カナダはトロントで行われた、マスターズ1000グレードの大会、ロジャース・カップで、昨年はベスト4だった錦織圭は、見事に決勝進出を果たしました。
なんでも、コメントでは「もうベスト4くらいでは満足しないです」みたいなことを言っているらしいですが、普通にそう思ってぽろっと言えちゃうなんて、なんてすごい人なんだ、って思いますよね。
そして今大会は第3シードで、準決勝では2シードにつけていたワウリンカを76・61のストレートで下しての勝ち上がりですから、そのコメントもうなづけようってもんです。
さて決勝戦の相手はジョコビッチ。今シーズンもセットをとったことはあります。ということは、流れのつかみ方次第では、優勢にゲームをすすめられれば、という期待があります。
朝ちょっと寝坊して、テレビを付けたら第一セット2-3の、錦織のサービスゲームでした。ミスが連発して、ピンチ。そしてトイレ行っている間に一瞬でブレイクされてしまいました。
キープされて、あっという間に2-5。キープして3-5ですが、やはりブレイクチャンスもなくキープされて、1stセットは6-3でジョコビッチ。
セカンドセットも序盤、いきなりブレイクされて0-2からスタートする不利な展開に。
相変わらず、ジョコビッチは走らされても強く、深く返してきて次の決定打につなげられない。リターンが良く、錦織のサービスゲームであってもちょっと気を許すとブレイクポイントを握られてしまいます。
そんななか、ファーストセットもワンブレイク、セカンドセットはブレイクバックに成功して3-3で並びます。
この、セカンドセットの中盤で、ジョコビッチにアンフォーストエラーが急に出るようになり、錦織が15ゲームでブレイクした後はラブゲームでキープ。画面の端っこには「直近15ポイント=13:2で錦織」みたいな表示が出るほど、ガクンと錦織側に流れが傾きました。
ここで、ジョコビッチのサーブが復調します。
おしいところで良いサーブに阻まれ、キープされます。
錦織としては、ここでさらにプレッシャーをかけたいところでしたが、なかなか攻めさせてもらえません。
この試合、錦織はサーブの調子もよく、タフなラリーも簡単には打ち負けることなく、調子もよさそうでした。
しかし、ジョコビッチの調子もそれ以上にいい。最初のセットは1stサーブの確率は85%。そしてポイント獲得率もそのくらい。これでは錦織のリターンが調子よくても、その後のラリーで主導権を取られてしまっている状況から、なかなか良い流れが来ていないことがデータからもわかります。
ジョコビッチはサーブがとてもいいですね。必要なら多少スピードを落としても、コーナーに入れてくる。セカンドになってもよいリターンに崩されない鉄壁の守備。
錦織も無理せずに1stサーブを入れていく、というよりなるべくセカンドサーブにならないでいる方がポイントが取れるという中、よく1stが入っていました。
錦織はゲームの仕方も、おととしよりも、去年よりもさらに進化していましたね。去年はかたくなにベースラインから下がらずに速い展開をつくり、またそれが成功していてランキングを上げたり維持したりの要因になりましたが、それで勝ちきれないような相手にはうまく前後の動きを付けて、自分のペースを崩さずにラリーするようなシーンが増えました。相手はさらにやりづらくなったと思います。
結果は、5-5からブレイクを許し、そのあとに盤石のキープをされて、決勝で敗れてしまいましたが、内容の濃い敗戦だったと思います。
ただ、真っ向勝負で適う相手でもありますが、切り崩すのにもうすこし、何かが欲しいところなんでしょう。それが何なのかはレベルが高すぎてわかりません。
技術的とか、戦術的な事よりもジョコビッチが不安になるような材料が欲しいですね。
流れが変わっているときのジョコビッチは、やはりどこか不安げで、それがミスにつながっているように見える。具体的になにがどうなると、というのが見えてこないのがチャンピオンの恐ろしさだと思いますが、オリンピック、そして全米と見据える中、今後はどうするのかすごく楽しみですね。