日別アーカイブ: 2020年5月15日

二人のマルチナ・間にシュテフィ

彼女らが現役のころには、こういった「ふたりの~」って形容されて記事になっていた気がします。

マルチナ・ナブラチロワとマルチナ・ヒンギス

有名な話ですが、ヒンギスの名前はナブラチロワのように活躍してほしいと願ってつけられたとか。前者は苦労と努力の人。後者はジュニア時代から輝いた天才少女(ベテランの年齢になってもダブルスでスーパーウーマンでしたから、少女、っていう形容もどうかと思いますが)でした。

 

ここのところ、昔のテニスの試合も含めて動画をよく見ています。マッケンロー対レーバー、アッシュ対コナーズ、ボルグ対ビラス・・・レンドルも若かった。ゲルライティスやノアのプレーも見たかったやつでした。ここに書いてある時代の人たちは、私がテニスを始めた85年には引退していた選手も半分いましたから、リアルで見れていない選手もいます。YouTubeさまさまですよね。

 

そんななかで、女子の試合で「うわっこれ見たい!」ってなったのは、ナブラチロワ対グラフ。ポイント間の映像を詰めた、ほとんどのポイントを残してくれているものでした。89年?だかの全米決勝。ちょっと見て止めちゃう動画もじつは結構あったりするんですが、これは惹きつけられました。面白かった。

スコアから言えば、フルセットでグラフの勝ち。だけど1セット目のナブラチロワの出来はすごかった。当時見ていたはず、っていう試合だったんですけど、さすがに30年前って忘れてるもんですね(笑)。

ナブラチロワの出来は半端なくよかった。それをじりじりと追い詰めて逆転したグラフは、まだ18か19歳。その強烈なフォアハンドも、強いバックハンドスライスも、みていて戦略的な全くスキのないラリー。サービスキープがとても強く、それが徐々にナブラチロワへのプレッシャーになっていくようでした。最近の男子の試合にも数多くありますが、これも全ポイント目を離せないレベルの高さでした。技術の精密さ、ここぞというときのブレない、逃げない精神力、そしてなんていうんだろ、相手選手へのリスペクトのように感じる洞察力。読みも狂わない。こういう動画で、実際のプレー以外の時間の使い方も見る方が断然面白いんですが、キーポイントになるポイントってこれかなぁっていうのが記憶に残るのもこういう動画の特徴っていうか、いいところ。

グラフのバックハンドの、思い切ったドライブのパスが数本、ストレートにアングルにと、ナブラチロワの想像を超えた精度でコートに刺さります。重要なポイントだったと本人も記憶に残ったんじゃないかな!ってこっちで勝手に想像しちゃうくらい象徴的なプレーもいくつもありました。

 

グラフの22回のGS優勝歴を見ると、87年ころから再三にわたって対決が見られます。89年ころには、ナブラチロワの全盛期は終わっていて、だけど風格とプレーの特性でまだ強さは十分。グラフはメジャータイトルを取る自信に満ち溢れていて、オリンピックまでも取ったゴールデンスラムの88年の後。乗りに乗っている時期でした。

グラフの覇権は長く、それでもライバルは林立してきます。セレス、伊達、ダベンポート、サバティーニ、ノボトナ・・・そしてヒンギスやウイリアムズ姉妹が。

このころは女子のほうがテニスは人気があった。なので女子テニスの賞金額を男子と同等に、という運動もおこり、今日では同額ですが、このころの観客動員や視聴率で言えば、それを言って当然、という時代でした。

男子はレンドル以降、サンプラスの二つ目のGSタイトルまではっきりしたチャンピオンがおらず、アガシでさえも念願のビッグタイトルまで相当の時間を要していました。ウインブルドンはサーブとリターンでほとんどプレーが決まってしまう、見ているとつまらなくさえ感じてしまう展開、逆にフレンチではこの時期にだけポイントを稼げる南米か欧州の選手のクレーコートスペシャリストが席巻し、知っていればそれぞれが楽しめるけどひいきの選手を特定しにくい感じでした。テレビ放送が今ほど充実していないせいでもあり、全米や全豪は大きなアップセットもあり内容の面白い試合があっても準決勝までは放映がなかったり(フレンチは12チャンで見れたから大丈夫だった)、番狂わせがあるから放送が始まる頃に「誰これ?」っていう選手だったりして見なかったりしてて、女子のほうがおもしろかったんです。

女子はそんなわけでナブラチロワからグラフに世代交代がはっきりだれの目でもわかるようでもあり、そのグラフの時代にセレスがすい星のように現れますがあの事件で2年ほどツアーから離れ、そして復帰してまたトップに出ますがグラフも巻き返します。そして15歳でプロとしてツアーに参加していたヒンギスが。

個人的な・・・超個人的な思いです・・・私はヒンギスのテニスは女子テニスを面白く連れていくと思っていましたが、すぐ後に現れたウイリアムズ姉妹のテニスがこれをつまらなくしてしまったと思っています。ちょうど、90年代前後の男子テニスが面白くなくなったと感じたように一発のパワーショットで相手を崩せれば、あとはやすやすとフリーボールのようにポイントが取れる、みたいなテニス。

ヒンギス対グラフは、初対戦のフレンチでしょうか。ヒンギスの不遜な態度といい、それでも笑顔でポイントに向かっていくポジティブさは今になってみればすごいことだと思います。審判にクレームをつけて客席からブーイングも来ている中、周囲を気にせずネットの向こうのグラフだけを敵としてロックオンしていたように思います。それでも高校生になったばかり暗いの年齢の少女が、怖くなりそうな気持を殺して笑顔を作っていたと思うと。。。

この二人の戦いはまさに総力戦。将棋で言えばすべての駒をフルに使ってどこで拮抗を崩すか、というほどの拮抗。メンタルが技術を支え、技術がメンタルの基になっています。体力も十分でなければそういう状態に人体はならない。見ているこっちが緊張してしまうせいか、ヒンギスの笑顔の裏に震えて足がすくむような思いが透けて見えてしまうような気がするほどでした。

この試合もグラフが勝ちます。

だけど、対戦相手がいないとこんなにグラフが光らないし、ナブラチロワにしてもヒンギスにしても強烈な印象を残しました。

あ、ちなみに私グラフ相当好きです(笑)。

グラフもファンに愛されたチャンピオンでしたねー。フェデラーほどじゃないけど、観客席が味方になるっていうシーンが本当に多かった。それというのも二人のマルチナのように、対戦相手が本当に強くて、さしものグラフでも今回はどうか…っていうところをしっかり乗り切る素晴らしい内容の試合を見せてくれるから。

また今日も何かの動画を見たいと思います。WOWOWもオンデマンドで名勝負が見れるし、なににしようかな!

カテゴリー: プロ選手オタク | 投稿者ナガキヤスヒロ 08:19 | コメントをどうぞ