時間と空間の話と繋がるものだと思っていまして、より具体的に体験している物かな、と思うのがラリーのリズムや、テンポです。
いまのところはコレの感覚が良い人が結局はテニスがうまく見えます。自力で制御の利く人は、きっと試合とかでも活躍できると思います。
球が速いから強いわけでもないし、粘り強いから強いってことだけでもない・・・いやいや、そういう要素を持っている人が、自分のリズムでラリーを支配できる時にすごく強い人な感じがするってこと?かなと思うようになりました。
リズム、ですから、ラリー中に途切れることがありません。体の中でそのリズムと同調できているとしたら、やはり打った後の動作や、打たれたすぐ後の動作が良い動きなんでしょう。
「休むな!動いてろ!」みたいなことをコーチはよくプレー中に声を掛けますし、私もそうしますが、それってそこの部分がかなり大事だからなんですね。
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読んだのはもう結構前なんですが、ブラッド・ギルバート著の「Wining Ugly」を読んだときに、彼の現役時代(最高でATPランキング4位)のプレーの中で、「リズムの無いボールを打たせる」とか書いてあったのが、何となく意味が分かるけど意図的にそうさせるのって難しいなぁと思っていたんです。
初心者同士の続かないラリーって、リズムがない。打つ方は一生懸命ボールに同調して打点を合わせてくると思いますから、それなりにリズムもあるだろうし、ボールがいったんラケットから飛び出したら相手コートまでの時間は設定されたようなものです。
問題なのは、構えている相手側の方。それまで「はーい、〇〇さん、いきますよー!」からはじまるボール出しのボールに覚悟を決めて教わった通りに動きをトレースしていくようになったばかりですから、相手が打つところのどこに向かって何を合わせればいいのか、そこから不安定なわけですね。
初心者から始めても、差が出るのはそこ。似たような運動経験のある人とか、そういうリズム感を持っている人は続けられると思います。コントロールは良くなかったとしてもコートに入れられたりとか。そうでない方の人が対応が遅れて、ちょっと大きいと差し込まれてボールが飛ばなくなったり、ちょっと短いとツーバウンドに間に合わなくなったりします。
走らないでだいじょうぶな距離でワンバウンドしたボールを上手く打つときと、走っていったところで同じように打つことは、リズム感がある人にとっては、ボールが飛んできて、弾んだらそのあとでヒットする、という事は同じことなんですね。
要するにボールの動きは自分から近かろうが遠かろうが、打ってからネットを越えてきてこちら側のコートで弾んで打てるようになる、という事は同じリズムに見える。
それが、自分の動きの中で消化しているだけの人だと、打つ前にラケット引いて、バウンドしたらボールをよく見て、今だと思ったら力を入れてラケットを振る、みたいな感じで動きを制御してるんだと思います。その中に「ボールの位置まで走る」というめんどくさいことをどうやって組み入れたらいいのかが分からない・・・というか分かるけど上手くできない?ってことなのかな、と。
上達した後でも、それと同じような、もうちょっとハイレベルなことで、やっぱり差が出る。
アガシが活躍してきたときに、その前の世代でクリックステインという10代で突然出てきて脚光を浴びた選手がいたんです。
練習コートのサーフェスが傷んでいて、凸凹していたらしいんですが、イレギュラーバウンドにすごく強くて、まるで普通のコートでやっているようにしか見えないアガシに対して、クリックステインはバランスを崩していかにもやりにくそうに顔をしかめながら打っていたそうです。
体幹がしっかりしていて、打点の幅がある事と自分のリズムを失わずに打ち返せることと、ライジングの目で見ているのでバウンドへの対応がものすごく早くできる能力なんかが、アガシにはとても高いレベルであったというエピソード。
自分の所にくるボールがいつどこに来るのか、その予測が正しいことと、柔軟に動ける細やかなステップ(動いていないように見えたとしても重心をシフトできるとか)で自分の位置にある時のボールを正しくヒットできるという事なんだと思います。
私もオムニコートが主戦場になって、最初の年はイレギュラーバウンドにけっこうやられましたが、視野を変えたり、油断せずに姿勢を保ったり、バウンドの変わる方向へも対応の利くスイングを覚えたりしていくうちになんでもなく返せるようになった部分はあると思います。
それって試合の時にコートサーフェスが変わるだけで上手く打てなくなっていた時代から見れば、私の中では大きく進歩したと思える事でした。