ラケットはどうぐですから、道具の使い方もマスターする楽しみがあります。
最近、ジュニアの下のレベルのクラスの子たちにネットプレーを教えるドリルをよく使っていて、打ち方を教える前に飛んでくるボールにラケットの使い方をまず考えよう、って感じで速射砲ドリルを行っています。
小学生、それも中学年?の3年生とか4年生くらいの子たちの体格で、ボレーをうまくこなせる、というケースを見るのは珍しいことです。
でも、上手い子はいる。
感覚的なものなんでしょうね。うまく打てた経験を自分なりに活かして教わっている以上のことをする。
では、うまくできない方の、大多数の子たちは、教わった通りができていないのか?
まあ、確かにできていませんが、それは彼らが悪いんじゃなくて、コーチが悪いでしょう。
と言って、ワタシが教えれば一発でうまくなるんです、なんてことにはならない。
上達ってのは何事でも、経験を積んでいく上でのことですから、時間がかかるってことを考えて育てていかないといけないんでしょうね。
だって自分だってボレーがうまくなるまでにどれだけ時間がかかったか。。。
ラケットを軽々と扱えるだけの体力がついた15歳から始めて、30キロや40キロの荷物を背負って山登りに青春を燃やしていたワタシが、野球も小さい頃から楽しんでいて、ラケットよりもはるかに重たいバットを振り回していたワタシが?理屈ややり方は教わっても、教わった通りにできなかった時間が何年あったことか。
まず彼らには、ずっと球数を打ち込んでもらいます。フォア・バック・スマッシュの繰り返し。
リズムは一定で、休む間を与えずに、次々と3種類のボールが規則的に飛んできます。
不思議なことに、カラーコーンを置いてターゲットにしているのに、彼らのボレーやスマッシュは、ワタシめがけて飛んでくる(笑)。
なので、ワタシの球出しも、いい具合に散ります。(避けながら出してますから)
目的は、飛んでくるボールが見えているという状況で、手の中にあるラケットという「武器」をどうやって認識して扱うか、彼らの体の中の回路がつながるか、つながりそうな感覚が見えるくらいまで、何週間かやり続けようと思っています。
ワタシ、テレビゲームがすっごい苦手なんです。
小学生の頃から、インベーダーゲームで、100点いかない、っていう素質。。。よく笑われましたし、おかげでいまだにゲームは大嫌いです。
玉撃っても当たらないんですよね。ジョイスティックのタイミングと自分の体の反応が全く合っていない気がする…っていうか、動かしながら自分の機体の感覚が全くないので、やりようがないとすら思っちゃうんです。
自分の肉体でラケットを握りしめてコートに立って動いているからこそ、その感覚がわかるし、わかる以上自由に動かしてやろうじゃないか、って気にもなる。
それでテニスはハマったんです。
だから、無理やりっぽいけどそこへ連れて行こうっていう企画なわけですね。
腕を速く振れば、手首は緩みます。そしてラケットの動きは不安定になります。
ボールがラケットに当たれば、勢いでラケットが押されるような感じもしますが、振っているので手首が緩み、コントロールする感覚はないままにボールが飛んで行ってしまいます。
2分くらい、ずっと休みなく打っていれば、そのうち何球かはたまたまでもいいタイミングで力を入れた方に飛んでいきます。
それ待ちです。
ちょっとできたら、本人がわかると思いますから、それを連続で打てるとか、確率が上がるとか、そうなるまでは、ずっと同じようなドリルで、なにしろ考えている間を与えないくらいどんどん打ってもらうことにします。
もちろん、最初にはどんな感覚になるか、導入のメニューは入れておきますよ。
ラケットを振る、っていう動作が一つじゃないってことを体が知っていないと、ただの無駄な時間になると思いますから。
転がってくるボールを持ち上げるとか、ラケッティングで両面でボール突きしたり、その2タッチ目で相手のコートに入れるメニューなんかで遊んでおいてから、速射砲ドリルで素早く動いてボールに当てる、っていうつながりで、遊びからテニスになるように段階を経ておくようにしています。
包丁やトンカチだって、シーンによっては力の入れ方や、握り方を工夫して、うまく加減しながら扱っていると思います。
ラケットも大事な、感覚を表現してくれる道具です。