リスクを負って勝負師に行ってもいい。成功すればでかいですよね。
もしもサービスゲームを落とすと、リターンゲームではすでに追う立場ですから、すぐに取り返さなければならない。ということはリスクを負うわけにはいかなくなります。
プレーヤーによっては消極的になることだってあると思います。積極的に良ければいいのかもしれませんが、リスクが高いプレーになって失敗することもある。どちらも後悔の無いプレーってどこに見つければいいのかわからなくなります。
だから、サービスキープは当たり前、ではなくて、強い人がプレッシャーを軽くするために必死にとりに行くゲーム。相手が強いと分かっている時には、それ相応の嫌なプレッシャーを掛けられている事になります。
ああやだやだ、こわいこわい。