真意

私がテニスを始めたきっかけは兄貴でした。

すでにテニスに明け暮れている兄貴を見ていて自分も中学生になったらテニスをやるんだと決めていました。

兄貴と同校に入学し、さっそくテニス部に入部届を出し、それを母に伝えると

 

「テニス?あんたもするの?別にええよ、ほんでも条件があるに」

きっと勉強だろうなあと思っていると

「勉強は当たり前、私はあんたのテニスに期待、応援、協力、はせえへんでね」と

当時の自分にはその意味がよく理解出来ずにいました。

 

私の両親は同校の事務で勤務していましたが、一度も練習を見たことがありません。

もちろん試合を見に来ることもありませんでした。

 

初めて買ったゴールデンショット(もちろん自分で)

大事に大事にしていて夜は抱いて寝てた一本

ある日その宝物にひびが入り

「おっかあ、ラケット折れた」

「セメダインならいつもの棚に入っとるに」

「セメダインなんかでくっつかすか」

「だめかあ、じゃあボンドか?」

「ほうじゃないって、直せえへんて」

「ふうん、じゃあこれ以上壊れんようにそおっと使やあ、取り合えずくっつけて 今度折れたら買ったら?」

 

 

我が家の洗濯は一日一回、朝と決まっています。

試合の日、夜帰宅すると当然その日の洗濯は終了している。

たとえ次の日が試合でも洗濯はしてもらえない。

試合用のウェアーは一張羅。

風呂の時自分で洗うしかない。

当然朝までに乾くはずもない。

「うわあ まだ乾いとらん・・・」

そこへ一言

「トロイねえ、着とりゃあ乾くって(笑)」

 

 

高校3年生、念願のインターハイ出場が決まり、母に自慢げに

「俺、インターハイ決まった!福島まで行ってくるわあ!」

「へえぇ、福島?どえりゃあ遠いとこの申し込んだんだなあ?」

「申し込んだ? 誰でも出れるわけじゃないに!」

「抽選?  お前くじ運だけはええでなあ!」

「…  もういいから金くれ!」

 

 

言い出したらキリがありません。

息子たちのテニスには全く興味がなかったんです。

まあそれが普通、当たり前だと思っていました。

 

しかし母の旧友からつい最近教えられました。

 

「お母さんは会うといっつもあなたたち(兄貴も)のテニスの話ばっかり、そりゃあ嬉しそうにやれ優勝したとか全国大会に出るんだとか自慢話ばっかり聞かされたわよ(笑)」

って

 

 

今も昔も誰でもわが子の事を思う気持ちはみんな同じなんだなあって初めて知らされました。

 

これが母のやり方だったんです。

そのおかげで我々はノビノビとやらせてもらってたんです。

今振り返れば、私たちにとっては最高の理解者、指導者だった気がします。


カテゴリー: 未分類 | 投稿者楢木コーチ 13:49 | コメントをどうぞ